第一話「俺、少女、チェス」
「おはよう!」
俺の顔を覗き込んでいた少女に言われた。
外国人だろうか、金髪に真紅の瞳、そして整った顔立ち。とてもこの世のものとは思えない美しさだ。
「・・・・・えっと、おはよう」
まぁ挨拶を返さないのも悪いので一応返す。
「えっと、ここはどこですか?」
挨拶もしたし本題に入ろう。マズここはどこかだ。
さっきまで俺は自分の部屋に寝転がってマンガを読んでいたはずだが、今はよく分からない場所に居る。
辺りを見回せば岩、岩、岩、岩のオンパレードだ。洞窟か何かだろうか?
「私の家だ。そんな事より遊ぼう!」
そういって少女は俺にチェス板を差し出す。
「家って、ここに住んでるのか?」
俺はチェスを受け取り、駒を並べながら尋ねてみた。
「ああ、そうだ」
「じゃあ、家の人は?」
「いない。みんなどっか行ってしまった・・・」
不在か・・・・。ならば今はこの少女から情報を得るしかないか。
「どうして俺がここに居るのか分かるか?」
「私が召喚したからだ」
少女は無邪気に答える。
「じゃあここは地球じゃないのか?」
「ちきゅう?何だそれ?」
ここは地球じゃない。つまりは異世界ということだ。
・・・・・・はっきり言ってそんな気はしていた。まずこの少女の声だ。口が一切動いていない。
それに耳ではなく頭の中に直接語りかけられるような感覚・・・・これは地球じゃ味わったことが無い。しかも何故かは分からないが少女が言っているのが嘘じゃないと分かる。
次に重力。無いのでは無いかというほど減っていた。体が異常に軽い。
・・・・・・・普通はもっと戸惑うのだろうが、何故か落ち着いている。
しかも、元の世界に何か未練がある訳でもないので別にいいかなどと思っていたりする。
「なぁ、遊ぼう?なぁ!」
俺は「わかった」と言い、並べ終わったチェスをする。少女が先攻だ。
チェスをしながら俺は少女に色々尋ねた。
そして分かったことは、少女の家族はすでに全員他界してるということ、少女はここから出られないということ、俺を召喚したのは少女の意思ではなくただの偶然だったということと、あの黒い裂け目から逃げていれば俺は召喚されずに召喚儀式は失敗に終わっていたというと事と、この世界は科学が無くその代わりに魔術や錬金術があるということ、等等まさに何処にでもあるファンタジーな世界だということだ。
「チェック!」
・・・・・・・・そして、少女はチェスが強いという事も分かった。
俺は二回戦をしながら他の事も聞いてみた。今度は俺が先攻だ。
「なんでここから出られないんだ?」
すると少女は「出たいけど広すぎて出口が分からない」と告げた。
「あれ、ここお前の家じゃないのか?」
「いや、正しく言えば住んでいるだけだ。二〜三日前に目が覚めたらココに居た。出口を探しても見つからないし、人も居ないし、オマケに食料も無いんだ」
・・・・・・・アカンやん。えらいこっちゃ。
「ちょ、不味いだろ!飲まず食わずじゃ死ぬぞ!?」
「大丈夫だ、私は吸血鬼だから飲まず食わずでも半年ぐらいは生きれる」
・・・・・・・・・え?
「・・・・・・もしかして、俺血吸われんの?」
「いや、お前をココに呼んだのは暇だったから遊び相手が欲しかったからだ。別に食料として呼んだつもりは無い」
フゥ、よかった・・・・・・・ってよくない!
「そうか、疑って悪かった。だが、それ以前に俺は飲まず食わずじゃせいぜい二〜三日しかもたんのだが・・・?」
「そうなのか・・・・・?」
そうなのか?じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
「とりあえず出口を探そう!遊ぶのはそれからでも出来る」
「あ、ちょっと待て!」
まだ何かあるのかと思い振り向いたら・・・・・・。
「チェックだ」
また負けたよ・・・・。
今回は割りと早くに更新できましたが、多分普段は二日か三日に一回の更新になると思います。
では、これからも頑張るのでよろしくですw