006
「財宝、か」
溜息を吐いてそう言ったのはじっちゃんだった。
じっちゃんはそうして立ち上がると、
「ちょっと待っておれ」
とだけ言ってどこかへと消えていった。
そういうわけで、静寂が場を包み込んだ。
はっきり言ってじいちゃんはどこに消えたのか全然解らなかったけれど、ただ待っていろと言ったということは何かを探している、ということになるのかな。じっちゃんはこの状況で僕とミルディアで二人きりにして何をしているのだろうか。
「ねえ、あなた」
「うん? どうしたの?」
ミルディアが唐突に何かを言い出した。
よく見ると彼女はちょっと怒っているようにも見えた。
「……私のほうが年上だと思うのだけれど。あなた、幾つ?」
「十二歳かな」
「ほらね。私は十七だもん。五歳も年上よ。年上だと解ったら、何をするか、解る?」
年上だから何をするか……?
うーん、全然解らないなあ。
「年上だから、何をするの?」
首を傾げて、質問してみることにした。
「あのねえ……」
ミルディアは溜息を吐いた。何か悪いこと、言ったかな?
「私もあまり強くは言いたくないのだけれど、年下が年上に対してそれなりの態度をもって挑むとか無い? 旧態依然としたものは駄目だと思うけれど」
「そうかなあ。別にいいんじゃないかな。この島だと、特に年下とか年上とか関係ないけれど」
「関係ない……ええ……。うん……、まあ、いいか……」
ミルディアはもうなんか諦めてしまった様子。
結局何が言いたかったのだろうか。よく解らなかった。
「おお、待たせたな。探してきたぞ」
そう言ってじっちゃんがやってきたのは、それから少ししてからのことだった。
じっちゃんは古い紙を丸めたものを持っていた。
もしかして、それが海図なのだろうか。
「……まさか、これは」
「お前さんの言っていた、海図だよ。これがどれほどの価値があるのか、はっきり言ってわしには解らん。だから、価値の解らないわしが持っているよりもお前さんが持っていたほうがいいと思うのじゃよ。だから、それはお前さんに与えよう」
「ほんとう?! やった!」
それを聞いてミルディアは笑みを浮かべて、ガッツポーズした。
じっちゃんもそれを見てすごく楽しそうだった。
もしかしたら、僕が言うチャンスは今しかない――?
そう思って、僕は声を出した。
「あ、あのさ」
じっちゃんはそれを聞いて、僕のほうを向いた。
そして、じっちゃんは、
「どうした、急に水を差すようなことをして。何があった?」
まるで僕が何を言いたいのか解っているかのように、冷静に、そう言った。