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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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開会式 9


          ✩



「なっ……!?」


「結界が!?」


 結界が破られるという予想できない事態に戸惑う警備員。今を逃す手はない。


「ウオオオォォォ!!」


 その間を一気に刃が駆け抜け、前に輝く出口が見えた。

 会場に入ってしまえば、人混みに紛れて逃げられるはず──




「まぁぁぁあたんかぁぁぁ!!!」


「!?」


 後ろからのその声に刃がちらっと向くと、警備員達を蹴散らしてすぐそこまで謎の青い塊が迫っていた。


「ゲッ、ちょっとまっ──」






「そう言えばぁ、断がさっき言ってた面白いやつってこの会場にいるんでしょ? かっこいいの?」


「面白いやつ……あぁ、あいつのことか」


 断が思い出すのは合宿での1幕。凡人対特待生の図だ。

 言葉に表そうとするのだが、なかなか適切な言葉を思いつかない。


「あの方はなんと言うか……」


「何と言うか?」


「……無茶というか、無謀というか、何と言うか……って感じですのよ」


「破天荒とでも言ってやれよ。ケケケッ!」


 そこに口を挟んできたのは意外にも、その話を一番後ろで聞いていた無限だ。


「あいつらほどその言葉が合うやつはそうはいないぜぇ? なにせ、この俺様と引き分けたくらいだからなぁ」


「む、無限君がそこまで言うほどの人なの?」


「ちげぇよ、丸男。無限が言いたいのは、『あいつのやることは前代未聞』ってことだ」


「ぜ……前代未聞?」


「まぁ……彼は前例にないことをする、という意味ですわ」


「『I'temも持たねぇで無限に突進仕掛けた大バカだしな。ヒャハハ!』」


「おいおい、いくらなんでも言い過ぎじゃ──」


 そんなコソコソ話をしていた時。




──ドガアアアアア!!!




『!!?』


 突如として轟く爆音。全員が反射的にそっちを向くと、なにやら通路から煙が吹き出している。

 そして、こちらに落ちてくる謎の影。




          ✩




「ウオアァァァアァァ!!?」


 刃は高速で迫るその影を間一髪でしゃがんで避けていた。

 そしてそれはそのまま刃の上を駆け抜け、前にある何かに当たり激しい衝撃音……というより爆音に近い音を轟かせた。


 砂塵が辺りに舞い、視界はほぼゼロ。そんな緊急事態にも関わらず刃の腕の中で上機嫌の藍は本当に大物だと思う。


「っ……!? 一体何が……」


 そう思って刃が顔を上げた時、上空の太陽に照らされて輝く『何か』が目に入った。


「ああぁぁぁぁあぁ!?」


──バッチだ。


 自分のかはわからないが、確かに参加に必要なバッチ。これはきっと神の導きか何かか。そう確信して刃は反射的にそれを取りに走る。


「うおりゃぁぁあぁぁ!!!」


 刃は藍を左腕のみで支えると、全力で跳んだ。

 人間の底力はすごいもんだ、と刃は自分の事ながら感心してしまう。

 体力なんかほとんど無い、HP0の状態でここまで動けるのだから。


「ウオォォオォォ!」


 だが、体力を振り絞ってでもあれだけは手に入れなければならない。刃がバッチに向かって思いっきりジャンプしたが、高さがギリギリ届かない。




──プニッ。




 と、不意に刃の右足の下に何かがある感覚。これはラッキーだ。

 刃はその右足の下に入ったものを踏み台に、さらに跳躍。バッチに手を伸ばす。


「と……どけぇぇぇ!!!」


「アーイ!」


 そして、伸ばした手の中に収まる感覚。やった、やったぞ。


「いよっしゃあああああああ!!!」


 地面に着地すると、その手を空に向けてガッツポーズ。

 やったぞ、俺は成し遂げた。刃は自分の努力を自画自賛。しかし、


「……って、ここはどこだ?」


 砂埃で辺りの様子が伺えない。確か光が差し込む出口を見つけて、それから──





「……………………え?」





 やがて砂埃が晴れ、全体が見え始める。




「…………嘘、だろ?」




 ここって……まさか……。

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