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灯りのあるこの街で (短編集)

悩む彼と物欲しの彼女

作者: 新垣 電燈

相沢は今の自分が何物か分からなかった。こんな自分が社会の役に立っているのか、 自分にこの仕事が合っているのか。どこに行けば分からず、立ち尽くす日々だった。

相沢の愚痴を彼女はいつも聞いていた。相沢は彼女付き合ってくれとか言った覚えはないが、いつも話を聞いてくれた。だが相沢はこんな話題しか話せない自分が嫌だった。彼女の目はいつも虚ろで、この話題が嫌なようにしか見えなかった。この空気に耐えきれず、いつも一通り愚痴を吐いて、自分から席を立った。もっと楽しい話題で話したかった。




駅まで電話で受け答えしながら駅へ向かう。何度も人と肩をぶつけ、そして、鞄を落とし、中の書類をぶちまけてしまった。

拾い集める勇気はでてこなかった。どうして自分がこんな目にあうのか考える時間が欲しかった。

すると、一人の男性が声を掛けてきた。すらっとしたスーツの男だった。その男は

「お困りのようですね」

と言いながら書類を拾った。

「すいません。これからどうすればいいのか分からなくて」

相沢も書類を集め始めたが、明らかに男より集めるスピードが遅い。

「どうかされたんですか?」

男が問いかけたので、相沢は自分の心情を話した。すると男は、

「ではこのカードをよく見てください」

と言い、カードを取り出した。よく分からない模様が描いてあった。

「腕を出してください。」

相沢は腕を差し出した。男はカードの模様を相沢の腕に押し付けた。するとカードの模様が消えていた。

「あの、僕マジックが見たいんじゃ… 」

「これで今のあなたは人生を楽しく過ごせます」

そう言い、男は去っていった。


それから相沢は気持ちがだいぶ楽になった。ものごとを楽観的に考え、ミスをしても前向きに考えるようになった。

彼女にも楽しい話題をもっていけるようになった。先日起きたささいなこと、職場の上司のこと、いろんなことをおもしろおかしく話せるようになった。


ある日彼女はあることを口にした。

「前のあなたの方がよかった。いまのあなたはちゃらけている。前の様に救いたいと思わない」

相沢は気が付かなかった。彼女は自分の愚痴を聞くことが苦でなかったこと。自分は彼女に話すことによって気が楽になっていたこと。いくら能天気になった自分でも、彼女が居なくなると自分の心の拠り所がなくなるのが分かった。

相沢は必死に元の自分に戻ることを誓い、別れたりしないことを願った。

相沢の必死さを見て彼女も別れないことを決めた。


相沢は彼女にこう言われたショックもあって、自分に自信がなくなり、なぜ生きてるのか分からなくなった。要するに前と同じようになったのである。だが相沢は二人でいる時間を大切にするようになった。自分の 為でも彼女の為でもあるから。


























数ヶ月後、彼女はこう言った。

「飽きた」

とある歌手の心情の変化とそれに対するファンの反応を元に書きました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 物事がうまくいかない事は往々にしてあるんですよね。それがよく伝わる、もどかしい作品でした。
[一言] じょ、女性は怖い……(笑) オチが最高でした。面白かったです(* ̄∇ ̄*)
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