4
柊きらりの日記より抜粋
4月3日 同時に飛牛の月 穴熊の日
またシュウぉ。ぉこさせちゃったよ。
だってぉとこの人トぁそぶのはたのしぃもン。
でもでも、シュウはとくべっなのぉ。
でもでもでも、嫉妬するシュウはかぁいいなぁ。
LOVEされてぇるって、感じするぅ。
ぁとでぁやまらなぃと。
そぅいえバ村の人が、シュウのどぅぞぅ作るとかそーだぁんしてたょ?
シュウってばすごぉい。さすがゥチのカレシだね。エヘン。
自殺者の剃刀、そして無限転生。
キララの目覚めた転生者スキル。
自殺者の剃刀はナイフを一本手の中に作り出すスキルだ。
このナイフは殆ど普通のナイフだが、手首を切ったときにだけ、切られた対象のHPに関係なく即死させる効果がある。
これも十分チート能力な気がするが、あくまでこれはおまけだ。
無限転生こそがキララを無敵のチート的存在にしたスキルだ。
効果は死亡した時、近くにいる一番レベルの高い相手の過去に転生するというもの。
死因は関係ない。
たとえ死体が消滅しても自動的に発動し転生する。
転生対象は、その瞬間自分がキララの転生体であったことを思い出し、キララとして覚醒する。
そのとき転生体のスキル、レベル、知識、経験はすべてキララのものになる。
一度得た能力は再度転生しても失われない。
本当の意味でキララを殺すことは不可能であり、また転生を防ぐことも不可能である。
転生先は動物でも構わない。
また近くに転生体がいなければ範囲を広げ一番近い生物に転生する。
すでに人類最強の能力を得ている今のキララは無敵だった。
キララ……の転生体となった、愛妾アイーダの故郷は谷間を流れる川の辺の村だ。
アイーダは自ら望んで皇帝の妾となったらしい。
そのお金でアイーダの両親や兄妹は貧困から脱した。
アイーダは時に残酷姫と呼ばれる残虐な毒婦だったが、それは皇帝に気に入られるために、自ら心を砕いて歪めてしまった姿だったのだ。
村に戻ったアイーダに最初村の人間たちは戸惑い、警戒していた。
残酷姫アイーダの名は近隣諸国に知れ渡っていた。
とはいえアイーダが持ち帰った財宝を村に渡すと、そういった敵意は消えた。
陰謀渦巻く宮廷で生き残った、貴族や愛妾の技術は、今もキララの中に残っていた。
それから数ヶ月の月日が流れた。
キララは新しい家を建てて、そこで悠々自適に暮らしていた。
キララは世界最強の魔女で、世界最高の騎士で、世界最大の王族で、世界随一の愛妾だったが、村人としてのスキルは皆無なのだ。
というわけでやることと言ったら、俺と喋ったり、俺に抱きついたり、俺と一緒に横たわりながら月が綺麗だと言い合うくらいだ。
ただ困ったことといえば、今のキララは絶世の美女で大金持ちなのだ。
言い寄ってくる男は多い。
キララはそれらに対して曖昧な態度を取る。
元の世界にいたときと同じようにだ。
ときには合コンのようなものを開いたりしている。
「キララは俺の彼女だろ! 何やってんだよ!」
と俺が怒ると、泣きそうな顔をして。
「シュウぉスキなのと、ぉとこの人と遊びたぃのはちがぅの!」
このビッチめ!
まあいまに始まったことじゃない。
嫉妬はするが、キララが俺のことを本命だと言ってくれることに疑いはない。
でも嫉妬はする。
するんだからしょうがない。
俺は怒って家を飛び出すと、離れにある自室に篭った。
ここは俺の暇つぶし部屋だ。
俺は実験装置を使う。
取り出したのは谷間の鳥の住処の下から採取した白い糞石。
すなわちリン鉱石、これに硫酸をかけて過リン酸石灰を生成した。
これで三大無機肥料である、窒素肥料、カリ肥料に続いてリン酸肥料が完成した。
有機肥料による土壌改良実験は成果を収めている。
さらに効率、生産性の良い無機肥料もこれで完成した。
これからは休耕期間なしで、一年中田畑を使用することができるはずだ。
大したことじゃない、俺の世界じゃ当たり前に行われていることだ。
きっと小学生だってできる。
キララのチート能力に比べたら、俺のできることなんてこんな暇つぶしの肥料造りや、農具の開発くらいで、なんとも情けないものだ。
壁に立てかけられた農具は鉄製で硬い土も深く耕すことができるもの。
また馬に取り付ける馬鋤は、人間の作業を肩代わりする。
それらや肥料の使い方はすべてイラストで分かるように資料として残した。
キララが合コンしている間、嫌がらせに村の人へ農耕の指導を行った。
合コンしているやつには教えてあげないのだ。
勤勉なものに幸あれ。
今季の畑の生産高は例年の10倍に跳ね上がった。