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 柊きらりの日記より抜粋


10月 14日 同時に竜の月 火蜥蜴の日

 マぉぅが復活したょ。ナンテコッタぃ。

 ここはゥチの沢山ぅまれたせかぃやからね。

 がぉーって、ゃっっけちゃぅょ。

 ゥチはこぁいこぁいドラゴンなのょ。

 シュウにかっこぃぃとこ見せちゃうンだょ。



 転生法リインカーネイテッド・ソウルが使えるのは千年に一度。

 ゆえに魔王が現れしときのみ行使すべし。

 魔王は不死身なり、剣も矢も魔法も通じぬ。

 火と風を防ぎ、水と土を殺す。

 闇を我がものとし、光を喰らう。

 転生者をおいて他に戦えるものなし。


 今はなき王国に伝わるこの伝承は、人々には伝わっていない。

 唯一、転生法リインカーネイテッド・ソウルを解読した、魔女ルーシアを除いては。


 俺はキララの背に跨がり、久しぶりに遠出することにした。

 ドラゴン合コンなんてアホなことをさせないために、二人の時間をもっと作ることにしたのだ。


 「シュウ、ぁそこ、ゥチらが初めて、ょばれたとこだょ」


 地上には荒れ果てた城があった。

 皇帝の死後、盗賊たちに略奪されたのだろう。


 「ん?キララ、城に何かいないか?」


 城には見たこともない、角の生えた種族がいた。


 「武器ぉもってぃるょ?」


 鍛冶工房の煙が見える、兵糧が荷馬車に積み込まれている。

 あの種族たちは戦争の準備をしているようだ。


 やがて、銀色の髪に青い肌をした女が現れた。

 作業していたものは手を止めて叫ぶ。


 「魔王ヴァイリさま万歳! 世界に破壊と混乱を!」


 転生法リインカーネイテッド・ソウルはもう使えない。



 魔王の軍は瞬く間に進軍した。

 種族としての基本能力が違うのだろう。

 魔王の兵は人の兵10人に相当した。


 人間たちは、気がついた。

 争っている場合ではない、一致団結して魔王に挑まなくてはならないと。


 だが果たして、一致団結したところで人に勝ち目はあるのだろうか?



 鎧を着たハーバー卿の元に、騎兵が2人、別々の方向から駆けてきた。

 「ハーバー卿、布陣整いました」

 「同じく、こちらも布陣整いました」

 「ご苦労。」

 「いやぁ、これほど豪華な戦陣は見たことがありませぬな。

  やや、あれに見えるは太陽の騎士アグリッパ卿」

 「それだけではござらんよ、鉄人パーシバル卿、100人斬りのゲンツ卿、

  無敵将軍フェルナンド卿、傭兵団黄金の牙団長ボンゴレ殿もおりまする」

 「いやはや、一騎当千の英傑たちがこれほど集まるとは。

  魔王など恐れるに足りませぬな、光騎士ハーバー卿」

 「うむ……」


 ハーバー卿は暗鬱とした気持ちで戦陣を眺めていた。

 確かにここに集まったのは、いずれ劣らぬ名声を持つ騎士たちばかり。

 だがそれを統率するのは誰なのか?


 ハーバー卿とて彼らに勝るとも劣らない名の売れた騎士だ。

 だが、今必要なのは絶対的なカリスマだ。

 英雄たちを従わせる、大英雄が必要だ。

 今のままでは急拵きゅうごしらえの烏合の衆。

 連携の訓練もしておらず、各国の戦術はバラバラだ。

 このまま戦ったのでは勝ち目はない。


 「こんなとき、あの方がいてくれたら……」


 そう漏らした己をすぐに叱咤した。

 あの方……光皇子ブランドン様は、俺に国を預けるといったではないか。


 開戦の笛が鳴り響く。

 槍を持った騎士たちが我先にと魔王軍の歩兵隊に向かって駈け出した。


 そして危惧したとおり、恐ろしいことが起きた。


 突撃した騎士たちは魔王の軍を突破することが出来ず、囲まれてしまったのだ。

 次々に騎士たちが兵に囲まれ討ち取られていく。

 兵を鼓舞し、後に続く歩兵の恐怖を麻痺させるための騎士たちが、逆に歩兵への恐怖を煽ってしまった。


 ほんの緒戦、戦端を切ってから半刻足らず。

 戦況は決まりつつあった。



 「なあキララ、放っておいてもいいんじゃないか?」


 俺はキララにそう声をかけた。

 俺たちは部外者だ、この世界に何の義理もない。


 そりゃキララは無敵だし、死んでも転生する。

 でも剣で斬られれば痛いだろう、魔法で焼かれれば熱いだろう。

 そして自分で手首を切るのは怖いはずだ。


 一番の理由は、俺がキララが死ぬところを見たくないのだ。


 「心配してくれて、ぁりがとぅシュウ」


 キララは大きな口を開けて笑った。

 開いた口から、炎が少しだけこぼれた。


 「でも、ゥチはこの世界で126回、ぅまれて、そしてぃきたの」


 転生した記憶はすべて、キララの中に残っている。

 キララはもうこの世界の部外者ではないのかもしれない。


 キララは俺を高台に降ろすと、いつものように笑った。


 戦場は竜王イグソードの乱入により、一時混乱状態に陥った。

 魔王軍は、その統率力でいち早く立ち直り、竜王への攻撃を開始した。


 だが見よ! 吐き出す業火は、放たれた矢ごと陣を焼き払った。

 だが見よ! 唱えられた魔法は、砂塵となって陣を乱した。

 だが見よ! 引きぬかれた大木を剣のように振るい、陣を切り裂いた。


 人々は竜王が味方であると知った。

 竜王の咆哮を聞くと、心に勇気が湧いた。

 まるで英雄が叫ぶ鬨の声だ。


 次に人々は、竜が人の言葉で指示をだすことを知った。

 それはときには希代の英雄であり、ときに歴戦の騎士団長であり、ときに謀略に長けた王族であった。


 竜王イグソードは、紛れも無く王なのだと、最後に人々は知った。

 王の国はこの世界すべて、空の下に広がる、あまねく大地が、竜王の国なのだと。

 世界の王は侵略者を許さない。


 「忌々しいドラゴンめ! あれを使え!」


 魔王は呪文を唱えると、大岩ほどもある巨大な漆黒の宝石を召喚した。


 「まさかアレは!?」


 魔術を極めた魔女ルーシアはあれが何か知っていた。

 大地に穴を空けるほどの強力な爆弾だ。

 その上、大地を腐らせ、100年は草木の生えない死の大地へと変えるものだ。


 大魔女にして竜王キララは翼を広げると、敵の本陣へと突き進んだ。

 魔法の鉱石で作られた矢は、竜王の鱗を貫いたが、それでもキララは止まらない。

 驚愕する魔王に目もくれず、爆弾を掴むと、遥か天上へと飛び去った。

 高く、高く、飛び去っていった。


 空が白く輝いた。

 刹那の寿命を持つ第二の太陽が明々と輝き、そして消えた。


 我が身を犠牲にした王の姿に、人の兵たちは奮い立った。

 そして切り札を失った魔王軍が潰走するのは時間の問題だった。

 賢明な指揮官である魔王ヴァイリは、全軍撤退の指示を出した。


 人間は勝ったのだ。


 撤退する魔王の側で一羽の鳥が死んでいた。

 白く美しい鳥だった。どこか王のような気品を感じさせる鳥だった。

 しかし誰も気にする者はなく、1人の兵が乱暴にその亡骸を草むらへと投げ捨ててしまった。


 各国の最高権力者を示す証には、竜の意匠が必ず含まれている。

 それは、権力者があの竜王イグソードのような王となるよう、願いが込められているからだ。

 竜王イグソードの名は、世界の王として人々の中に生き続けるのだった。


  キララ 転生者レベル128 魔女レベル5200 騎士レベル3950 貴族レベル6846 妾レベル2054 英雄レベル8510 竜レベル999000 鳥レベル16 魔王レベル999999

・自殺者の剃刀クリエイト・リストカッター

無限転生エターナル・チャンピオン

・世界最強の魔女が持つすべての能力

・世界最高の騎士団の持つすべての能力

・世界を支配した帝国王族たちが持つすべての能力

・皇帝を虜にした愛妾が持つすべての能力

・いずれ歴史に名を残すはずだった英雄の持つすべての能力

・災害と言われた竜王の持つすべての能力

・空を飛ぶ一羽の鳥が持つすべての能力

・世界を混沌に沈める魔王の持つすべての能力


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