格闘大会
「「「ハァハァ…。」」」
やっと着いた…そう言わんばかりの吐息が3つ聞こえる。なぜ3つかというと、お嬢様が王子様のお背中にお乗りになっていらっしゃるからだ…。
「いやー疲れたわねー」
「お前動いてねぇだろ!!」
そんな声が道に響く。
「まぁまぁいいじゃないですか。フレアさんも疲れていたのですよ。」
爽やかな笑顔で大地が言う。うん、爽やかすぎてもうどうでも良くなる。
「イニシオシティ…ですね。」
潤河が看板を見ながら言う。
あと数十メートル先に兵がいる。簡単に通してもらえるか……。
「あのー。すいません。能りょ」
「あぁ。新しいのね」
「こちらへどうぞー」
言葉を遮られ、あたかも当たり前の様に通された。やはり能力者は普通なのだろうか。
そう思いながら通ろうとした時、呼び止められた。
「そういえば君達はどんな能力だい?」
「あぁ。そうですね。私が「水の能力者」で、赤髪の娘が「炎」、茶髪の子は「土」で、黒髪の子が……」
「なんだい?言いにくいのかい?」
「あ、いえ。えっと…「無能力者」です。」
兵士は一瞬固まったあと、……笑った。そんなに面白いか
「はっはっはっはっ!!!」
「はぁはぁ……。ふぅ。面白いこと言いますねー。」
……笑った。そんなに面白いか…怒りが出て来る。
「いや、俺まじで「無能力者」ですから。」
「」
「」
再び固まった……。
「では、私たち先に行きますねー……。」
門をくぐり抜け、街の風景が目に入る。流石に能力者だけではないようだ。
「商売が盛んなようだな」
「そうですねー」
「せっかくですし何か食べていきませんか?ほら、中華からフレンチまでたくさんありますよ。」
「まっまあ大地が行きたいっていうならいってあげようかな?!」
「なにがいい?」
「えっとねぇ…あのお店!」
と何気ない会話が飛び交う。
「じゃあ昼には噴水に集合な」
と俺が言うと大地とフレアが店に直行していった。俺もどっか行こうと歩き出そうとすると、
「待ってください」
と潤河に呼び止められた。
「なんだよ」
「あそこに…人が集まってませんか?」
よくみるとあそこに人がたくさん集まるばかりか大盛況だ。
「とにかく行ってみようぜ!」
そういって走り出す。
そして騒ぎの中心を覗くと……
「おらぁ!おら、ドゥラァァ!!」
「ゴフッ!ゴフッ!おんどりゃあああ!」
どうやら乱闘のようだ。
「やめろよ!!!お前ら!!!」
ぴくりと時間が止まったように全員が止まる。その横で「あーもしもし?夢太?やめたほうがいいよ?」と言っている奴がいる。場違いにも程がある。
「何やってんだよお前ら!喧嘩はやめろよ!!そしてそこの観客!止めてやれよ!」
「いや…何って格闘大会ですが……」
司会者風の男性が言う。ほえ?
よく見ると、周りを小さな柵に囲まれていてドアらしきものが2つあった。そしてそのドアの後ろにはたくさんのムキムキが並んでいる。
「……」
「「「「「「……」」」」」」
「あ、すいません」
……んで試合に戻る。
「だから言ったじゃないですか…」
「……すまん。」
これだから勘違いさんはと潤河は試合を見ながら言う。
それにしても強そうなやつばかり集まっているな。
だが並んでいる最後尾にヒョロヒョロしている奴がいる。
えっと前から1、2、3、4、……9番か逆の方を見ると8人しかいない。
お…これは勝てるんじゃないかと思った。そして張り紙を見ると【飛び入り参加OK】文字があった。
よし、並んでみよう。
そして、何気なく説明を受け、並んだ。魔法と能力は使ってはいけないようだ。それを聞いてこの世界には魔法があるんだと思った。
それにしても、能力はどうやって使うのだろう。そんなことを考えながら、試合を待った。
そして俺の番が来た。
まぁ勝てるだろ。そう思いながらドアを開くと、さっきの男とは違う俺くらいの少年がいた。
むっ!……だが俺は喧嘩には自信がある!そう!自信があるんだ!と幼稚園時代の記憶を取り出す。
ふぅ。落ち着いた。
武器を選べたので、俺はアックスを選んだ。無能力の代わりに近接格闘が強いと思ったからだ。果たしてどうなのか。
相手は、素手だった。
ニタニタと笑っている。
「それでは始めましょー!!」
「「「「「トレス!ドス!ウノ!レディース!」」」」」
「「「「「ゴー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
それが俺の異世界で初めての格闘と……初めて敗北をした瞬間である