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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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予選 6


 流斗も後ろを見て確認する。確かに、さっきまでこっちを追い続けていた怪鳥の姿はない。というか、罠すら無くなっている。


「……何か、嫌な予感がする。刃、翔矢、警戒は怠るな。何か──」


「流斗、前がなんかひらけとるぞ!」


 翔矢の言葉に3人が前を見ると、確かに谷の途中に開けた場所がある。間違いなく、何かのトラップ。

 警戒しながら突入して、3人が見たのは、




          ✩




「そういやよ、そろそろ俺達はゴール地点まで移動しなくていいのかな?」


「そういえば……一向にその気配すら見受けられないけど」


 崖の上組も少し心配になってくる。もうかなり日も傾いてきた。いくら夏とはいえ、これ以上ここに居たら寒さでどうにかなってしまいそうだ。


「安心しろ、熱き高校球児達よ! これから君達をゴール地点まで飛ばすから、男子は俺の元に集合! 女子は向こうだ!」


 その熱い男の号令に、残った者は皆歓喜の声を上げて従う。


「よーし、これからお前達を安全、確実にゴール地点まで送ってやるから覚悟しろよ!」


──ん? 覚悟?


「『弐紋字セカンドスキル泡球シャボンボール』!」


 と男子一同が困惑しているところに熱田の紋字がかけられる。全員がなにやら泡の中に閉じ込められる形となった。


「……なんか、イヤな予感が──」


「解紋!」


 矢田が呟くと同時。熱田が『解紋』するとその手に握られていたのは、『形態・バット』。


 金色に輝くバットを構えた姿はさすが高校球児にこだわる男といったところだ。I’temもよく似合っている。


──ん? バット?


「……おい。まさか……そんなわけないよな?」


 自分達を包むのは球状の燈気。彼の片手には黄金のバット。そこから連想されることと言ったら1つしかない。


「さぁ、みなさぁ~ん!」


 と、熱田の後ろから現れたのはオレンジ色の髪を頭の後ろ高くでまとめた優しげな細身の女性。


「これから皆さんを熱田さんと私、柊可憐ひいらぎ かれんがお送り致しまぁーす! 『参紋字サードスキル転送扉ワープドア』!」



 可憐先生のその紋字スキルで、人一人が入れるくらいの豪華な銀の装飾が施された扉が現れる。


「さぁさぁ、女子の皆様方はこの中を通ってくださーい! 出口がゴール地点になってますからぁ」


 その指示通りに女子達は並んで1人1人その扉を潜ると、後ろから現れない。なるほど……ど○でもドアみたいなものらしい。


「さぁ~て、男子達は特別に俺が送ってやろう! 女子達のように順番待ちなどしなくていい! 安心安全速達ですぐに着いてしまうから覚悟しろよ!」


 おかしい。安心安全と覚悟はどう考えても同居しない。


「フッフッフ……お前、嬉しそうだな」


「い、いや~、そうでもないですよ~」


 矢田に目をつけた熱田は組んでいた腕を解き、スイング。感触を確認する。


「うん、今日も絶好調だ!」


「あの~……つかぬ事を伺いますが」


「うん? なんだ」


「その……まさか、俺達の移動方法って──」


「おぉ、気付いたか! まさにその通りだ!」


 いや、まだ何も言ってない……と思う矢田をさておき、熱田は続けた。


「お前達を送る方法は名付けて、『鳥と一緒に飛んでみよう! みんな一緒に羽ばたいて逝ってみよう! 連続千本ノック!』だ!」


「(やっぱりぃぃいぃぃい!!!)」


 矢田のイヤな予感は見事に的中。打つ気だ! 俺らを打つ気だ!


「さぁ……始めるとするかぁ!」


「いやちょ、ちょっと待ってください! 本当に安全なんですよね!?」


「安全などといつ誰が言ったぁ!?」


「さっき!!! あなたが!!! 今ぁ!!?」


「さぁ……いってこい!」


 逃げようにも球の中に閉じ込められ、もはや矢田に逃げ場など無い。万事休すか……!


「いくぞぉ! 『鳥と一緒に飛んでみよう! みんな一緒に……ん? だったっけか?」


 と、急に熱田は構えを解き、考えに更ける。もしや、自ら付けた題名を忘れている?

 ならばチャンスだ。これに乗じてあっちのドアから移動する手段に変えてもらう!


「んーー……何だったっけか?」


「熱田さん! じっくり! ゆっくり思い出しましょう! その間に俺らはあっちの扉から──」


「いいや。省略! 『千本ノオォォック』!」


「省略はダメ──」


「『参紋字サードスキル本塁打ホームランショットォ』!」




──カキーーン!!!




「イヤァァァァァ……!!!」


 グングンと空に伸びていき、やがて矢田はお星様になりました。




          ✩




「……なぁ、これって」


「……間違いなく、障害物だろうな」


 刃達の前に現れたのは、ドデカい門。先へ進むためにはこの門を開けなければいけないようだが……。


「ダメや、ビクともせぇへんぞ」


 翔矢でも無理なら、3人で力を合わせても無駄だろう。


「おそらく、普通の開け方じゃないんだろう。どこかに鍵になる何かが──」


『よくぞ気付いたな!』


『!?』


 刃達が辺りを見回しても、今の声の主を見つけられない。

 しかし、3人以外の声。いったいどこから──


『ここだ、こっちこっち!』


 と、刃達が見たのは門の上。


「ピ、ピエロが……」


「喋っとる……」


 門の装飾とばかり思っていたピエロの像が動いて喋っている。


『ここは知性の門。お前達の知性を試す場所。ここでは難易度1~3の中で好きなものを選んでもらう。ちなみに数字が大きい方が問題の難易度は上がる』


「……問題に答えるとどうなるんだ?」


『答えられた問題に対応してポイントが与えられる。1なら1点、3なら3点といった風にな』


「点数……それ手に入れたらどうなるん?」


『お前達3人ローテーションで問題を答えてもらい、5点まで到達した段階でクリア。門が開いて先に進める』


 なるほど。難易度が高ければクリアする時間は早められるが、間違える可能性も高いわけだ。


「……間違えた場合のペナルティは?」


『なーに、大したことは無いさ。間違えた場合はその間違えた難易度分ポイントがマイナスされ、マイナスの値が5を超えた瞬間に……』


「……瞬間に?」


 と、ピエロがイヤらしくニタニタと笑って告げる。


『……スタート地点に戻される。それだけだ』


「「なっ!?」」


 シャレになってない。もうここはおそらくゴールまで10キロほどの場所。ここから振り出しに戻されたら、間違いなく合格すら絶望的。


「……なるほど。順番を決めるから、少し待ってろ」

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