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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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予選 5


 少し悩んだ様子だが、流斗は覚悟を決めた顔で刃を見た。


「……わかった。ならば刃、まずはこれを着るんだ」


「よしわかった!」


 事態は一刻を争う。刃は急いで服を着替え、


「…………」




──セーラー服姿の刃がそこにいた。




「さぁ、あとはこのウィッグを被るだけだ! さぁ!」


「君もしかして楽しんでない???」


 一気に流斗への信頼が揺らぐ。なぜこのタイミングでセーラー服なのかとか、そもそもなぜセーラー服を持っているのかとか。


「もしもの時のために準備をしておいただけだ! 安心しろ、俺が友を死地に追いやる真似なんかすると思うか……?」


「流斗……!」


 そうとも。いつも自分達の司令塔として数々のピンチを切り抜けてきた彼のことだ。どんな奇想天外な話でも、疑うなど有り得なかった。


「わかった、信じるぜ流斗! 何をすればいい!?」


「これからお前をグリゴレの前に置く。そうしたら刃は全力でセクシーポーズでアピールしろ。そうすればグリゴレも動きを止めるはずだ」


「ほ、ホントに上手くいくのか?」


「もちろん危なくなったら繋いでいる水の鞭を引っ張って助けてやる。安心しろ」


 その真剣な表情。これが嘘など付いている顔だろうか。


「わかった、行ってくる!」


「行け、刃!」


 刃は翔矢の背から飛び降りて真正面からグリゴレと対峙。2mを優に超える巨躯が迫り刃も覚悟を決める。

 そして、グリゴレが刃を認識した、その瞬間。




「はぁーい、止まってぇー!(くねくね)」




 腰をうねらせ、精一杯のセクシーポーズ。




「…………(バサッ、バサッ、バサッ、バサッ)」


「…………」


「…………(バサッ、バサッ、バサッ、バサッ)」


「…………えへ♪(ウインク)」


『ギィアアアアアア!!!(怒)』




 激昂した。




はかったな流斗おおおおおおおおおおおお!!?」


『ギィアアアアアア!!!(ズドドドド!!!)』


 全力の攻撃を全力で避ける。死ぬ、マジで死ぬ!


「よくやった刃、500mは距離を稼いでるぞ!」


 反響した流斗の声が谷に響き渡るが、刃はそれどころではない。


「早く、早く助けてー!」


「落ち着け刃、実はその作戦だけどな」


「作戦だけど!?」




「──あまり、意味が無いんだ」


「知ってるよ畜生!!!」




 そうでなければこんなピンチにはなっていない。


「落ち着け。この作戦はまだ終わっていない。これで完成する!」


 と、流斗は投げたらしい。地面に落ちたそれを刃は拾い上げ、


「……こ、これは!?」


「そう、それさえあれば!」


 刃と流斗は笑って頷く。そう、この作戦にはこれが足りなかったのだ。刃は早速装着し、グリゴレを迎え撃つ。


「……グリゴレ。お前はこれで終わりさ」


『ギィア!?』


 グリゴレは怖気付いて一瞬戸惑う。そうだろう、なぜなら、さっきまでとは違う。今の刃には──




「これが俺の……最終形態さ!!!」




──この胸パッドがあるのだから!!!




          ✩




「よく生きてたな、刃」


「はぁー、はぁー、はぁー!!!」


 死ぬかと思った。あと1秒流斗に引かれるのが遅かったらミンチになっていただろう。


「だが、だいぶ距離は稼いだな。大体半分くらいは来ただろう」


 流斗の目算では今のところ25km地点は通過しているらしいが、それでもまだ半分。しかも、


「……翔矢、少し休もう。走りっぱなしは身体への負担が大きい」


「何……言うてんねん! ワイは、まだまだ、余裕やって!」


 そうは言っているが、翔矢の額には大粒の汗が見える。おそらく、紋字スキルを使いながらの全力ダッシュが翔矢の体力を大きく削っている。

 規格外の体力とはいえ、翔矢にも限界がある。ここで翔矢に倒れられる訳には行かない。


「でもグリゴレだって居るのに、休憩なんて……って、あれ?」


 刃が後ろを見て気付く。


「グリゴレが……いない?」


「……何だと?」

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