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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第1章 I'tem~アイテム~
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9『みんながくれたもの』


「は……はは! な、なんだ焦らせやがって! ちょっとビビったが、今ので決められなかったのは致命的だったな!」


 気づいた矢田たちもこっちへ向かってくる。ここで押し通せなければ、自分は全員に囲まれてゲームセット。勝ちの目はなくなる。


 しかし、棒の下には身体を『げき』で強化した敵が3人。対して自分の封紋華の『激』では明らかに押し通せない。そんなことはわかってる。


「とっとと諦めろっつーの! 見苦しいんだよ!」


 矢田の叫びが刃の耳に届く。見苦しいだろう。情けないだろう。こんなことでしか勝つ方法を見いだせない。


 でも、それでも。


「……そんなこと、わかってんだよ!」


 最初から何もないなんて、自分が一番わかっている。でも、そこで諦めるわけにはいかない。


 諦めたら、ここまで信じてくれたやつを裏切ることになる。


「そっちの方が……百万倍辛いんだよ!!!」


 刃は右の握った拳に燈気を集める。足りないなら、ありったけをかき集めろ。落ちる勢いも利用しろ。体重も乗せろ。


 今ある自分の全てを、この拳に!


「『封紋華』ッ……!」


 封紋華ふうもんかでは基本紋きほんもんの使用しか認められておらず、弐紋字セカンドスキル以上の紋字を使ってはならない決まりがある。


 なぜなら、身体に紋字を封じ込めて使う封紋華でそれ以上の紋字を扱えば、身体に負担が大きすぎるからだ。


 さらに同じ理由で、基本紋の中でも使ってはいけないとされているものがある。


 基本紋の5つ。身体強化の『げき』、防御の『こう』、貫通力の『穿せん』、遠距離攻撃の『げき』。


 そして、攻撃力を司る、その紋字。


『刃、この紋字は普通、封紋華で使うことは禁止されている。なぜなら、人体の損傷が大きくなる可能性が大きいからだ』


 過去にこの話は、流斗からされた。自分が戦う方法を、真剣に考えてくれた。


『……じゃあ、これは使えないってことか』


『……いや、刃。これは人体を損傷させるなら禁止されているだけであって、デメリットを消してしまえばお前でも扱うことができる』


『え!? そんなことできるのか流斗!』


『あぁ。こうして右手にありったけの燈気を集めて、紋字発動時に左手で右手首を握って『甲』でコーティングする。これなら人体の損傷を最小限に納められるはずだ』


『そ、そんな方法が……』


『まぁ最初はムズいだろうから、俺もその特訓に付き合うさ』


 流斗がくれた、この戦い方で。


『刃、覚えとき。勝負っちゅーんはいかに相手の先手をとれるかや。相手を騙せ。油断させろ。そうすれば勝利はこっちのもんや』


 翔矢がくれた、その戦略で。




『……刃!』


──光がくれた、そのアイテムで!



「『甲』!」


 左手で身体の右腕をコーティング。そして、それを一気に放った。




「『封紋華ふうもんかばく』!!!」




 刃は拳に込めたその紋字を、倒れかけた棒の真上に叩きつける。


「らあああああああああああああああ!!」


『グアアア!!』


『ギャア!!』


 下で支えていた3人共々、柱は思いっきり地面に叩きつけられ、そして停止した。


『……ハッ! そ、そこまで! しょ、勝者は、正義の実行委員チームです!』


『ウオオオオオオオオ!!!』


 見入っていた実況が勝利のアナウンス。思いがけない勝利に辺りが沸く。辺りの誰も予期しなかった、その勝利。


「……へへ」


「……ふっ」


 しかし、その勝利を信じて疑わなかったものが3人。翔矢に流斗。そして、


「う、ウオオオオオオオオ!?」


──しまった、着地のこと全く考えてなかった!


 刃の身体は必死の抵抗も虚しくグングンと落ちていく。地面が近くなり、もうダメだと思わず目を瞑ったその瞬間。


「……全く。着地くらい考えなさいよ。本当にバカなんだから」


 身体が受け止められる感覚。恐る恐る目を開けると、そこにはやはりと言えばいいのか。


「……さ、さんきゅーな、光。お陰で助かった」


「どういたしまして」


 大門寺光その人だった。


 受け止めてくれたのは本当に助かった。とはいえ、正直この状況はどうかと思う。


「で、でさ光。早めに下ろしてくれると有り難いんだが……」


「あら、それはこの私にお姫様だっこされてる状態のことをいってるのかしら?」


「グッ……!」


──こいつ、わかって言ってやがる!


「そうねー下ろしてあげてもいいけど、いいの? あんただってあれやると暫く動けなくなるのに? こんな人目のあるところに全く動けず放置よ?」


 そう。身体を酷使する封紋華は全力で使えば、しばらく筋肉痛で動けなくなる。それを知っているからここまで光は強気で出られるのだ。


 正直、置いておかれる方が辺りの男女の嫉妬やら羨望やら怨念やらが混じった視線よか数倍マシだと思える。


「……!」


「お、おい光!?」


 と、急に光が膝から崩れ落ちる。


「へ、へへ。大丈夫よ、このくらい」


 大丈夫なわけがない。光だってずっとあの棒を1人で守っていたんだ。燈気の消費も尋常じゃないはず。汗だってひどい。


「まぁいいじゃない。全部終わったんだから、今は他の皆に任せて──」


「……終わったと思うか?」


「「!!?」」


 その声に光と刃は反応。その先にいたのは、


「矢田、あんた……!」


「……あんな決着で、こっちが納得してるとでも思うか? こうなりゃ第2ラウンドだ! 覚悟しろやぁ!」



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