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前世魔王の悪役令嬢は主人公になれない!?  作者: 亀梨名光
第二章 パティシエ―ルは前世魔王!?
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第二十七話 公民館でお菓子コンクール、ですわ

 五月晴れ、なんて言葉がおあつらえ向きの、五月五日のこどもの日。


 私は家から歩いて丘目木町の公民館に向かった。


 公民館は、再開発の時に南側から北側に移転したらしくて、比較的新しい建物だ。


 とは言っても、あくまで『比較的』の話で、二十年近く前の建物だからそれなりにボロが目立つ。外から鉄骨で無理くり耐震強度を補強してあって、建築当時はおしゃれな建物だったんでしょうけど、今は見る影もないわね。


 ――まったく、こんなポンコツな建物作るぐらいだったら、あの幽霊ガードレールを何とかしなさいよね!


 なんて八つ当たり気分なのは、相変わらず一日のもだもだを引きずってるからかしら。


「ええと、お菓子コンクールの参加者受付は……っと」


 自動ドアをくぐってすぐのところにある案内表示を見る。A4のコピー誌にゴシック体で印刷された案内表示。デザインもへったくれもあったもんじゃないわね。これだから庶民は――なんて、私ったらまた八つ当たり。


 ええと、関係者受付は左手で、一般受付は正面みたいね。私は左側に回った。


「あら?」


 受付に見知った二人を見かけて、私は首をかしげる。


「ぴあのさんに枇々木先生?」

「あっ、六花ちゃん!」

「南、廊下を走るな!」


 ぴあのさんがこちらに向かって駆けてくる。受付の席に座った枇々木先生の怒鳴り声がその後ろに続いた。枇々木先生、学校関係の行事以外でも平常運転なのね……。


「二人ともどうしたの、ここ関係者受付よ」

「見ての通り、受付係のボランティアだ」


 仏頂面で答えながら、枇々木先生はリストから私の名前を探して、横にチェックを入れる。


「伊妻六花。受付完了だ」

「ありがとうございます。それで、ぴあのさんは? 観客なら受付はこちらじゃないのではなくて?」


 私はぴあのさんに尋ねた。


「ううん、やっぱり私も参加してみようかなと思って」


 ええっ⁉ ぴあのさんも参加するですって?


「ちょっと待って。ぴあのさんは確か『エリーゼ』の代表で出るはずだったけど、お菓子作りに自信がないから私に代理を頼んだのではなくて?」

「うん、だから手続き上は『エリーゼ』代表は六花ちゃんで、私は個人参加だよ!」

「そんなのってアリなの?」


 場合によっては、それこそご両親とぴあのさんの不仲説とか囁かれるんじゃないかしら。大丈夫なの、それって。


「パパとママにはだいぶ無茶言っちゃったんだけどね。でも、やっぱりトシ君に心を開いてもらうためのお菓子は自分で作らないと!」


 もしかしてこの前のアレ、そう解釈しちゃったの⁉


「ぴあのさんって本当にお人よしね」

「いやぁ、それほどでも」

「誉めてなくてよ!」


 やっぱりぴあのさんと一緒にいると調子が狂うわ。


「二人とも、仲がいいのは結構だが、問題は起こさないでくれたまえ」


 やれやれ、と、枇々木先生が首を左右に振る。


「今回は丘目木高校からの関係者が他にも二人いるから、あとで二人にも言っておくがな」

「二人?」


 一人は審査員の馬淵君だろうけど、もう一人は誰かしら。


「一年生で、私が行きつけの弁当屋のお孫さんなんだが。国木田守君と言うんだが――」

「国木田君⁉」


 あのスポーツマンモブの国木田君がお菓子作りなんてできたのね……。人は見た目によらないわ。


「あれっ」


 噂をすれば影。次に受付にやってきたのは、当の国木田君。


「枇々木先生と、千和ちゃんの友達の……?」

「伊妻六花よ。こちらは南ぴあのさん。今日はあなたのライバルとして参戦するわ。よろしくね」


 私は改めて国木田君に自己紹介した。


「国木田守です。よろしくお願いします」


 国木田君もおずおずと返す。幼馴染のケロちゃんの友達とはいえ、先輩女子が二人だものね。緊張するのもわかるわ。


「国木田守君、受付完了だ」


 枇々木先生が名簿にチェックを入れる。


「枇々木先生、おはようございます。今日は朝早くから受付ですか?」


 国木田君が不思議そうに首をかしげた。


「朝早くと言っても、平日ならもう一限目も半ばだろう。特別早起きはしていないが」

「いえ、昨日の夜、閉店間際にお弁当を買いに来たって、バイトの兄ちゃんが言ってたから」

「閉店間際……? 今あの店はチェーン店になって、閉店は日付が変わるころだろう? その時間なら私はもう寝ていたが」


 枇々木先生が首をかしげる。


「あれ? おかしいな。まあ、アガリ直前でバイトの兄ちゃんも寝ぼけてたんでしょう」

「そ、そうだな……そんなこともあるさ」


 ケラケラと笑って流す国木田君に対して、どうしてかしら、枇々木先生の顔色が優れない。


「枇々木先生?」

「いや、何でもない。それより、受付の前でたむろしていては他の人の邪魔だ。早く控室に入った入った!」


 追い払うかのように、枇々木先生がきつく言い放つ。


 ――枇々木先生、何かあったのかしら?

飯テロをちゃんと書けるか緊張している作者です。

下手したらコンクールに出る六花ちゃんやぴあのちゃんより緊張しているかもしれません。

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