05
美作さんが、ネックレスとブレスレットを作ってきてくれたのは、それから三週間後のことだった。
ようやくポストカードを刷り終え、納品を終えた峯岸が、暇なのか閉店時間になってもだらだらとテーブルに座って喋り続けているところだった。ちなみに、そのときの話題は、シャンプー難民の峯岸がいいシャンプーを見つけたとかいう、すっごくどうでもいい話だった。
「今、いいですか?」
「美作さん。どうぞ?」
「あ、よかった、峯岸さんもいた」
「美作、どうしたのー?」
「はい、これ約束の」
そういって美作さんは峯岸にネックレスを手渡した。
「わっ、マジで作って来てくれたんだ!」
ぴょんっと峯岸が立ち上がる。そして早速それをつけた。赤を基調にしたそのネックスレスは、ぱっと見、売り物と比べても遜色ない。
「やった! ありがとう」
「どういたしまして。三島さんも」
はいっと渡されたブレスレットを受け取る。峯岸と同じデザインを緑にして、ブレスレットにしたもの。
「あ、かわいい。……ありがとございます」
早速それを左手に巻いて、目線の高さまであげる。うん、かわいい。
「気に入ってもらえてよかった」
「本当! ありがと!」
「ありがとうございます」
「いえいえ」
そのまま、なし崩し的に美作さんもテーブルについて、峯岸と話はじめた。二人の会話をバックに、閉店作業を進めていく。
「しっかし、いいなー、美作は。アクセサリー作れて」
嬉しそうに何度もネックレスを指で弾きながら峯岸が言う。
「あたしに出来るのは絵を描くことだけだからなー」
その不遜とも言える峯岸の悩みに、唇が思わず皮肉っぽく歪む。から、慌てて二人に見えないように背中を向けた。
絵を描くことだけ?
絵を描けて、それ以上なにかを望むの?
「すればいいじゃん、アクセサリーに」
「は?」
美作さんの放った、あっけらかんとした言葉に、峯岸が驚いたように言葉を返す。
「すればいいじゃんって、何」
「できないこともないよ。やってみる?」
「えっ、えっ」
峯岸が珍しく、慌てたように声をあげた。