6『雅ちゃん先生』
「……なるほど、先ほどの騒ぎはそういうことですか」
「は、はい。すいません」
「ははは、そんなこと気にすることではありませんよ」
職員室の前で4人して頭を下げると、前に立つその先生は持ち前の細目をさらに曲げて軽く笑って見せた。
「事情はわかりました、でも次からは学校で預かる場合は先に言ってくださいね」
国語担当教師、兼I'tem授業担当責任者、宮守雅人。通称『雅ちゃん先生』。
その温厚な性格もさることながら、I'tem実技担当責任者の肩書きに恥じぬI'temの実力で生徒からの人気も高く信頼も厚い。刃達のクラスの担任でもある。
「は、はい。すいません」
「よろしい。ではもうすぐ授業も始まってしまいますから、保険医の藤先生辺りにお願いすればいいでしょう」
さすが宮守先生は話がわかる。これなら問題はないと刃達は安堵した。
「それで……その子はどこですか?」
「……へ?」
その一言に刃達は辺りを見回し、
「い、いない!?」
今さっきまでそこにいた藍の姿がどこかに消えていた。
「ど、どこにいったの!? 今の今までここに……!」
「落ち着いてください、今までいたならそう遠くには行ってないはずです」
「宮守先生の言う通りだ。手分けして探そう。俺と翔矢はこっちを探す、光と刃はそっちから回ってくれ」
「「オッケー!」」
流斗の指示ですぐに全員が動き出す。流斗の考えている通りならすぐに見つかるはずだ。
「私はここから階段の上を見るから、あんたは1階をこのまま探して!」
「了解!」
階段前で光と別れて、もうすぐ授業が始まる人通りが少ない校舎の廊下を走り抜ける。
本来なら廊下を走るのは禁止だが、こんなときに言ってられない。
「ったく、藍のやつ今度はどこに──」
「早く早く! 急がないと授業始まっちゃうよ!」
と、校庭から女生徒の2人組が靴箱に戻ってきていた。どうやら外で遊んでいてギリギリになってしまったようだ。
「う、うん。でも、その前に先生にあの事言った方がよくない? 校庭にいたちっちゃな女の子の……」
「大丈夫だって! すぐに先生が気づくよ! それより急ごう!」
「……!」
その2人組はそそくさと2階への階段を上がっていく。でもおかげで藍のいる場所はわかった。
「藍は……校庭か!」
刃が急いで靴を履き替えて外に出ると、校庭の真ん中に小さな影がひとつ。
「……! 藍!」
間違いなく火野藍だった。刃は近づいて声をかけようとして、
「……なっ!?」
その藍の前にもうひとつある影に気づく。制服の上に白の羽織、前髪から覗く暗く冷たい視線。それはまっすぐに藍を写していた。
「黒道……鎧亜!?」




