ある秋の日 7
「な、なぁんだ。そういうことでしたのね。ま、まぁ私は最初っからわかっておりましたけど……!」
汗を拭いながらそんなことを言う麗香。だったら早めに弁明して欲しかった。
「あーっ! 君、やっぱりあの時の!」
と、麗香の後ろにいた茶髪のぱっちり開いた瞳の女の子が刃に話し掛けてくる。
美人な子だが、1番気になるのは顔などではなくそのスタイル。はっきり言って……めっちゃ胸がでかい。服が窮屈そうに感じるほどに。
「……そういや気になってたんだけど、そっちの2人って……」
「あぁ、今の騒動で紹介が遅れちまったな。この2人がこの前言った合宿に来れなかった奴らだよ。右が、橘律子」
なるほど、律子というらしい。あのけしからんおっぱい。どうにかして写真だけでも貰えないだろうか。
ここは仲良くフレンドリーにいこう。邪な気持ちなどなく、純粋にだ!
「どうも! 律子って呼んでね! 今はグラビアモデルのお仕事してまぁす!」
「詳しくお話よろしいか?」
「刃君、ちょっと」
まさか死にかけるとは。
✩
「だ、大丈夫、君」
「いつものことですよ、アハハ。よいしょっと(ゴキ、バキ)」
「いつものことで外れた関節を治す人は見たことないんだけど……」
外された関節を治しながら律子の言葉に返す。そんなに珍しいことだろうか。
「でも……聞いてた通り面白い人だね、君!」
キラキラした瞳が真っ直ぐこっちを見てくる。これは男子なら誰でも勘違いしそうだ。
「実は私……けっこうあなたに興味あるんだよぉ?」
「は、はぁ!? な、なんで? 俺達今日会ったばっかりだよな……?」
「えぇ~、君けっこう有名人だよぉ? 自覚ない?」
「…………」
言われて1つ、刃には思い当たる節がある。
「……それってもしかして、あの開会式の……」
「うん。モデル仲間の中でも話題なんだよ! 『開会式で異形の開会宣言、彼と抱えていた子の正体は!?』ってね」
「ノオオオオオ!!!」
思わず頭を抱えて蹲る。最悪だ。あの事故はどこまで拡散しているんだ。
「なにせニュースでも流れたしぃ、そりゃ有名にもなるわよねぇ」
「ニュ、ニュース!?」
「うん、まぁ限られた局だけでだけど」
律子の言葉で納得がいった。だから会ったことがない人にまで言われていたのか……。
「……勘弁してくれって」
「……おぉ~い、こっちの紹介続けて大丈夫かぁ?」
「だ……断君、僕はいいよ……」
と、断がもう1人を肩を抱いて連れてきた。身長は断の肩くらい。小太りのショートヘアの黄色い髪の男。
「んなこと言ってんなって、ほら」
断はその男の背を押し、前に出す。
「だ、断君!?」
「こいつの名前は、太田丸男。うちの最後のメンバーだ。仲良くしてやってくれ」
そう断から紹介された彼は断の隣でモジモジして俯いている。
「わりぃな、こいつちょいシャイでさ。悪いやつじゃねぇから」
「あぁ。よろしくな」
「よ、よろしく」
刃が右手を差し出すと、少し戸惑って握手を交わす。
「じゃみんなせっかく集まったし、なんかやらない?」
と、光。
「ええな! 親睦会やな!」
「何か……か。この辺でできることといったら……」
「鬼ごっことか隠れんぼとかか?」
「鬼ごっこ……かぁ。小学校以来やってないわよねぇ」
「なんですの? オニゴッコとは」
「それはですね麗香様。やる人は捕まえる鬼と逃げる方に別れて、鬼が逃げた人を全員捕まえれば終了……というゲームです」
麗香の疑問にカナが答える。さすがは花星家のご令嬢。泥臭い遊びなどはやったことは無いらしい。
「よ、よくわかりませんが、楽しそうですわね!」
しかし、彼女達の格好はフリフリのドレスにメイド服。あれでは鬼ごっこなど走り回る遊びはやりにくい。
ここは暗に着替えた方がいいと伝えるべきだろう。刃は麗香とカナ、2人の肩に手を置いて、にこやかに告げた。
「ならまずは、2人とも服を脱ごうか」
「君は死にましょうか」
何故なのか。
✩
麗香とカナが着替えてきて、準備は整った。
「ならやるか、鬼ごっこ! 最初はワイが鬼やるで!」
「ゲッ、翔矢かよ!?」
「……これはこちらも本気でやらなきゃ、10分くらいでケリが着いてしまうな」
流斗はどこかワクワクした様子でそう言った。確かに翔矢の実力なら逃げ切れるやつなんてそういないはずだ。逃げるためには工夫がいる。
「なら範囲はこの公園内。I'temの使用は相手を傷つけないものなら使用可。鬼に捕まったら鬼が増える形式でいいか?」
「おぉ、えぇで! ただ、ワイはこの公園は知り尽くしとるからすぐ終わってまうぞ」




