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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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開会式 5


「しかし……バッチがないと中には入れないし、もう式も始まってしまったな」


 困り果てた様子の警備員の言葉にも何も返せず、刃は小さくうずくまった。


「(うう……今からこの会場の全廊下を探すなんて無理だ。間に合わない。やっぱり……俺に『I-G』なんてのは淡い夢だったのか? 『I-G』に出るなんて、夢のまた夢だったのか?)」


 思えば、藍が来た頃からいい事続きだった気がする。これは、そのしわ寄せみたいなものだろうか。

 そう、藍が来た頃から幸せが過ぎたのだ。だからきっとこんな──


「……ん?」


 瞬間、刃はあることを思い出す。


「っ!? 藍!」


 そう。思い出すのは鎧亜に会う少し前。藍にはどういうわけか分からないが『結界を破る力』があることを思い出したのだ。


「藍がいれば……もしかしたら!」


 この結界を破って中に入れるかもしれない。刃は急いで復活すると、観客席へ走る。


「(たしか藍は藤先生達に渡して、女将さん達が来たら一緒に連れて行く算段になっていたはず! ならもう時間的に……この会場には来ているはずだ!)」





「アーーーーイ!」


「こら、藍。あんまりはしゃぐんじゃないよ」


 刃の予想通り、藍と早苗、藤と溝渕は観客席にいた。

 広いアリーナを囲むように設置された5階建ての席の2階席、礼台の真っ正面の前から5番目。見晴らしがいい絶好の場所だ。


 藍はファンファーレに合わせて笑顔で手を叩き、上機嫌で体を揺らして「アーイアイ」を連呼している。




          ✩




「ウオォォォォォォッ!」


 刃はダッシュ全開。人間の限界を越えたMAXスピードで廊下を駆け抜ける。


「まぁ~てぇ~! じーん! ゼェ……ゼェ……待つんじゃ~!」


 後ろから来る青作業着にも気付かずに、全力疾走。


「あーーーーい! ど~こだぁ~!!!」




          ✩




──ピクッ!


「ん? どうしたんだ、藍」


 藍は今まで言っていた「アーイアイ」を止めて、急に固まったのを疑問に思った早苗がそう聞いたときだった。


「アイッ!」


 そう言ってピョンと早苗の膝の上から降りると、


「アーーーーイ!」


 人の足の間を縫って、走ってどこかへ行ってしまう。


「お……おい藍!? どこ行くんだい!? 止まりなさい!」


「『かいも──」


『オキャクサマ!』


 藤が『解紋』しようとしたとき、空を飛んでいた警備ロボが物凄いスピードで寄ってきた。


『オキャクサマ、会場内デノ『解紋』はオ控エ下サイ!』


「なっ、今はんなこと言ってる場合じゃ──」


「……もう遅いみたいだ」


 その溝渕の声に反応して藤が藍の行ってしまった方を見ると、もう人がごった返していて、藍の姿はいずこかへ消えていた。


「ちっ、手分けして探すぞ! まだ遠くには行ってねえはずだ。10分後に一旦ここに戻るぞ!」


 溝渕の言葉にうなづいて、藤と早苗も四方に散ったのだった。


「おい、藤!」


 早苗が行ったのを確認してから、溝渕は藤だけを呼び止める。


「何よ、急がないと藍ちゃんが遠くに行っちゃうわよ!?」


「そりゃわかってるが、さっきみたいな危ない橋はやめろ」


「…………あぁ。『解紋』しようとしたこと」


 藤がそう言うと呆れ顔でもう一回ため息を吐くと続ける。


「それもそうだが……目立つ行動は避けろ。俺らの素性がバレたら(・・・・・・・・・・)どうする?」


「……」


 その言葉に藤は目を細め、両者、真剣な眼差しで睨み合う。


「それはアイツの計画破綻を意味すんだぞ?」


「…………すいませんわ。少し軽率すぎたわね」


 その言葉を聞くと、溝渕は安心した様子でフッと優しく笑って腕を組む。


「まぁわかってるならいいんだがな。よし、行くか。あのおてんば姫の回収に。くれぐれも『解紋』はすんなよ?」


「わかってますわよ」


 その言葉を合図に、2人はそれぞれ藍を探しに散った。

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