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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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予選 4


「『初紋字ファーストスキルふう』!」


 流斗の指示通り、翔矢は刃と流斗の体を風で宙に浮かせる。


「『初紋字ファーストスキルウィップ』!」


 それを流斗の水の鞭で固定。準備は整った。


──ズドドドド!!!


 と、いきなりの岩のつぶて。崖に生えた砲台から自動標準で刃達目掛けて打ち込まれる。


「うおらああああああ!!!」


 それを避ける、避ける、避ける。翔矢は高速で前へ進みながら全てを交わしてみせる。

 さすがの反射神経と反応速度。思わず刃も感心する。


「『弐紋字セカンドスキル水道ウォーターロード』!」


 流斗が先まで伸ばす水の道。これは安全なルートを示す道標。


「翔矢、行け!」


「了解!」


 それを信じて翔矢は迷いなくその水の道をなぞる。実際、そこは翔矢が移動しやすく、尚且つ避けやすい最適の道。


「油断はするなよ翔矢! まだどんな仕掛けがあるか──」


 と、流斗が前を見た瞬間、


「なっ!?」


 どデカい砲台があった。動き出している。まずい、あれほどデカい玉が打ち込まれたら、範囲的に逃げきれない。


「翔矢!」


「わかっとる!」


 スピードアップ。あれが発射される前に奥へ逃げ込まなければ、やられる!


──ガコン、ゴゴゴゴ!


「……っ! くそ! 間に合わへん!」


 何かないかと流斗が思考を巡らせていた、その時、


「流斗、翔矢!!!」


「「!?」」


 刃の声にそっちを見ると、刃は右手に燈気を集中。それを後方へ構えている。


「翔矢!」


「わかっとる!」


 それだけで、翔矢と流斗も刃の意図を理解。翔矢は風を纏って自分達を包み込み、なるべく空気の抵抗を受けない形に変形。

 流斗は刃と自分達が衝撃で離れないように身体をがっちり固定する。


「刃、行け!!!」


「『初紋字・爆』!」




──ズドォッ!!!




 刃が放った爆風が翔矢達の背中を押して一気に加速。砲台の上を通過し、その刹那、砲台から弾が発射された。


「『水玉ウォーターボール』!」


 3人を水が包み込み、それが飛んで跳ねて衝撃を吸収。やがて静止した。


「し、死ぬかと思った……」


「全く……無茶をする」


「腕、大丈夫なんか?」


「あ、あぁ」


 腕自体を強化していたおかげで軽傷だが、軽い火傷は負っている。あまり無茶は出来ないだろう。


「……先を急ぐぞ。まだきっと何か──」


『ギィアアアアアア!!!』


『!?』


 甲高い声が辺りに響く。これは機械的なものじゃない。生物の声。


「な、なんだ今の声!?」


「……」


 お互い背中合わせに辺りを警戒。何が出てくるかと、流斗は耳を済ませる。

 やがて聞こえたのは……羽音。


「上だ!!!」


 その声に全員が上を向き、そして、


「な、なんだ……あれ!?」


 空には……怪物が飛んでいた。




          ✩




「お、おいアイツら勝手に行っちまったぞ!?」


「……刃達、大丈夫かな」


 崖の上に残された面々は崖から下を覗き込んだが、もう3人の姿は影も見えない。矢田と蓮は心配になって呟くのもむりはなかった。


「……まぁ、行っちゃったものは仕方が無いし、大丈夫でしょ。私達はゴールまで待ってましょ」


「い、いや大丈夫でしょって光ちゃん! アイツがいるんだよ!? I’tem使えない刃が一緒の時点で不安しかないでしょ!?」


「……大丈夫って言ったの、聞こえなかった?」


 矢田の一言に、眉をひそめて仏頂面になる光。明らかに不機嫌だ。


「で、でもね、矢田君の言うことも、わかるんだ。私」


 矢田の言葉を繋いだのは、亮だった。


「……今回、刃君はこの中で1番疲れてたはずだよ。なのにこの長距離走は、普通に考えても厳しいんじゃないかな?」


「だろー!? 亮ちゃん話がわかる! 鎧亜もそう思うだろ!?」


「気安く話しかけるな」


「………………!」


 殺気にも似た威圧に急いで矢田は自身の口を塞ぐ。これ以上は、身の危険を感じる。


「……大丈夫かは知らんが、見てみたいのは間違いなかったからな」


「……見てみたい?」


「……虎穴に入らずんば虎子を得ず、か」


 光の言葉には返さず、刃達が落ちていった崖を見下ろして鎧亜は人知れず笑った。




「……虎子を得るか、それとも食われるか、見物だな」




          ✩




「「うおおおおおおお!!!」」


『ギィアアアアアア!!!』


 その頃、刃達は全力で『それ』から逃げていた。

 『それ』は身体はわし、頭は禿鷹はげたか、体から伸びるのは強靭な4本指の1本足。そのデカい翼を羽ばたかせて刃達を追尾してくる。


「おい流斗! あれなんなんだ!?」


「……『怪鳥グリゴレ』。人気の無い山を住処にし、そのデカさから家畜の動物や人間なんかも攫って食ってしまうことから、危険幻獣ランクトップ10に名を連ねる化け物だ」


「……つまり、それって」


「捕まったら食われるな♪」


『ギィアアアアアア!!!』


「翔矢ぁ!!!」


「わかっとるわ!!!」


 何やら楽しそうな流斗を他所に刃と翔矢は必死だ。何せ今、まさに死の恐怖と直面している。


「おい流斗! なんか弱点とか知らないのか!?」


「知っているが、あまりに危険だ。足止めにしかならないし、このまま逃げた方が──」


「なら俺がやる! それならいいだろ!?」


「……本気なんだな、刃」


「もちろんだ!」

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