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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第2章 特待生
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2『藍の能力』

             *




「……よしっ、鍵はかけたぞ! そっちからも確認してくれ!」


 刃はしっかりドアに鍵をかけ、部屋に立て篭もった。

 これからやるのは朝の再現。鍵をかけた状態を確認した後に、実際に藍を離してみようということだった


「ただ単純にあんたの鍵のかけ忘れだと思うけど……」


 そう言いながら光も部屋の外から施錠を確認。間違いなくかかっている。


「かかってるわ」


「よし。じゃ……藍を離してくれ」


 その合図で光は抑えていた藍の肩を離す。


 藍が光を見ると、光は人差し指でゴーサイン。そこで自分のすべきことを理解し、走ってドアへ近づき、鍵のかかったドアノブへ手をかけた。




「……やっぱ、なにも起こらないか」


 刃は部屋の中からドアの様子を見ていた。相変わらずノブに付いた鍵はかかったまま変化はない。


「……やっぱ……俺のミスだったのか? ノブの鍵にも何にも変化はないし……」



 刃はノブに顔を寄せ、マジマジと観察する。やはり自分の考えすぎで──




──バンッ!(突然、ドアが勢いよく開く音)




──ドコォ!(刃の顔面にドアノブが突き刺さる音)




──ドスン!(倒れた刃に藍が『ダイビングアイ』で追い討ちをかける音)




──ジタバタ……!(刃が悶絶する音)




「アーーーーイ!」


「ちょ、ちょい待って藍! さすがにそれ以上は死んじゃうから!」


 光が制止をかけてくれたお陰でなんとか死なずにすんだ。あれ以上はさすがに身が持たない。


「と、というか、何が起こったの?  確かに……鍵はかかってたのに……」


 光は驚愕の表情で立ち尽くす。それもそうだろう。刃だって見たことをうまく説明できるかわからない。


 でも、しっかり話さねばならない。刃は静かに身体を起こして光に言う。


「……光……ちょい話がある。リビングに行こう」




 その後、刃と光は机を挟んで向かい合う形で座った。


 藍は刃に抱えられて上機嫌なのか、笑顔で「あーいあい……あーいあい……」と繰り返している。


 刃と光はそんな無邪気な藍を真剣な面つきで見つめていた。両の鼻にティッシュを詰めていなければもう少しマシな絵面だっただろう。


「……で、何なの話って。さっきの事なんでしょ? この子の……」


 その問いにしばらく黙っていたが、刃は光に視線を向ける。


「……さっき、藍がドアを開けたときに……『有り得ない事』が起こった」


「な……なによ、その……『有り得ない事』……って……」



 緊迫した空気に息を飲みながら光は恐る恐る聞くと、刃は俯き気な顔を上げて答える。




「さっき……あのドアは……締まったまま開いた(・・・・・・・・・)んだ」


「…………は?」




 その発言に、光は自身の耳を疑う。意味がわからなかった。


「……それって、どういうこと?」


「言葉通り……締まったまま開いたんだ。俺はノブから目を離さなかったけど、ずっと鍵は締まったままだった。開く前も……そして、開いた後も(・・・・・)……」


「……」


 思わず光は言葉を失う。そんなことがあるのか。でも刃に実際に刃はそれを見ているし、嘘とも思えない。


「……そんなことって……あるの?」


「俺は実際にこの目で見てるんだ……。『ある』としか……言いようがない」


 次第に2人して言葉を失い、藍の黄色い声だけが部屋を賑わせていた。

 と、そんなタイミングで、


──ピンポーン♪


 とその時、玄関のチャイムが鳴り響く。


「おーい、じーん! ひかりー! きたで~!」


 声ですぐにわかる。それは翔矢の声。


 あれから刃達は話し合って、唯一現状を知っている翔矢と流斗に協力してもらおうという結論に至った。

 そして今日、その話をするために家へ招いたのだった。


 まさか、こんなことになるとはつゆとも思わずに。




             *




「…………にわかには信じられないが、実際にこの目で見たんだ。信じる以外にはないか」



 流斗が珍しく頭を抱えている。あれから刃と光は2人をリビングに入れ、刃達が今までわかったこと、あったこと、そして今日の不可解な事態。それらの全てを話した。


 そのあと2人と光にも、刃が見たあの不可解な事態を実際に見てもらった。


 やはり……ドアは開いた。締まったまま。


 その光景に2人は愕然とし、しばらく硬直したままだった。


 さすがの翔矢もあまりの事態に茶化して笑う事すらできず、流斗と一緒に頭を抱えていた。


「……最初は、『うおおぉ! お前らとうとう産まれたんかぁ! めでたいなぁ、今夜は赤飯かぁ!?』……って……思てたのに……」


「はっ倒すわよ」


「……ドアには手品の種も仕掛けも見当たらず、お前らを最初にあんだけ茶化したのに、殴り一発に留まってたし……とりあえず、その話は信じるわ」


 光の殺気にも動じずに、翔矢は茶化した際に右頬に受けた右手ストレートのあとを摩りながら言う。


「まぁ……そう思うのも無理はないな。俺らが来ていきなり出てきたのがこの『火野 藍』で……お前らを『パパ』と『ママ』だからな」


 流斗は腕を組み皮肉交じりの様に言い放つ。


「だから……藍がなんで俺らをこう呼んでるのかはわからないんだって」


 藍は現在、刃の膝の上でスヤスヤと寝息をたてて眠っている。


「……それで? お前らはこれからどうするんだ?」


「……どうするって……どういうことだよ?」


 流斗は「気づいてないのか」と、呆れ顔に嘆息付きで続ける。


「どういうことかは知らないが、藍には『閉まった扉を開ける能力』がある。このままじゃ、お前らが家を留守にしたら藍1人で外に出る可能性があるだろう」


「「……あ!」」


 そうだった。いくら鍵をかけてもそのまま出れるのなら大問題。そのまま勝手に外に出てしまう。

 やはり、流斗に話して正解だったと2人は思う。こんな奇想天外なときにでも冷静に判断できるのだから。


「そっか……あまりにも動転してて、そこまで気が回らなかったわ」


「さすがは流斗だな」


「……お前らなぁ。まぁいい。とにかくこれはご近所にも話せる事じゃない。ちゃんと対策を考えないと、この子自身の危険になる」


 その言葉以降、4人は頭を垂れて対策を考えるが、一向にいい案が挙がらない。


 どうすればいい、藍がドアに近づけば勝手にドアが開いてしまう。とはいえ常に刃か光が側にいるわけにもいかない。


 他の人に面倒なんて頼めないし、学校に連れていくなど論外。何か良案はないのかと首を捻って。


 やがて、刃がハッとして口を開いた。


「……閃いた!」


「「「え!?」」」


 刃のその言葉に全員は耳を傾ける。


「どんな!? どんな案なの!?」


 目を輝かせて聞いてくる光に気をよくして、刃は満足げに胸を張って答えて見せる。


「……確かに、藍はドアを開ける力はあるかもしれない。だったら……ドアに近づけなきゃいいんだよ!」


 その刃の発案に一同は唖然として固まる。


「………………どうやって?」

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