2『甘さ』
「……!?」
鎧亜にとって、それは見たことのない光景だった。
刃が自身の前方に放った紋字は『爆』、つまりは初紋字だ。
対して自分が放ったのは弐紋字の『咬鮫』。普通、初紋字と弐紋字には絶対的な差がある。
威力だったり範囲だったり効力だったり強度だったり、その差は色々だが、ただ1つ言えることは初紋字は弐紋字には勝てないということだった。
それが世界の常識。基本中の基本。そのはずだった。
「……バカな」
だが、刃が放った『爆』は鮫が潜んでいた地面ごと辺りを吹き飛ばし、全ての『咬鮫』を消し飛ばしていた。
いくらこちらが『結界』と『鎧帝』に燈気を割いているからといって、初紋字に砕かれる紋字ではない。
「……ありえん!」
「……『ふざけるな』は俺の台詞だ、黒道鎧亜」
刃の剣を握る手に力が入る。ちんたらはしてられない。早く光を病院に連れていく。
「……お前を倒して、ここから出る!」
「……ッ!」
鎧亜に更なる苛立ちが募る。ただでさえ格下のやつに目の前で立たれて、しかもこちらの紋字が砕かれた。
「……く、くくく」
「……何がおかしいんだ」
「……いや、なんでもないさ」
そうだ、何を固執していたんだ。別にこいつらを労ってやる必要なんかなかった。考えてやる必要なんかなかった。
──ズアッ!
鎧亜の身体から溢れ出す、大量の燈気。
「……!?」
「……感謝するぞ。お陰で俺は──」
そして、一気に肉薄。刃めがけて跳んでくる。
「くっ……!?」
間一髪のところで刃は剣で受け止める。鍔迫り合いになりながら、鎧亜は嬉しそうに笑って見せた。
「──己の甘さに気付けたよ」
恐ろしく強い力。このままでは力に押し潰される。
「!?」
と、鎧亜の周りに氷の柱が何本も発生。鎧亜の体を押さえ付ける。
「流斗!」
見ると、流斗が地面に剣を突き立てて紋字を発動していた。
「刃! 援護する、行け!」
その言葉に刃は1回頷くと、剣を構えて1歩下がった。
「『初紋字』!」
「ハアッ!」
しかし流斗の氷は『鎧帝』を身に纏う鎧亜を止めることは出来なかった。氷を砕いて刃へ再接近。
「!?」
「死ねぇ!」
紋字を使っている途中で動けない刃に、鎧亜の太刀が振り下ろされた。




