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青い球体からの有権者  作者: 本宮傑
有権者
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尻尾付のコスプレ少女

 

 四月一日、入学式の早朝。

 2区の一部である高級住宅街は真新しい制服で身を包み心躍らしている若者で少し慌しい。

 霧宮一月も真新しい制服に身を包み朝の清涼な空気を吸いながら歩いていた。

 心躍ることはなかったが。


 10分程歩いただろうか、大きな交差点に出る。朝の通勤ラッシュの効果で見渡す限り人だらけだ。地獣観測前から東京は過密人口だったが大都市以外切り捨てた現在の日本の人口集中は悪化の一途を辿っている。


 一月はちらほらと見られる自分と同じ司崎高の制服姿の人を意味もなく数えていた。と、そこで視線が止まる。

 近くのオープンカフェに座ってる小柄な少女だ。茶髪のショートヘアに黒のカーディガン、膝上二〇センチだろうか、すごいミニスカートである。椅子に掛けているブレザーは司崎高の校章がついている。

 一月が目を留めた理由はミニスカートな上に足を組んでいるため下着が見えそう、ではなく尻尾。お尻の辺りから猫の尻尾のようなものが生えていたからである。しかも左右に揺れていた。


(なんだあれは、ああゆうコスプレグッズがあるのは知っているが普通入学式に着けていくか?)


 一月は関わり合いにならないほうがいいと判断したため、目線をはずしてそのオープンカフェを通り過ぎようとした。

 しかし、横切る時に少女の声が耳に入る。


「この時間じゃなかったのぉ? おかしいにゃー確かにここでやるって聞いたんだけどにゃー、お! きたきた」


 刹那、交差点の中央から轟音を上げながら大量の地獣が這いずり出てきた。辺りは突然のことにパニックにもならず呆然と追突していく車を見ているだけだったが、次々と我に返り悲鳴を上げながら逃げていく。

 額から嫌な汗を流しながら一月は思考する、思考しながら少女からは目を離さない。本能が告げている、地獣など歯牙にもかけない、本当に危険なのは奴だと。尻尾を揺らす少女から殺気のようなどす黒いオーラを一月は感じたのだ。

 少女の目線が一月と、合う。


「にゃははっこの場にいる人間で恐怖以外の感情を抱いているのは君だけだにゃー。随分私を警戒しているみたいだにゃ。理由を教えてもらえるかにゃ?」


 瞬時に一月は普通の人間ではあり得ない速さで飛び去った。

 汎用異能力の身体強化を使って。

 しかし誰でもこのスピードが出せるかというと否である、身体強化もまた実力差が顕著に現れる技術だ。

「ありゃーはやーい。私と同じくらいかにゃ? 人間にも面白いのがいるじゃーん」

 一月の後姿を見ながら追う気がないのか少女はストンと腰を下ろした。



 一月は追われてないことを確認すると足を緩めた。


(……2区に地中から地獣の出現、さらにはあの女の言葉、どういうことだ)


 走ってしまったので予定より早くついた学校はやはり大騒ぎな様子だった。

 教師であろう人が走り回っている。生徒に被害者がいるのかどうかなどの確認で忙しいのだろう。

 司崎高校は毎年多くの入学希望者が試験を受けにくることで有名だ。試験は異能を見せることと一般教養の二つ。

 異能力を測る指標として異能域、異能圧、の二つがある。


 異能力は自分の脳から発した異能波で異能域を形成し、その異能域内でのみ行使できる。

 どれだけ遠くまで飛ばせるか、どれだけ範囲を広げれるかというのが異能域であり、指定した異能域の強度や異能力の強さに関わってくるのが異能圧だ。

 

 例えば、二つの異能域が重なった場合異能圧が強いほうがより異能力を出しやすくなり、異能圧が弱ければ相手に押しのけられ発動域が狭められ、威力も若干落ちることが観測されている。滅多にないが余りにも実力差がある場合異能域自体を消し去ることもある。


 次に異能発動のリスクだが、異能力行使には脳のスタミナを消耗することになる。

 異能力は脳にα波を過剰に取り込み潜在脳を活性化させ作った異能回路から発せられる。(現代では遺伝で引き継いだ異能回路が大半だが)この回路が使い込まれてなければすぐにばててしまうのだ。この点では人間の身体の持つスタミナと似通っている。

 無理に使いすぎると頭痛を引き起こすことが判明しており、脳障害を引き起こす原因になるためかたく禁止されている。

 上記の全ては訓練により伸ばすことは可能だが当然先天性の実力差はある。


 以上から優秀だと判断された生徒が今日司崎高校に入学してくる。

 優秀だからこそか、地獣による被害者は〇で入学式を迎えられた。


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