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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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ある秋の日 8


「知り尽くしているのがお前だけだと思うなよ?」


 翔矢と流斗は互いに不敵な笑み。やはり通いつめている人間はこういう時に強い。


「やっぱ、ワイにとっては幼なじみ3人が強敵やなぁ」


「おいおい、俺らだって簡単には捕まっちゃやらないぜ」


「『1人も捕まえられませんでした、なぁーんて情けないことにはならねぇようにな。ヒャハハッ!』」


 断とポッピー、いや、和真もやる気のようだ。


「わ、私はちょっと……走るとかは苦手で……」


「……私も」


「俺もやらん、バカバカしい」


「俺もぉ~。疲れるし」


 対して亮と蓮、鎧亜と矢田は否定的。


「まぁいいんじゃないか? 捕まったら言い訳できないもんなぁ、ケケケッ!」


──ピクッ!


「貴様……何が言いたい?」


「いんや別に。ただ意気地無しはそこで寝っ転がってろってことだよ、ケケケッ!」


──ブチッ。


「上等だ……今ここで細切れの肉片にしてやる!」


「鬼ごっこでは勝てないからってそれかよ! なっさけねぇなぁ、ケケケッ!」


──ブチブチッ!


「……いいだろう、下らない余興に付き合ってやる。もし貴様が俺以上早く捕まったら土下座してもらおうか」


 鎧亜が無限に上手く乗せられている。この2人も要注意だな。


「刃、ちょっと」


 と、光がこっそりと話しかけてきた。


「私たちは藍と3人であそこにいきましょ」


「あそこって……昔見つけた隠れ家か?」


 光が言っているのは、昔2人で遊びに来た時に見つけた隠れ家のことだろう。


「そうそう。あそこならぴったり寄り添えば(・・・・・・・・・)うまく隠れられるし」


──ピクッ。


 亮と蓮の耳が動いたのを2人は気づかない。


「あの時より体もでかくなってるし、3人で隠れられるかな?」


「見つかったら仕方ないわよ。藍に無茶させる訳にはいかないもの」


「それもそうか」


「あ、あの……やっぱり私も参加して、いいかな?」


「……私も」


 と、蓮と亮からいきなりの参加表明。


「あぁ。元はみんなでやるって話だったんだから、いいんじゃねぇか?」


「なら、今から100数えるから、その間に逃げぇ! その後にスタートするから全員覚悟せぇよ! いーち!」


 といっていきなりカウントを始める翔矢。


「おいおい! いきなりかよ!?」


「よっしゃあ! やるからにはこの久遠断、ぜってぇに捕まってやらねぇぜ!」


「ケケケッ! 退屈しのぎにはなるか」


「貴様、約束は忘れるな」


「っておい! まさか俺以外みんなやる気──」


『解紋!』


 矢田を除くほぼ全員が解紋し、ばらばらに飛んでいく。


「刃、簡単に捕まるなよ」


「そっちこそな」


 流斗も刃とは別の方向に飛んでいく。


「さぁ行くわよ、なまくら。あんたはI'tem無いんだから私が連れて行ってあげる」


「……へ?」


 そう言った光に刃はムギュと首根っこを掴まれた。


「へっ!? ちょ、ちょい待っ──」


「『激』!」


「アーーイ!」


 刃の言うことは全く光の耳には入っておらず、引っ張られた刃の視界は一気にさっきまでいた桜のピンクから、空の少し晴れた雲間から見える空の青に変わる。


「ま、待って光ちゃん、刃君!? 『激』!」


「……『激』」


 その後ろから蓮と亮もついてくる。




          ✩



 そうして、翔矢がカウントしている場には矢田だけが取り残された。


「…………」


 やるせない。なんともやるせない。


「へ……へん! こ、こんなガキみたいな遊び本気でやるなんてバッカじゃねぇの! こんなの本気でやるなんて小学生くらいだっての! なぁ、翔矢!?」


「51~、52~、53~」


 目を隠して数を数え続ける翔矢はどう見たって本気の様子。


「な、なぁ翔矢。こんな遊び止めて今から違う場所遊びにいかね! ゲーセンとかさ! 俺奢ってやるから!」


「60、61~、62~」


「あっそういえばあっちに可愛い女の子がいんだよ! お前に会いたがってんだぜぇ! 今から呼べば来るかもなぁ!」


「69~、70~、71~」


「…………」


 これはダメだ。微動だにしない。矢田はしばし逡巡し、頭を掻きむしる。これは諦めるしか無さそうだ。


「解紋!」


 矢田も折れて結局、全員参加。

 その鬼ごっこの決着がついたのは、晴れた空が紅く染まった、その日の夕方であった。

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