表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MIMIMI  作者: 小高まあな
3/28

03

 私は、Insulo de Triを私だけのお店にしたかった。だから出来れば、既製品だけじゃなくて手作り雑貨なんかを置きたかった。

 インターネットを通じて、何人か手作り雑貨を作っている方に声をかけて、この店に置いてもらうようにした。

 手作り雑貨系のイベントには積極的に顔をだして、良さそうな人を探していた。

 美作さんも、そこで出会った人だ。

 都内の神社の敷地内で定期的に行われている手作り雑貨イベント。そこで美作さんに出会った。

 美作さんはアクセサリーを作っていた。それも折り紙や和紙を使ったアクセサリー。

 折り紙を蓮や椿の形に折って、それを丈夫になるようにコーティングしてネックレスやピアス、ストラップなんかにしていた。

「これ、全部貴方が作っていらっしゃるんですか?」

 並べられた色とりどりの折り紙達を見ながら尋ねると、美作さんは恥ずかしそうに頷いた。

「前付き合っていた人に唆されてはじめたら、はまっちゃって」

 照れたように笑う顔が、可愛いと思った。

 だから正直、下心があったんじゃないか、と問われたら否定は出来ない。

 けれどもそれよりも大きく、強く、美作さんの作るアクセサリーにひかれた。

 赤い千代紙で作られたネックレスを購入し、名刺をもらってその日は帰った。

 帰ってから、名刺のアドレスにメールしてみた。よかったら、うちの店に置いてみませんか?

 返事は思ったよりも快く引き受けてくれるもので、ほっと一息ついた。

 その前に一度店を見てみたいから、とInsulo de Triにやってきた美作さんは、可愛らしいお店ですね、と笑った。それがとても嬉しかった。あんな素敵なアクセサリーをつくる人に可愛らしいと言ってもらえたことが、嬉しかった。

 美作さんは、アクセサリーを置くことを了承してくれて、契約は成立した。店の奥、ちょっとしたテーブルのところで紅茶をだして、契約についての話を進めた。そこから少し雑談をした。

「最初はカノジョが喜んでくれるから作っていたんですけど、どんどん楽しくなっちゃって。でもこれが楽しくなるころに、フられちゃって。おまけに不景気のあおりを喰って、仕事も辞めることになって。それでアクセサリー作りだけが俺に残って」

 だから今は週末にインターネット回線のキャンペーンの仕事をしながら、アクセサリー作成で生計をたてられないか、と目論んでいるのだ、と彼は言った。

「そういえば、ここの二階って住居になっているんですよね?」

 申し訳程度に外に出ていた、空き室ありますのポスターを思い出しながら頷く。

「大家さんってどんな人ですか? 管理会社任せな感じ? 今のところ、もうすぐ契約切れるんで引っ越そうと思ってて」

「あ、大家は私です」

「え、そうなんですか」

 美作さんは驚いたような顔をして、

「えー、じゃあついでに部屋の契約もしたいなあ」

 おどけたように笑った。

 その日はその話はそこで終わって、また改めてゆっくり部屋の契約について話すことになった。

 確かに二階は一部屋空いている。

 だけれども、女二人で住んでいるところに男性が入ってくるのは、峯岸が嫌がるかもしれない。あの子人見知りするし。そう思って、それとなく聞いてみた。

「別に?」

 思ったよりもあっさりと峯岸は答えた。

「三島がいいと思ったんなら、三島が信用できる人だと思ったんなら、いいよ」

 ぶっきらぼうにそう言うと、さっさと部屋にひっこんでしまう。慌ててその背中に声をかけた。

「ありがとう」

 私の目を信頼してくれて。

 その後、美作さんと峯岸を対面させて様子をうかがったり、作家としての付き合いから信頼できると判断して、Insulo de Triの二階、空き部屋は埋まった。

 空き室ありますのポスターは剥がした。

 これが現在の、この建物の現状だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んだよ!(拍手)
お返事はサイトの方で行っています

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ