表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
83/313

開会式 8


「おっ、外す気になった!?」


現実リアルなどっ……クソゲーだ!!!」


『…………』


 同じ高校の生徒でも滅多に聞けない和真の肉声。それが堂々と言い放った言葉がそれ。

 全員が呆れてため息をついた時だった。


 行進の曲が止み、辺りが静かになり始め、礼台の上に鼻の下に白髭を蓄えたおじさんが出てくる。


『只今より、今年度I-G(アイグランプリ)開会式を開始致します。開催実行委員長、挨拶──』




          ✩




「うおわぁぁぁぁあぁぁ!!!」


「まぁ~てぇぇぇえぇ~!!!」


 藍を抱えた何かに追われていることに恐怖し逃げ回る刃とおじさんの追いかけっこは未だ続いていた。

 しかし、さすがに刃の体力も限界に近い。


「(やばい……このままじゃ……追いつかれる!)」


 あれが何かは分からないが、自分を追ってきているのは確かだ。もしヤバいものだったら、追いつかれたらアウト。


「(どこか……逃げ切れそうな場所は……!)」


 そう考えた刃の左方に光りが差し込む通路が見える。あそこならば、高速で迫ってくる『何か』はいきなり曲がれはしまい。


「(あそこだぁぁぁっ!!!)」


 刃はその通路の前まで来ると90度、左向け左。その通路に突入する。


「ゲッ!?」


 今度は別の難関。警備員が十数人いて、まとめてその瞳は刃と藍を映す。


「コラ君、ここは関係者以外は立入禁止だぞ!?」


 確かにコーンも置いてあった気がするが、今の刃にとってはただの障害物でしかなかったわけで。


「あっ、そうですか。すいません、じゃあ、さっさともど──」


「まぁぁぁぁぁあてぇぇぇぇえぇぇ!?」


──れない!


 こうなれば強行突破。刃は一瞬の隙を突いて警備員の間を摺り抜けて奥に。


「なっ!? 君、止まりなさい! その先には結界が──」


「退けゃゃぁぁぁぁあぁ!」


 おっさんは通路の前で急ブレーキ、そして方向転換。再び爆風と共に加速する。


「なッ!? 『かいも──」


「だまっとりゃあ!」


「グエッ!?」


 おっさんはモップの上から警備員に向けて高速ラリアット。クリティカルヒットした警備員達は失神してしまう。


「まぁぁぁぁぁあてぇぇぇぇえぇぇ!!!」


「やべぇ!? 警備員の人がやられたみたいだ!? 大体、なんで俺が追われてんだ!?」


 そこまで考えて、1つ刃には心当たりがあった。


「(まさか……狙いは藍か!?)」


 以前、藍は特待生・黒道鎧亜にその身を狙われたことがあった。もし、この腕の中にいる少女が狙いなのだとしたら──


「絶対に、渡さない!」


「おい、会場に入ってしまうぞ!?」


「何を狼狽える必要がある! あそこから先は『四天皇してんこう』の白虎様が張った結界の中だ。バッチがなければ入れない!」


 先にはさっき刃が掛かった結界。さっきは痛い目を見たが、今度は違う!


「あいぃぃいぃ! 頼むぞぉぉおぉ!」


「アーーイ!」


 言われて藍がバッと両手を上げると、




──バチィ! バリバリバリ!!!




 激しい火花と雷が轟く。


「アーイ!」


 そして藍が両手を下げた、次の瞬間、




──パァン!




 その音と共に、結界は消え失せた。




          ✩




「!?」


 その同時刻、某国。その男(・・・)は飲もうとしていた中世風の彫り物が施されたコーヒーカップを口元で止める。


「どうかなさいましたか、白虎様」


「……今、俺が張った結界が破壊された」


「……え?」


 その言葉に召使いは持っていたトレンチを落として顔を真っ青にさせる。

 それはつまり、世界最強の一角が張った結界を解除できるほどの輩が現れた、ということだ。いいことのわけがない。


「まっ……まさか、『あのほこら』の結界が!?」


「いや、『祠』じゃねぇ。『J-アリーナ』のだ」


「『Jアリーナ』ってまさか……狙いは『I-G(アイグランプリ)』ですか!?」


「だろうな。こうしちゃいられねぇ」


 男は飲もうとしていたカップを机の上の受け皿の上に置き、2m程の高さの大きな窓からのぞめる降り敷きる白雪を眺めた。


「……ちょっと行ってくるか。留守を頼む」


「で、では今すぐジェット機をご用意を──」


「んなの必要だと、誰が言った?」


 外の白銀の景色から召使いに視線を戻して、その男は自信満々に告げた。




「忘れたのか? 俺様は『四天皇・迅雷じんらい白虎びゃっこ』だぞ? 俺様自身より速いものはねぇ」




「そ、それは心得ておりますが……」


「大丈夫だ。かるーく結界直して犯人にお灸を据えたら帰ってくるから。夕飯は食う。ちゃんと用意しといてくれ」


「いえ、そういうことではなく──!」


 その言葉を聞く前に、次の瞬きの間には男の姿は忽然と消え失せていた。召使いは頭を抱える。


「あの方、また私の『道標ロードマップ』を受け忘れて……極度の方向音痴(・・・・・・・)なのに……どうして忘れていくんですかぁぁ!?」


 召使いの叫びを聞くものは、ただの1人すらいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ