8『安心する場所』
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「あ、ああ、アアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
藍はとうとう、頭を抱えて発狂した。
「な、なんだ!?」
「なんや……これは!?」
発狂した藍の身体が発光する。まるで燈気のような薄い橙色だが、その輝きはどこか危険な雰囲気を感じる。
「!!?」
その藍の発した光に鎧亜は目を丸くした。
「お、おい藍!」
「ど、どうしちゃったのよ藍! 返事をしてよ!」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
光の必死の声も今の藍には届かない。藍が放つ輝きはどんどんその強さと範囲を広げていく。
「な、なんかこれ……やばそうやないか!?」
「そうだな……刃、光! 一旦距離をとれ! なにか危険だ!」
翔矢と流斗は少し離れながらそんなことを言ったが、
「…………藍!」
「今行くわよ!」
「お、おい2人とも!?」
刃と光は逃げない。まっすぐにその輝きの中へ突入していった。
「(くそっ!)」
「(ま、眩しくて何も見えない!)」
それでも苦しむ藍の声は耳に届いている。身体にも目に見える影響はない。まだ平気なはずだ。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
──暗い、冷たい。ここは、またあそこなの?
嫌だ、戻りたくない。もうあんな場所にはいきたくない。
誰か助けて。誰でもいい。誰でもいいから、私を助けて。
じゃないと、また私は──
「「……藍!」」
何か、暖かいものに包まれた。冷たい地面でも、冷えた手でも、鉄でもない。暖かなその体温。
「……大丈夫だ、大丈夫だぞ、藍」
「……パパ?」
「そうよ、だから怖がる必要ないわ」
「……ママ?」
気がつくと、藍は刃と光に抱き締められていた。二人の暖かな腕の中。すごく安心する。
「そうよ。落ち着いて、そうゆっくりよ」
「ま……ま」
「大丈夫だから、安心していいぞ。怖いものなんかない。もしあっても俺らがぶっ飛ばしてやる」
「ぱ、ぱ」
そうだ。もう前みたいな嫌な場所じゃない。とても暖かくて、安全な場所。
安心したら、急に眠くなってきた。でも、今なら寝ても大丈夫だ。
だって側には、『パパとママ』がいるんだから。
「……あい」
藍は笑顔で、そのまま眠りについた。
「おい、刃、光! 2人とも無事か!?」
藍の暴走が止まったのを見て流斗と翔矢が刃たちに走り寄ると、
「お、お前ら!?」
「お、おう……」
見ると2人とも汗を流して顔色が悪い。
「だ、大丈夫よ。少し疲れただけだから……」
「大丈夫なわけあるか!? すぐに保健室に行くぞ! 翔矢も手を貸してくれ!」
「了解!」
「わ、私は1人で歩けるから、流斗は藍をお願い」
「そんならワイが両肩で支えたる。ホレ」
「わ、悪い翔矢」
一旦寝ている藍を流斗が抱き抱え、翔矢は刃と光の肩を抱いて、立たせて校舎へ向かって歩き出す。刃も光もなぜか身体に力が入らない。
やはりさっきの藍の発した謎の『光』が原因だろうが、それを解明するのは後でいい。
「……」
それにしても、一体さっきのはなんだったのか。
あの藍の発狂と輝き、流斗はあれと同じものをどこかで見たような覚えがある。
それは確か、昔に読んだ本の──
「解紋」
その暗く重い声。その声に流斗は超反応。
「『弐紋字・結界』」
「!!!?」
突如、刃達の周りに黒の世界が広がる。
それは半球体に広がり、一定の広さに広がった後、その動きを止めた。
「な、なんや!?」
「解紋!」
狼狽する翔矢を尻目に、流斗は自身のI'temを解放してしっかりとそちらへ剣の切っ先を向ける。
それはこの『結界』を張った張本人。その人物は真っ直ぐにこちらにその変わらない冷たい目線を向けていた。
「……なんの用かな。黒道鎧亜」
特待生、黒道鎧亜。その瞳は人を見る目をしていなかった。
「……まさか、こんなところで見つけるとはな」
鎧亜が持っていたのは刀身が真っ白い太刀。おそらくは、鎧亜のI'tem。その刀身をギザギザの模様が柄から切っ先にかけて入っている珍しいデザインをしていた。
その目はまるで獲物を狩る獣の瞳。黒道鎧亜はなんの変鉄もないことのように、至って普通に言ってのけた。
「……そのガキを渡せ。従わなければ、死ぬことになる」




