ドキドキ、トキメキ 1
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「ふぅ~っ……気持ちいいわね」
「うん。身体の痛みがみるみる取れるもんね」
露天風呂に浸かりながら光、亮、蓮の3人は疲れを癒す。
この数週間の間に、3人はかなり仲良くなった。
それもそうであろう。同年代の女子が同じ部屋にいれば、それなりに仲良くなるのも必至。
「…………」
だから、蓮がいつもよりおかしい事も2人にはすぐにわかった。
蓮は光達から少し距離を置き、露天風呂の隅っこでタオルに空気を閉じ込め水の中でブクブク。その作業を延々と繰り返している。
「……蓮、何かあったの?」
「……………………別に、なんでもない(ブクブクブクブクブクブク)」
「…………」
やはり様子がおかしい。いつもより沈黙が長いし、さっきから俯いたまま顔を上げようともしない。
「「……(コクリ)」」
光と亮は顔を見合わせて頷き合うと、端に座る蓮に歩み寄る。
「……蓮、私たちでよければ話聞くよ?」
「…………(ブクブク)」
「まぁ無理になんて言わないけど、困ったことがあったら私たちにも頼ってほしいの。……私たち、もう『友達』でしょ?」
その言葉に蓮は驚いて顔を上げる。今まで自分を『友達』と呼ぶ人間などいなかった。
それは蓮の他人に対して壁を作るという長年の癖が原因であったのだが。
「……でも」
「そんなんじゃダメだよ。ほら」
「……!?」
また俯いた蓮の顔を光は両手で上げていてあげる。
「せめて顔は上げてなさい。下を向いてたら、気分まで下がっちゃうから。ね?」
「…………」
それから、部屋に戻ってきてもやはり蓮は遠くを見たまま何も言わない。
「(……やっぱり、おかしいね、蓮)」
「(うん。本当にどうしたのかしら)」
蓮は布団を顔を少し隠すように抱きしめて、隅でじっとしている。
こうなったら、部外者にできることは無いだろう。
「(……そっとしておきましょ。問題があればそのうち話してくれる──)」
「……あの、2人とも」
と、突然に蓮がその重い口を開いた。
「う、うん! 何?」
急なことでビックリしたが、なるべく平常心で対応する。
「……ちょっと、聞きたいんだけど……」
そう言うと、さらに顔を布団に押し込める蓮。何やら恥ずかしそうにしている。
「なになに? なんでも聞いてよ。私たちで答えられることならなんでも答えるから」
「…………」
少々の空白の時間の後、少し布団から顔を離し、蓮は恐る恐る言葉を吐き出した。
「……と……を……たくなるって……な?」
「「……えっ?」」
全く聞き取れない。
「な……何て言ったの、蓮。ごめん、聞き取れなくて……」
「……と……を……たくなるって……な?」
「…………」
ダメだ。どうやら恥ずかしさのあまりに重要ワードを小さく言ってしまっているようだ。
こういう時は、ゆっくり喋ってもらうに限る。
「……蓮。ゆっくりでいいわ。一単語ずつでもいいから言ってみて」
「……唇と」
「うん」
「……唇を」
「うん」
「……合わせたくなるって」
「うん」
「……どういうことなのかな?」
「うん、全部言えたじゃない!」
光は蓮が『言った内容』より、『それを言うこと自体』に集中していたため、蓮が大変なことを聞いてきたことに気付いていなかった。
「……ん?」
客観的に聞いていた亮は、赤らめた両頬を手で抑えて「キャー!」などと興奮している。




