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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
63/313

3『2人の特待生』




「「ごめんなさい」」


 それが亮とカナ、それぞれが陣営に戻って開口1番の言葉だった。


「……まぁ、しょうがないですわね。元はといえば、こんなことがあるとは知らされていなかったのが1番の原因でしょうから」


「まぁそう言うなって。過程はどうあれこれで振出に戻ったんだ。これで次の試合に勝てば──」


「……試合、ねぇ」


 その言葉に麗香は気が重くなる。


「……試合になりますの、それ」


「『それには同意だけどなぁ』」


 和真の代わりにパソコン内のポッピーが答えた。


「ったく、本当にイヤですわ! 絶対にイヤ! なんで私があんなやつと出なければいけませんの!?」


 そう言って麗香は後ろで腕を組んで不気味な笑みを見せている男を指差すと、彼は高々と笑い声を上げた。


「ケケケ! 俺だってたまんねぇぜ。てめぇらみてぇな雑魚のお守りなんてなぁ」


「なんですって!?」


「『落ち着けテメェラ、身内で争ってどうすんだ!』」


「ケケケ、まぁよかったじゃねぇか。てめぇら何もせずに勝てんだからよ」


「……平沢無限。私は貴方の力は重々、承知しているつもりですわ。でも、私が貴方のやり方までを認めるなどとは思わないでくださいまし!」


 厳しい目付きで睨みつける麗香に、無限はケラケラと笑って返す。


「ケケケ! まぁそう言うなってお嬢様? 誰も俺には敵わねぇんだからよ。だから必然的に“ああなる”、しょうがねぇじゃねぇか!」


 そう無限が言うと、麗香は口をつぐんだ。無限に返す言葉を思いつかない。

 悔しいが、この男にはそのくらいのことを言える力があることを知っている。


「ま、せっかくだし楽しもうじゃねぇか。俺様の『蹂躙じゅうりんゲーム』をよ!」




「さて……こっちからは誰が出ますかね」


 一方、桜ヶ峰では宮守が頭を捻り、残り6人から誰を出すか悩んでいた。


「いや……とりあえず流斗と鎧亜は確定じゃないですか?」


「だったら最後の1人は光か蓮がえぇんとちゃうか? 防御に特化した『甲系』がいた方が対応もしやすいやろ」


「ふん。誰が来ようと関係ない。俺で終わるからな」


「……そりゃ大層な自信やな、鎧亜」


「事実だ。それに……向こうも同じ布陣らしいしな」


 相手サイドを見ると、平沢無限が先頭に立って腕を組みながらニヤニヤ笑っている。他の2人は1歩引いて、無限以外は戦う気がないと言った様子だ。


「向こうも総力戦、といった感じだな」


「……っていうかさ、よくよく考えたらなんで鎧亜も無限もおんなじような格好してるんだ?」


「あれは『12人の特待生』に送られる、特別なものなんだ。肩についている色がそれぞれの力を表している」


「……肩?」


 そう言って刃が鎧亜の肩を見てみると、確かに黒色の筋が入っていた。


「……そういや、鎧亜はさっき言った属性ってどれに当たるんだ? 黒なんてなかったよな?」


「なぜ貴様に話さなければならん」


「それについては、俺が教えるさ」


 そう言い出したのは流斗。


「……あれは鎧亜の家系の力だ」


「家系?」


「あぁ、特待生の家系は家柄でその能力がある程度固定されているらしい。そんで鎧亜は普通にはない特殊な属性『闇属性』だ。あの6大属性からは外れている。まぁ……『12人の特待生』に普通の能力のやつなんかいないけどな」


「……貴様、随分と詳しいな」


 珍しく鎧亜が口を挟んでくる。


「ちょっとこっちもコネがあってな」


「(そ……そうなのか。まぁ普通じゃないとは思ってたけど、あんま係わり合いたくないな)」


 そう考えたところで、刃も知らなかった事実をさらっと突きつけられたことに気づいた。


「ん? てか……鎧亜みたいな力持ってるやつがあと11人もいるのか!?」


「正確には『12人』だし、俺より強いやつはいないがな」


「…………」


 なんというか、鎧亜の自信家は変わらないらしい。


「だから『誰が出ても一緒』だと言ったんだ。どうせすぐにこの試合は終わる」


「なっ……なんで?」


「……みてればわかる」


 刃の疑問に流斗が答える。それはつまるところ。


「……俺達が口だしできるレベルじゃない、と言いたいんだろう?」


「あぁ」


 流斗の問いに鎧亜は即答。そして鎧亜は刃に向き直ってじっと顔を睨む。


「…………」


「な……何だよ?」


「…………貴様、出ろ」


『……は?』


 そこにいたほぼ全員が疑問譜を浮かべる中、流斗だけはその提案に驚くことはなく、静かに聞いていた。


「で……『出ろ』って……試合に出ろってことか?」


「それ以外に何がある」


 しばらく鎧亜のその提案に固まっていたが、やがて状況を把握する。


「な、なんで俺なんだよ!?」


「『誰が出ても一緒』だと言っただろう」


「だ……だからって……そんな意味不明なこと……」


「いや……薮蛇な話じゃない」


 そこで珍しく流斗が鎧亜の肩を持つ。


「お前は1回、どうやってかは知らないが鎧亜を退けた。それを配慮すれば……まだお前の方が意外性には期待が持てる」


「いやいや、あのときのことは俺だってよく覚えてないんだぞ!?」


 大体、あの時はI'temだってあったが今は思う通りに出せもしない。完全に足手まといになるのは目に見えている。


「大丈夫だ。お前には怪我はさせない」


「だ、だからってなぁ」


「……いえ、刃君でいきましょう」


 と、そこで宮守までもがその提案に乗った。


「ま、雅ちゃん先生まで!?」


「まぁまぁ、落ち着いてください」


 そこで宮守は刃の肩を寄せて小さく耳打ちする。


「……試合形式の方が、君のI'temが出るための良い刺激になるかもしれません。これは君のためでもあるのです」


「うっ……」


 そうまで言われると、断る理由の方が少ない。確かにこれは練習試合なのだし、こういうところで経験値を積めるのは得だろう。




―第3試合―


平沢 無限、花星 麗香、神宮寺 和真


  VS


黒道 鎧亜、水仙 流斗、火野 刃




 試合前に流斗は頭に青色の帽子を被る。


「……流斗、なんだその帽子」


「……お前、ちゃんと亮の説明を聞いていたんじゃないのか」


 聞いていた。合宿の話までは。


「……単純だ。これを被っているものが大将。団体戦はそいつを倒せば勝ちってことだ」


 流斗の話では、その帽子を被ったものが倒されるか燈気切れを起こした方の敗けだという。また、危険だと判断したさいに棄権を宣言するのもその大将だ。


「なるほど、そういう……ん?」


 そこで刃は流斗が帽子を被っていることに疑問を持った。


「あれ? 何かさっきの話の流れだと、鎧亜が大将なんじゃないのか? 俺で終わるとかなんとか言ってたし」


「あぁ、あれはそういうことじゃない。というより……そういう次元の問題じゃない……と言った方が正しいかもな」


 その言葉に刃は頭を抱えてクエスチョンマークを頭の上に浮かべる。


「それに決まりで『特待生』は大将にはなれないんだ。まぁ、言うより見た方が早い。よく見ていろ……始まるぞ」


「では皆さん、用意はいいですか? 最終試合……用意、始め!」


 宮守の言葉と共に周りを藤の結界が6人を包む。

 お互いの選手は『特待生』2人だけ前に出て、あとは後ろの方にいるというおかしな陣形。


「おい流斗、俺がここにいるのはわかるけど、なんで流斗までこっちにいるんだ? 鎧亜の援護くらいしてやっても──」


 いくらムカつくやつだと言っても、一応は仲間だ。それくらいしてやってもバチは当たらないだろう。


「援護くらい……か」


 だというのに、刃がそう問うと流斗は意味深にそう呟いた。


「……できればな」


「は?」


「「封紋華・激!」」


 と……その時、前にいた特待生2人が動く。それを見て、刃は言葉を失った。


「…………」


「……意味がわかったか?」


 刃はしっかり流斗の言いたいことを理解した。

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