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前世魔王の悪役令嬢は主人公になれない!?  作者: 亀梨名光
第二章 パティシエ―ルは前世魔王!?
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第二十五話 郷土資料室にて、二人の過去、ですわ

「南小学校、そして南中学校で、馬淵君は天才ストライカーとして有名だった……ってところまでは、みんな知ってるんだよね?」

「南小学校に南中学校?」


 私は首をかしげた。


「ああ、そうか伊妻さんは引っ越してきたばかりだもんね。丘目木には公立高校はうちだけだけど、公立の小中学校は南と北にそれぞれ一校ずつあるんだ。僕は北小と北中出身」


 なるほどね。ところで、公立がうちだけってことはこの間の不良集団は私立なのかしら。田舎は公立のほうが私立よりレベルが高いって本当だったのね。


「でも、実際馬淵君が実力を発揮できたのは、ミッドフィールダーの先輩の名アシストがあったからだって、大人は分析していたみたいだよ」

「その先輩ってもしかして……!」


 ぴあのさんが身を乗り出す。


「うん、南織牙先輩。確かぴあのさんのお兄さんだよね?」

「お兄ちゃんってサッカーやっててもパッとしないと思ってたけど、実は結構すごかったの……?」


 全然知らなかったみたいで、ぴあのさんは目をぱちくりさせて驚いている。


「素人目にはアシストの良し悪しなんてわからないし、ましてや小中学生じゃあ尚更シュートを決めた子にばっかり注目が行くからね。でもある程度サッカーを見る目が肥えてる人は、みんな織牙先輩のほうを評価してたみたいだよ」

「織牙さん、そんなにすごかったんですか⁉」

「ケーキ作りも天才だし、サッカーも天才……何をやってもできる人間っているのね」

「六花ちゃんも割とその部類だと思うけど」


 と、ぴあのさんは言ってくれた。


 けれど、勉強に関してはほとんど前世知識のチートだし、運動は中の上程度だし。ビジュアルは――まあ自信あるけれど、両親の遺伝と前世譲りの銀髪紅眼だから、別に才能ってわけじゃないし。


 ……あれ? 今まで魔王の生まれ変わりだとか社長令嬢だとかでなんとなく過ごしてきたけど、もしかして私って意外と平凡なのかしら? それはそれでショックだわ。


「でも、そんなに才能があったのなら、なんでサッカーをやめちゃったのかしら?」

「さすがに人の気持ちまでは図書館の資料じゃわからないけど……。でも、織牙先輩が中三、僕らが中一の時の地区大会の決勝戦でケガをして退場したのが、織牙先輩の引退試合みたいだね」

「あの試合が引退試合だったんだ」


 ぴあのさんにも心当たりがあったみたい。


「なんでちゃんと把握してないのよ……」

「だって中学生にもなってお兄ちゃんの試合全部は見てないよ。あの後馬淵君もサッカーやめちゃったし」


 うーん、ぴあのさんと織牙さんは仲がよさそうだけれど、中学生の兄妹なんて仲が良くてもそんなものなのかしら。前世も現世も一人っ子だからよくわからないわ。


「そのケガの原因って何だったんですか?」


 ケロちゃんが訊いた。


「パスを受けるはずだった馬淵君が前に出すぎて、オフサイドを避けるためにパスのタイミングを焦った結果、かなり派手に肉離れ。後遺症が残るレベルじゃなかったみたいだけど」


 うーん、オフサイドとか、サッカーのルールはよくわからないわ。


 でも馬淵君との連携がうまくいかないで怪我したってことみたい。


 それで引退したんだったら、やっぱり馬淵君に原因があるのかしら……? あまり疑いたくないのだけれど。


「結局、その時のシュート自体は決まったけれど、司令塔を欠いた丘目木南中は後半に逆転されて、県大会には行けなかったみたいだよ」

「そっか……。今わかるのはこのあたりかな。ありがとう、タカヒロ君」


 ぴあのさんは笑顔を作るけど、作り笑いがバレバレだ。やっぱり馬淵君が原因の可能性が高いからね。気持ちはわかるわ。


「でも本当にタカヒロ君って何でも知ってるんですね。なんでそんなになんでも知ってるんですか?」


 ケロちゃんが言った。


 確かに普通の図書委員はクラスメイトの試合記録なんて覚えてないし、六花も腐女子も知らないわよね。


 前世の記憶にしても、アルメギドには存在しなかった知識も知ってるみたいだし、どういうことなのかしら。


「うーん、『なんでこんなになんでも知ってるのか知りたいから』って言ったら難しいかな?」

「え? どういうこと?」


 ぴあのさんが不思議そうな顔をする。


「例えば僕に――」


 前世の話なのかしら。きれいさっぱり忘れてくれてる可能性は、ケロちゃんがかなり正確に覚えてた時点である程度あきらめてたけど……。私が魔王ルシファーだって悟られないようにしないと。敵同士だし!


 なんて私は身構えていたけど、タカヒロ君の口から出た言葉はその予想をさらに超えていたわ。




「例えば僕に、大正時代の記憶があるって言ったらどう思う?」



「大正時代……?」


 言っている意味がわからずに、私は聞き返した。


 だって、タカヒロ君の前世は賢者メルキセデクでしょ? だったらアルメギドにいたはずで、日本の大正時代なんて知るわけないじゃないの。


 でも、そんなことをズバリ言ったら私の前世がばれちゃうし……。


「前世の記憶、ってやつですか?」


 なんて悩んでいたら、ケロちゃんが助け船を出してくれた。


「前世というか、たぶん前世の前世かな」


 前世の前世……っていうことは、賢者メルキセデクよりさらに前世⁉


タカヒロ君は多重転生者でした!

多重転生ってロマン有りますよね!

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