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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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7『決着』


「『雷蹄らいてい』!」




──ドンっ!!!




「ガハッ!!!?」


 無限の腹を強い衝撃が襲い、思わず膝を付く。同時に『鏡装ミラーコート』も解けてしまった。


「ば……かな、てめぇ、なにを……」


「……何を……したの?」


「……大門寺流、構えの参『雷蹄らいてい』。私の道場で教えられてる技よ」


 蓮の呟きに応えたのは、大門寺家の長女、光だった。


「『雷蹄』は相手の鎧の上から波の気を送って、内側を直接攻撃する技。相手の鎧が強固であればあるほど、その中を通る威力は上がる!」


 内側……そうか、内側にある力では『反射』では跳ね返せない!


「でも……どうして刃が光の道場の技を?」


「あいつ、昔は兄貴によく仕込まれたからね。打たれ強さとタフさなら、そこらのやつなんか目じゃないわ」


「この……雑魚がああああああああ!!! 『反射リフレクト』!!!」


「ぐあっ!!!?」


 無限が放った紋字が全体を一気に吹き飛ばし、辺りに砂埃が舞う。


「ふざけやがって! ぶっ殺してやる! 俺様に楯突いたことを、あの世で後悔──」


「──させてみろよ」


「!?」


 吹き飛ばしたはずなのに、何故か目の前に拳を構えた刃がいた。有り得ない。あの威力で吹き飛ばせないはずが──


「──ッ!?」


 刃の後ろに刺さっていた謎の剣。それがつっかえ棒の役割を果たし、刃を支えていた。

 なんだ、あの剣は。


『これは貸しだぜ、あるじ


 刃の頭だけにそんな言葉が響いて剣は消えるが、今の刃には気にするだけの余裕はない。インターバルは5秒。無限に逃げ場はなく、紋字も間に合いはしない。

 この隙を、逃すわけにはいかない。


「有り得ねぇ……こんな、こんなことが……!?」


「ああああああああぁぁぁ!!!」




 そして、刃の燈気を込めた拳が、




「はぁああああぁああああ!!!」


「があああああああああ!!?」




 無防備な無限の土手っ腹を貫いた。




「が、は」


「……が」


 2人が倒れたのはほぼ同時。刃の体に溜まったダメージも相当であり、最後の無限の一撃も無傷ではなかった。


「…………嘘、でしょ?」


「『……マジかよ』」


 砂埃が消えて目の前に現れた信じられない光景に、麗華と和真ポッピーも己の目を疑う。

 あの特待生が相打ち。しかも、I’temも持たない相手に。その事実に他の面々も言葉を失っていた。


「……じ、刃!!」


 真っ先に動いたのは光。解けた結界の中に走っていく。


「試合は中断します。2人を医務室に!」


「……どう、して」


 宮守や他の人が動く中、蓮は動けなかった。

 I’temもなく、力も頭も足りなかった。勝てる見込みなんか微塵もない。そう思ったし、実際にそうだった。


「……どうして、刃は」


「……ああいうやつなんだよ、あいつは」


 呆然とする蓮に声を掛けたのは、満身創痍の流斗であった。


「……流斗」


「……I’temがなくたって、無いものを嘆いたりしない。自分に出来ることを探して、ただ真っ直ぐに走る。そういうバカなんだ」


「……バカ、すぎるよ」


 死ぬかもしれない。死んだら何もかも終わりなのだ。しかも、1回勝ったくらいじゃ何も変わらないかもしれない。もっと地獄があるかもしれない。

 狂った運命に、押しつぶされるかもしれない。


「かもな。でも、あいつはいつもこう言うんだ」





「──『諦めて下を向くより、希望を見て上を見続ける。その方が、ずっと面白いだろ?』ってな」


「……っ!」




 言われて蓮は刃を見る。気がついて周りに笑顔を振りまく刃。

 考えもしなかった。諦めるだけの自分にはない考え方。自分と同じか、それ以上の過酷な運命を背負っているにも関わらず、上を向いて歩みをとめない。

 そんな、彼の姿が。


「(…………あれ?)」


 蓮の心に小さな火をつけた。なんだか、胸が暖かい。心臓が高鳴る。興奮しているのだろうか。


「(……何、これ?)」


「……蓮?」


 流斗の問いかけにも応えられず、蓮は運ばれていく刃の姿を、ずっと目で追っているのだった。

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