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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第2章 特待生
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5『少女』

 2人がゆっくり目を開けると、今の夕陽以上に明るかったその輝きがあった場所は萎んでいき、そこに1つの影が現れた。


 それは小学校低学年くらいに見える少女。長い藍色の髪がキラキラと夕陽になびいて輝いている。


「あ……あの子は!?」


「刃、知り合いなのか?」


 それは紛れも無く、あの“夢に出てきた女の子”だった。


 いったいなぜいきなり宙に現れたのだろうか。彼女はどこから出てきたのか、謎は深まる一方で──




「……ん? 宙に?」



 そう刃が思った瞬間、彼女を包んでいた光が弱まり、


──少女の体は急速に落下する。


「「ちょっ!?」」


 このままでは地面に激突する。

 刃と流斗は同時に走りだし、お互いに燈気を込めて紋字を発動。


「『激』!」


「『ボール』!」


 少女の真下に流斗が作り出した水の球体。その球にバウンドして少女の体は再び宙へ。


「うおおおおおおおおおお!」


 刃がなんとか飛び込んで少女をナイスキャッチ。


「親方! 空から女の子が!」


「言ってる場合か」


 そんな救出劇を余所に、少女は刃の腕の中で静かに寝息を立てるのだった。




             *




「……おい、刃。お前、これどうするんだ」


 少女と刃のパンチをまともに受けのびている翔矢を回収し、刃宅に連れ帰った。


「どうするって……あのままにはしておけないだろ」


「まさかこんな小さな子に手を出すとは思ってないさ。ただ、さっきのはなんだ? まるで“I'temを包んでいるような光り”が降ってきたと思ったら、そこから少女が現れた」


「いや、俺にも何がなんだか……」


 刃と流斗はお互いで見た出来事を整理しようとしたが、あまりにも不可解すぎて整理できたもんじゃない。


「とにかくもう夜も遅くなってきた。俺は翔矢を家まで送ってから帰る。お前はこの子を頼めるか?」


「えっ!? ど、どうするんだよこんなん! 俺、全くお守りなんてしたことは──」


「今はそれしかない。俺の方でも対応も考えとくから。とにかく頼んだぞ!」


 流斗は翔矢を肩に組ませて連れ出そうとしたが、思い出したように立ち止まってこっちを振り返る。


「そうだ刃。1つ言い忘れていたが──」


「ん、なんだよ?」


 刃がそう聞き返すと、流斗は斜め上を向き何か考える仕草を見せた。

 何か、嫌な予感がする。


「……流斗、何考えてる?」


 大抵流斗がこういう仕草を見せるときは何か良からぬ事を考えているときだ。刃は前科のある流斗をジトッと疑いのある目で睨む。


「いや……やはりなんでもない。じゃあな。くれぐれも、手は出すなよ」


「出すかっ!?」


「知ってるよ」


 流斗はふっと笑い、死体と共に部屋を後にした。


「……で、どうするよ……これ」



 刃の家のリビングのベージュ色のソファーの上には、全く知らない少女が、すーすー……と寝息をたてて横たわっている。


「……この子、確かに夢に出てきた子だよな。でも、一体この子は何なんだ?」


 刃はその子の顔に自分の顔を近づけ、マジマジと見つめた。すごく綺麗な顔をしている。きっと成長したら美人になるだろう。


 睫毛だって長いし肌もきれいだし(年齢的には当たり前かもだが)、確かにもうちょっと年齢が上だったら刃も変な気を起こしていたかも知れな──




──パチッ。




「うおぉおおっ!?」


 突如、少女が覚醒。

 その少女は寝ぼけているのか、目を虚ろにさせて身体を起こし、周りをキョロキョロ見回した。


「え、えっと、なぁ君、大丈夫か?」


 試しに刃が聞いてみるが、その問いに少女は答えることはなく、ぼーっとして辺りの様子を傍観。

 そして何分か経って、全ての部屋のものを見終えたのか、一番最後に刃の顔を見据える。

 すると、少女の虚ろだった目がぱっちりと開き、しっかり刃の顔に焦点があった。


「お……お~い……」


 刃は恐る恐る、しっかり目を直視しているその子に尋ねた。


「…………」


 返答なし。困った。意識ははっきりしているようなのに、意思疏通ができない。もしかしたら言葉を理解できないのかもしれない。


「お……おーい?」


 試しに目の前に手を降ってみるがやはり反応はない。諦めかけたその時、その少女は刃を指差してこう言った。




「…………パパ(・・)




 はっきり、確かに、そう言った。


「…………………は?」


 聞き間違いか? いや、そうに違いない。だって初めて出会った見たことも会ったこともない少女にパパと呼ばれるわけもない。


 そうとも、これは何かの間違い──




「パパ!」


「………………」




 しかし、少女は今度は確信を持った強い口調で言う。


 おい、待て。お前はいつ俺の娘になった。というか、いきなり何言ってんだ。そんなにこいつのパパと俺は似てるのか?


 そんな思考が頭を巡り、刃の頭のキャパシティーが限界を迎え、一度大きく深呼吸。




──そしてとりあえず、叫んだ。




「パパぁあああッ!!?」




 その刃の言葉に、少女は満足そうにニパッと笑ってみせた。

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