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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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ある秋の日 4


「驚いたな、2人してどうしてここにいるんだ? こんな寒い中、花見をするのは俺らくらいだと思うから、その犬の散歩か?」


「そうだよ、パトちゃんの散歩コースなんだ」


 どうやら、あの犬はパトちゃんと言うらしい。


「……私は途中で偶然会って、暇だったから着いてきたの」


 厚手の白のモフモフコートから出た茶色い手袋をつけた手が首に巻いた黒のマフラーを直して「うぅっ、さむ」と蓮。


「みんなは花見なんだ」


「アーーイ!」


 亮の問に藍が大きく挙手して答える。


「あ、あれ!? 藍ちゃん! 久しぶりだねぇ。お姉ちゃん達のこと覚えてる?」


「アーーイ!」


 ちなみに、刃達以外は藍が毎日、保健室の隣の部屋にいることは知らない。


「あぁ~ッ、か~わぃぃよぉ~!」


 と、急に亮の顔がハニャーンと崩れた。そして藍を抱き締め、頬をすりすり。なんて微笑ましい光景だろう。

 亮は子供も大好きみたいだ。


「……藍、元気だった?」


「アイ!」


 蓮の声にも抱きしめられたまま答える。


「……というか、ねぇ、刃?」


「ん、なんだ? 蓮」


「……なんで藍がここにいるの?」


『えっ!?』


 やばい。そう言えば藍は藤先生の従姉妹ってことになっていて、こんな時間に自分達といるのは確かに不自然と言えば不自然だ。


「い……いやぁ~……それは、その……」


「預かったの、藤先生から。今日一日だけ預かってくれって。ね、みんな」


 その光の言葉に刃達全員、首を縦に振る。さすがは光、機転が利く。


「そうなんだ。ねぇ、お邪魔じゃなければ私たちもお邪魔していいかな?」


「……いい、かな?」


 亮の言葉と仕草を真似して、蓮も言葉を繋げる。断る理由なんかないだろう。




          ✩




「お、おいしいねぇ、刃君の料理!」


「こんな簡単なやつでそう言ってもらえるのは嬉しいよ」


「……おいしい」


 蓮は人と仲良くする方法として、まず他人の真似をすることを覚えた。


 と言っても、合宿で蓮が刃に聞いてきた、『他人と仲良くする方法』として適当に答えた返事をまるっきり信じての行動なのだが。


「……蓮。あえて聞くんだが、本心か?」


「……半分」


 半分は嘘なのか、その含み笑いはどっちなのか刃にはわからない。少し疑いの目でみる刃に気づいて、蓮はクスッと微笑。


「……冗談、おいしい。ほんとに」


 そう言って、これまた刃が教えた笑顔。他人と距離を縮めるには、やはり心象がいい笑顔が1番だ。


「まぁまだあるから、食べたきゃ食べてくれよ」


「……腕を上げたな、おぬし」


「……それは何のキャラだ?」


「時代劇の中の人」


「……合宿の時より美味くなってるか?」


 あの時に蓮には味見役としていくらか刃の料理の味を見てもらっていた。

 最初のころに比べて上達したのは外見からでもわかることだが、やはり実際に食べていた人間の意見が1番参考になる。


「うん。特に卵焼き。前より焼き加減が絶妙だし、黄色も栄えている」


 クワッと蓮の中の何かが目覚めている。このモードの蓮は女将さんすらも評価するほど味の評論家。

 さしずめ、『評論モード』と言うところだろう。


「蓮にそう言ってもらえると、純粋に嬉し──」


「ただ、少し中が固すぎだし、弱火の使い方を覚えた方がいい。それと塩が少し多いから控えた方がなおベター。それからこっちの唐揚げはしっかり二度揚げすること。それとこっちの──」


「勘弁してください」


 さすがに辛口のマシンガントークはおなかいっぱいになってしまう。涙で少し卵焼きが塩辛く感じた時だった。


「……おい、今日は誰かが仕組んでるのか?」


 と、流斗がふとそんなことを言った。


「何の話だよ、流斗」


「……あっち、見てみろ」


 そう言われて、全員流斗が目で指す桜並木の一本道へ目を移す。


「…………え?」


 その方向からくる10人ほどの団体様。

 いや、珍しいことじゃない。だって普段ならここはもっと賑わってる名所なのだから。

 問題なのは、その団体様の面子。

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