開会式 6
「どこだ……ここ……」
刃は3階席の右翼側にいた。
藍達がどこにいるかわからない以上、周りが見渡しやすい場所の方が見つかる可能性があると思っての行動だったが。
「くそ……よく考えたら、こんな中から見つけることなんて出来んのかよ……」
最大収納人数の3万人とは行かないまでも、180校の人間の関係者が集結してるわけだ。
それに単なる観戦者もいる。
ファンファーレが鳴り響き、行進が始まっているアリーナに皆の目は釘付け。座っているとはいえ、この中から小さな少女1人を探すのは果てしない困難を極めた。
「はやくしねぇと……行進が終わって──」
「アーーーーイ!」
「!?」
その少し甲高い女の子の声。
「この声って……!?」
刃はその声に反応して振り返ると、
「アーーーーイ!」
「へぶあっ!!?」
小さな体は鉄砲玉となって刃へと飛び、その脳天はしっかり刃の体の軸を捉らえた。
堪らず刃の体は青天、その上に藍色の長い髪が綺麗に映し出される。
「いきなり……ダイビングアイは……ねぇだろう、藍……」
「アイ!」
鉄砲玉、もとい火野藍は無邪気に刃の上で笑っていた。
「って、そんなこと言ってる場合じゃねぇ! 藍、一緒に来てくれ!」
「アイ!」
藍の了解を得ると、刃は藍を抱えてゲートまで走る。
「ま……て……じん……ヒィ……ハァ……」
別方向からおじさんがバッチを持って追い掛けて来たのにも気付かずに。
「ハァ……ハァ……」
御歳60近いおじさんに全力疾走は無茶だったようで、おじさんは力尽きてその場に両手をつけて倒れ込んだ。
「ハァ……ハァ……まてって……」
おっさんの回りに淀んだ燈気が漂い始める。
「待てって……ゆうとるのが……」
燈気は赤色を帯び、激しく揺らめき、
「待てって……ゆうとるのが……聞こえんのかぁぁぁぁぁぁあぁぁあ!!!」
一気に膨れ上がり、爆発した。
「『解紋』!!!」
おじさんは立ち上がると、作業着の内側にあったI'temに手を触れて叫ぶ。
輝きが引いたおっさんの右手にあったのは、I'tem『形態・モップ』。
「『弐紋字・爆走』!!!」
そして燈気を練ったモップの上に両足で乗る。まるでスケボーでも乗るように。
「若いころは『灼光の彗星』と呼ばれたワシを本気にさせたこと……後悔すんなやァァァアァ!!!」
モップの毛の部分が逆立ち、燈気が集中。
──ズドオォォッ!
次の瞬間、爆風と共にモップに乗ったオッサンが高速で廊下を駆け抜ける。
「待てやぁぁぁぁあ、じぃぃぃん!!!」
✩
「はぁ……はぁ……着いた……」
刃は走りながら前に見えたさっきの入場門の入口に心踊る。
「これで……俺もI-Gに……!」
そう思って刃が入場門までスパートをかけようかという最中、
「まぁぁぁぁぁあてぇぇぇぇぇえぇ!!!」
「!?」
後ろから激しい音と共にその声。刃はチラッと後ろを見ると、
「待てやぁぁぁぁあぁッ!!!」
「な、なんだあれ!?」
赤い『何か』が猛スピードで刃達に迫ってきていた。
なんだありゃ、黒猫が一緒にいないキキか? などと一瞬考えた余裕はすぐいずこかへ消え去り、あとに残ったのは……、
「うおぁぁぁぁあぁぁ!?」
逃げる、ただそれのみ。刃は藍を抱えたまま再び猛ダッシュで通路を駆け抜けた。




