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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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予選 2





 そうして刃達のバスはまた小1時間かけて移動。試合前に刃はバス酔いでグロッキー。


「……ウプッ」


 目的地である山の中腹まできてバスから降りたものの、立ち上がれない。

 元からバスは苦手なのに、その上に走ってきたのは山道だ。刃にはキツすぎる。


「じ、刃君大丈夫? 今回復して──」


「亮、もしかしたらこれからお前の力が必要になるかもしれない。回復は藤先生に任せておけ」


 流斗に言われて手を止める。でも、流斗が正しい。


「だ、大丈夫だ、亮。ありがとうな」


「で、でも……」


「俺、少し向こうで休んでくるわ。すぐに戻るから」


 そう言って早々に一旦離脱。これ以上、迷惑をかけるわけにはいかない。


『……あれか? 桜ヶ峰ってのは』


『随分軟弱なやつもいるもんだな。これなら楽勝かもな』


「…………」


 その周りの声は、静かに翔矢の耳に入っていて。




          ✩




「いよぉ~し、全員揃ったかぁ!? 熱き高校球児達よ!」


 刃も皆の元に戻り、出場校が揃うのを確認すると、前に現れたのはバットを持った角刈りのタンクトップ。

 犬歯をキラーンと輝かせる明らかな熱血教師のような人だった。


 しかし、随分と不思議な人だ。自分たちは球児でもなんでもないのだが。


「俺はこのCブロックを管轄している、熱田熱雄あつだ あつおだ。よく覚えとけよ~! ハーッハッハッハ!!!」


 性格だけじゃなく名前まで暑苦しい。これはまさか、体力系の予選になるのだろうか。


「さて、俺の自己紹介も済んだところで、予選の話をしよう」


 その熱田の言葉に一同は呆れ顔から打って変わって、殺気立つくらいの眼差し。それを感じたのか、熱田は嬉しそうに口角を上げる。


「いいじゃないか、いいじゃないか! そのくらいのやる気があれば大丈夫だな! ならばまず俺についてこーい!」


「……え!? ちょっ──」


 そのままダッシュで走り去ってしまう。まさか、もう予選が始まって……!?


『解紋!』


 と、誰かがそうしたのを皮切りに全員がI’temを解放。紋字を使用して熱田を追いかけた。


「じゃあ刃。しっかりな」


 と、翔矢がそう言うと、桜ヶ峰の面々もI’temを解放。


「……へ?」


「遅れんじゃないわよ」


『激!』


 そして全員が身体強化の紋字を使って熱田を追いかけていく。刃にはI’temはないから、皆のように解紋華は使えない。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 『封紋華・激』!」


 刃も出来る限りの身体強化を施して、その後を追う。見失わないよう、全力で。




          ✩




「ゼェ、ゼェ……ゼェ、ゼェ……」


「よし、これでタイムリミット。全員着いてきたみたいだな」


 あの山の中腹のちょっと広い広場から山の方へ移動すること、早3時間。ガハハと軽快に笑うその熱田の顔には汗ひとつ見えない。

 しかも紋字など使わずに先頭を爆走し続けた。化け物か。


 もう日も傾き始め、参加選手のほとんどは着いてくるだけでバテている。


「おい刃。お前この程度でへばってたらあかんぞ?」


「んなこと……言ってもな……」


 翔矢と流斗、光と鎧亜はケロッとした表情をしている。

 中でも翔矢は先頭を走る熱田と世間話をしながらゴールしたらしいから、その身体能力の高さがずば抜けていることを伺える。


『うわ、この程度でバテてるとか。情けねぇ』


『I’temすら持ってないって噂マジなのかよ、だせぇ』


『ここになんでいるんだよ、あいつ(笑)』


 最後に着いた刃に辺りからコソコソと話す声が聞こえる。いつもの事だが、まさか、これで桜ヶ峰が落ちるなんてこと──


「……さて、じゃあ予選を始めようか!」


『!!?』


 その場にいたほとんどがその声に顔を上げた。


『い、今のが予選じゃないんですか!?』


「はぁ? 誰がんなこと言ったよ。これからが予選本番だ」


 言葉を失う。まさか3時間に及ぶ持久走が予選どころか準備運動でしかなかったなんて。

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