5『桜』
「『初紋字・甲』!」
──ガキィン!
『!?』
全員が度肝を抜かれた。刃達の前に張られたピンク色の防御壁。それが鮫を食い止めたのだ。
思わず声の方向をみると、血を流しながら、息も絶え絶えにしながら、それでも立ち上がって紋字を発動する姿があった。
「「「……光!」」」
「……行きなさい、皆!」
当たり前だとも。このチャンス、絶対に無駄にはしない。
「『初紋字・嵐』」
「『息吹=蒼=』!」
翔矢の『嵐』が鎧亜を囲い、そこに流斗の氷の息吹が混ざる。一気に気温は低下。極寒地獄といったところだった。
「(……無駄なことを)」
しかし、鎧亜には通用しない。黒の鎧はその冷気すら遮断して見せる。
「『鮫刃』!」
そして黒の鮫がその暴風雪の嵐を切り裂くと、
「『初紋字』!」
「!?」
目の前にI'temを構えて燈気を剣に集中させる刃の姿があった。
「無駄だというのが、わからんらしいな」
「ハアッ!」
刃は振りかぶった剣を真っ直ぐ鎧亜へと降り下ろして、その剣は鎧亜の肩に当たって高い金属音を出した。やはり、その鎧に傷1つ付いてはいない。
「……ほらな」
片手で刃の剣を押さえて鎧亜はゆっくり逆の手に持った太刀に燈気を込める。
紋字を使えるインターバルはすぐに終わる。得物も押さえて逃げ場はない。このまま終わりに──
「無駄かどうかなんて、わからないだろ!」
「なんだと?」
「ここまで、みんなが繋いでくれたんだよ! 流斗が、翔矢が、光が! 俺をここまで連れてきてくれたんだ!」
刃が強く燈気を込めると、辺りに変化が起こる。
「(……なんだ?)」
鎧亜は自身の肩に何かが生えたのを見た。横目で確認すると、
「(……桜の、花?)」
そこには1輪の桜が咲いていた。真っ白で綺麗な桜。
それは、その1輪だけではなく。
「(なんだ……これは!?)」
それは1つ、また1つと数を増やし、やがて鎧亜の鎧だけでなく辺り一面に咲き誇った。
「その皆の思いを無駄になんかしねぇ! それに……何よりも、何よりも!」
刃がさらに強く燈気を込めると、桜の花がそれに呼応するように色を変えていく。
それは白から薄いピンク、そしてドンドン朱色へ近づいていく。
それに合わせて、もう1つの変化。
「(……なんだと!?)」
その桜が生えた鎧亜の『鎧帝』の部分から皹が入った。色がドンドン濃くなるにつれて、その皹は大きくなっていく。
「(まさか……この桜の花、燈気を吸って成長してるのか!?)」
有り得ない。自身の燈気じゃなく他の燈気を利用して発動する紋字など鎧亜は聞いたことがなかった。
「何よりも、藍を泣かせたお前を、俺は絶対に許さねぇ!!!」
それと同時に理解する。この戦い、早く決しないと不味いことになると。
「おおおおおおお!!!」
鎧亜がその太刀を降ろうとした瞬間、刃の燈気が大きく膨らみ、そして、
「『爆』!」
それは、大爆発を引き起こした。




