プロローグ 令嬢の前世は魔王、ですわ
とこしえの闇に閉ざされし山の奥深くに聳え立つ魔王城。
その広間で、魔王ルシファーと勇者ツルギは対峙していた。
戦況は拮抗していたが、火炎魔法の隙をついたツルギがルシファーの懐に飛び込んだことで一転、ツルギの優勢となる。
「なに……?」
「喰らえ魔王! これで最後だ!」
ツルギの剣がぐっとルシファーの肩に食い込む。
剣は肩の骨を砕き、肺に達した。
ルシファーはたまらず吐血する。
「ぐハぁっ……! おのれ……このままでは……! このままでは終わらんぞ!」
もはやなりふり構っていられない。
魔王は自らをも巻き込む勢いで、至近距離の勇者に火炎魔法を放ち——
そこで、私は夢から覚めたのだった。
「丘目木三丁目ー、丘目木三丁目ー。次は丘目木高校に止まりますー」
のどかなバスのアナウンスが聞こえてくる。
うっかり居眠りしちゃってたけど、どうやら幸運なことに、目的地のひとつ前で目が覚めたみたい。
私は伊妻六花。高校二年生。パパは伊妻金融って会社の社長なの。
私には秘密があるの。それは私の前世が魔王ルシファーだったということ。
こっちの世界の神話にある魔王ルシファーじゃなくて、アルメギドっていう異世界のお話だけどね。
一回死んじゃったらしょうがないんだけど、そんな私も今ではただの女子高生。
前世の名残といえば、記憶のほかは銀髪と紅眼ぐらいのものかしら。——何よ、日本人が銀髪紅眼じゃ悪いかしら? 染髪もカラコンもしてなくてよ。
バスが交差点を曲がり、私が今日から転入する丘目木高校が見えてきた。
大きい学校、というのが第一印象。
そういえば、田舎の学校だけど、全校生徒は前の学校の二倍もいるってパパが言ってたわね。
季節外れの転入だから桜は少し葉っぱ交じりになってしまっていて残念だけど、それでもとってもわくわくするわ!
作者のキリナです。
少女漫画の悪役令嬢ちゃんってかわいいですよね。
なろうでブームと聞いて、ついに彼女たちの時代がやってきたかと……!
六花ちゃんを何卒よろしくお願いいたします!