7『決着』
「『雷蹄』!」
──ドンっ!!!
「ガハッ!!!?」
無限の腹を強い衝撃が襲い、思わず膝を付く。同時に『鏡装』も解けてしまった。
「ば……かな、てめぇ、なにを……」
「……何を……したの?」
「……大門寺流、構えの参『雷蹄』。私の道場で教えられてる技よ」
蓮の呟きに応えたのは、大門寺家の長女、光だった。
「『雷蹄』は相手の鎧の上から波の気を送って、内側を直接攻撃する技。相手の鎧が強固であればあるほど、その中を通る威力は上がる!」
内側……そうか、内側にある力では『反射』では跳ね返せない!
「でも……どうして刃が光の道場の技を?」
「あいつ、昔は兄貴によく仕込まれたからね。打たれ強さとタフさなら、そこらのやつなんか目じゃないわ」
「この……雑魚がああああああああ!!! 『反射』!!!」
「ぐあっ!!!?」
無限が放った紋字が全体を一気に吹き飛ばし、辺りに砂埃が舞う。
「ふざけやがって! ぶっ殺してやる! 俺様に楯突いたことを、あの世で後悔──」
「──させてみろよ」
「!?」
吹き飛ばしたはずなのに、何故か目の前に拳を構えた刃がいた。有り得ない。あの威力で吹き飛ばせないはずが──
「──ッ!?」
刃の後ろに刺さっていた謎の剣。それがつっかえ棒の役割を果たし、刃を支えていた。
なんだ、あの剣は。
『これは貸しだぜ、主』
刃の頭だけにそんな言葉が響いて剣は消えるが、今の刃には気にするだけの余裕はない。インターバルは5秒。無限に逃げ場はなく、紋字も間に合いはしない。
この隙を、逃すわけにはいかない。
「有り得ねぇ……こんな、こんなことが……!?」
「ああああああああぁぁぁ!!!」
そして、刃の燈気を込めた拳が、
「はぁああああぁああああ!!!」
「があああああああああ!!?」
無防備な無限の土手っ腹を貫いた。
「が、は」
「……が」
2人が倒れたのはほぼ同時。刃の体に溜まったダメージも相当であり、最後の無限の一撃も無傷ではなかった。
「…………嘘、でしょ?」
「『……マジかよ』」
砂埃が消えて目の前に現れた信じられない光景に、麗華と和真も己の目を疑う。
あの特待生が相打ち。しかも、I’temも持たない相手に。その事実に他の面々も言葉を失っていた。
「……じ、刃!!」
真っ先に動いたのは光。解けた結界の中に走っていく。
「試合は中断します。2人を医務室に!」
「……どう、して」
宮守や他の人が動く中、蓮は動けなかった。
I’temもなく、力も頭も足りなかった。勝てる見込みなんか微塵もない。そう思ったし、実際にそうだった。
「……どうして、刃は」
「……ああいうやつなんだよ、あいつは」
呆然とする蓮に声を掛けたのは、満身創痍の流斗であった。
「……流斗」
「……I’temがなくたって、無いものを嘆いたりしない。自分に出来ることを探して、ただ真っ直ぐに走る。そういうバカなんだ」
「……バカ、すぎるよ」
死ぬかもしれない。死んだら何もかも終わりなのだ。しかも、1回勝ったくらいじゃ何も変わらないかもしれない。もっと地獄があるかもしれない。
狂った運命に、押しつぶされるかもしれない。
「かもな。でも、あいつはいつもこう言うんだ」
「──『諦めて下を向くより、希望を見て上を見続ける。その方が、ずっと面白いだろ?』ってな」
「……っ!」
言われて蓮は刃を見る。気がついて周りに笑顔を振りまく刃。
考えもしなかった。諦めるだけの自分にはない考え方。自分と同じか、それ以上の過酷な運命を背負っているにも関わらず、上を向いて歩みをとめない。
そんな、彼の姿が。
「(…………あれ?)」
蓮の心に小さな火をつけた。なんだか、胸が暖かい。心臓が高鳴る。興奮しているのだろうか。
「(……何、これ?)」
「……蓮?」
流斗の問いかけにも応えられず、蓮は運ばれていく刃の姿を、ずっと目で追っているのだった。




