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 ひいらぎきらりの日記より抜粋


10月 12日 同時に竜の月 妖鳥の日


 もぅマヂ無理。 異世界にぃかされた。

 今日デェトだったのに、ゥチゎもぅ戻れなぃんだって。

 どぉせゥチゎチートってコト、さっき王族コロした。



 俺の彼女はギャルだ。

 顔を覆う濃ゆいメイクに、週1で欠かさず通う日焼けサロンで、満遍なく焼いた小麦色の肌。

 奇妙なイントネーションの言葉遣いに、キラキラとしたアクセサリーで使いにくそうに変わり果てたスマートフォン。

 指先のネイルは分厚く長く、俺ならすぐに引っ掛けてしまいそうだ。

 俺と言う彼氏がいながら合コンにちょくちょく参加し、あまつさえ、俺に合コンをセッティングしろだの抜かす。


 浮気したことも何度もある。

 俺が問いただすと悪びれもせず。


 「本命ヮ、シュウだけだカゝら」


 なんて言いながら俺に抱きついてくる。

 そして目の前で浮気相手に電話越しで別れるとはっきり伝え。


 「言午シてくれる?」


 と、キスしながら言われると、意志の弱い俺は簡単に許してしまう。


 だがこれでも2年も付き合い続けている彼女なんだ。

 彼女の名前は、ひいらぎきらり。

 友人の間ではキララがニックネームだ。


 あと俺の名前は、武藤むとう 柊二しゅうじと言うのだけど、どうでもいいことだな。


 そのキララが、手首から血を流して倒れている。

 俺はキララを抱きかかえて泣いている。

 キララの体温は、流れ出る血と共に下がっていく。

 生命力に溢れていた小麦色の肌が、血色を失い黒く沈んでいく。


 「嫌だ! 死なないでくれキララ!」


 箸が転がらなくても笑っていたキララの顔は、今は蝋人形ろうにんぎょうのように固まり、ぴくりとも動かない。

 俺は、こうしてキララが失われつつある状況で、自分がどれだけキララのことを愛していたか知った。


 たしかにキララは馬鹿で下品でビッチで顔グロでギャルだった。

 でも子供向けアニメで泣くほど純真で、いつも笑顔で、俺が理不尽なことを言っても首を傾げて許してくれて……。


 「ふん、それで、お前が転生者なのかえ?」


 でっぷり太った中年の男は、床に流れるキララの血を、まるで汚いものでも見るかのように、鼻を鳴らしてそう言った。


 頭に血が上った。

 転生者はキララだった。そのはずだ。

 少なくとも俺には、何の能力も目覚めていない。

 俺はただキララが、奇妙な光に飲み込まれそうになっていたから、助けようと手を伸ばしただけだ。

 なのにキララが死んだ。

 転生者は俺だと言って、どこから取り出したのか、ナイフで手首を切って。


 「ああああ!!」


 気が付くと俺は、喉が切れるほどに叫び声なのか、それとも悲鳴かを上げながら、キララのナイフを持って男へ向かって走りだしていた。


 ガン!


 俺は見えない壁に阻まれて、後ろへと吹き飛んだ。

 強打した額が割れ、血が流れ出す。

 だがこれがなんだ、キララの流したあの大量の血に比べたら、何の言い訳にもならない。


 「無駄だ無駄だ、ここにいる、世界最強の魔女ルーシアの魔法で作ったフォース・シールドは転生者といえども破壊はできん。」


 ふとった腹を揺らしながら、王座の側に置かれたワイングラスを掴むと、厭らしい笑みを浮かべながら飲み始めた。


 「しかし情けないのう、どうやらそこの汚い女はお前の恋人か?

  しかしクッサイのう。どこの蛮人なのやら。

  それにお主もナイフで襲うだけとは、せめて神代の武器でも創りだして見せい?

  転生者などといっても大したことないようだの」


 まるで俺の激昂げっこうする姿をさかなに飲んでいるかのようだ。

 クソッ! クソッ!


 ルーシアと呼ばれた金髪の妙齢の女は何を思ったのか、つかつかと俺の方に歩いてきた。

 男は首を傾げたが、全幅ぜんぷくの信頼をおいているのだろう。

 何も言わず、ルーシアがどんな嗜虐的行為を行うの、目を輝かせている。


 ルーシアは不可視の壁をすり抜けた。

 自分で作った壁なのだからそれくらいはできるのか。

 その顔は何かを堪えるように俯いている。


 ついに、ルーシアは俺の目の前までやってきた。

 俺はせめて一太刀とナイフを握りしめる。

 だが、ルーシアが発した言葉は、俺の手からナイフを奪うのに十分な力を持っていた。

 

 「シュウに怪我させるぅとかぁ、もぅマヂ無理」


 ルーシアは振り返ると右手を掲げ、怒りを込めて叫んだ。


 「フォース・フィールド・カタストロフ!」


 俺の行く手を阻んだ壁が弾けた。


 「ひぇ!?」


 男は避ける暇どころか、何が起きたのか理解する暇も無かった。

 超硬度の壁を高速で叩きつけられ、周りの調度品ごと血煙に変わってしまった。

 最期のセリフは「ひぇ!?」

 これが、この異世界の半分を手中に収めたと自称する暴虐の王の最期だった。


 横に控えていた王族たちが、悲鳴を上げた。

 部屋の外に控えていた王を守る近衛騎士たちが、怒号とともに部屋に雪崩れ込んできた。


 ルーシアは俺の周りにフォース・フィールドを張ると、何十人という世界最高レベルの騎士たちに向かって不敵に笑った。


 「今、手首切った……」




 キララ 転生者レベル2 魔女レベル5200

自殺者の剃刀クリエイト・リストカッター

無限転生エターナル・チャンピオン

・世界最強の魔女が持つすべての能力


このネタをくれた名も知らない同胞に心からの感謝を。

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