1話 交替
枕毛腐の初投稿です。
まず、これを見て頂く貴方に感謝です。
稚拙な表現や凡ミスなどが目立つかもしれませんが、直していけるように頑張ります。
では、この1話が枕毛腐にとって大きな1話となるように、『俺しか知らない勝算の上げ方』始めていきたいと思います。
それでは、どうぞ。
――――刃渡り10cm程度のナイフが目の前を横切った。
左上から斜めに振られたナイフを何とか避けようと体を反らそうとするが、勿論恐怖で震えた身体では出来る訳もなく――――
「――っあああああああぁぁぁ!!!!!」
振るわれたナイフは腹を浅く切るだけに留めたがそれでもまだ『死』は自分のすぐ傍にある。
「し、死んで、死んでくれっ! 」
正面にいる男は目に涙を浮かべ、必死な形相でこちらを睨んだ。どこか焦った様な面持ちでこちらを見るその表情には鬼気迫るものがある。
「……ゴメン…ゴメンな…」
何かを呟いた瞬間、男の顔つきがガラリと変わり、なんらかの覚悟を決めたように見えた。
そしてナイフを両手で構え――――
「しっ、死ねえええぇぇぇぇ!!!!!」
俺に向かって突き出した。
この男は一体誰なのか? 何故俺を殺そうとしているのか?
何も、分からなかった。
▽▼▽▼▽▼▽
~5分前~
(どっ、どどどっ、どーするっ!? 俺っ!?)
知らない男が我が家の玄関に入って来たのを階段から見た『田中耀司(たなか ようじ)』は軽いパニック状態に陥っていた。
心臓が早鐘を打ち、呼吸が上手く出来ない。通報、逃走、色々頭の中で案は出るが思いついた瞬間、焦りで全て消えていく。
もしそこらの人に、『この様な場面に居合わせたら通報しますか?』という質問を投げかけたら100%とはいかないまでも『通報する』と答えるに違いない。
しかし、それはあくまでも『もし』の事である。実際には体験していないし、その時の感情まで全て含めて答えるのは無理である。
つまり、耀司の心の中は焦りや疑問に埋め尽くされ『冷静』にその場から逃げたり、携帯を取り出し通報する、その様な行動が出来る状態では無いのだ。
また、出来たとしてもこれだけ近くにいてはすぐにバレてしまうので、『隠れる』という選択肢が一番良い。
(にっ、にげっ、逃げるか!? い、いや、その前に隠れて通報するか!? くそっ、どちらにしても早くっ、早くしないと――――)
と、ポケットから携帯を取り出そうとした瞬間――手から滑り落ちた。
ガン! ゴン! と、手から落ちた携帯が沈黙を破る。
――――目が、合う。
そのまま何秒かどちらも静止していたが、ゆっくりと。
男が胸元からナイフを取り出したのを、耀司は見た。見てしまった。
反射的に体が動いていた。
直ぐに階段を降り、リビングに入る。目に留まった小さいテーブルをドアに立てかけ、椅子やら箪笥やらをとにかくドアの前に置いた。
そこでやっと耀司は息をした。
とりあえずの時間は稼げた――かに思えた。
ドゴン!! と爆発する様な音がし、テーブルが目の前のすぐ横を『跳んで』いくまでは。
(――――意味が、分からない)
それはさっきから今まで起きた全ての事。
突然知らない男が来て、ナイフを持っていて、テーブルが跳んで。
全くどういう事なのか全然分からなかった。
夢なら覚めて欲しかった。夢でいて欲しかった。
だが、残念ながら夢ではない。
「――――――くれ」
ぞく、とする。
「――――死んでくれ」
▽▼▽▼▽▼▽
眼前にナイフの切っ先が迫る。
“それ“が孕んでいるのはどうしようもない殺意と死。
避けなければ勿論“死“しか待っていない。後ずさるように“それ“を避け――れはしなかった。
答えは単純である。
後ろに壁があったから。
そうして。
易々と俺はナイフで貫かれた。
どろ、と俺を動かす為の『何か』が溢れる。
前のめりに俺は倒れた。どんどんと『何か』が溢れていく。
そんな俺の耳に、誰かが囁いた。
「さあ、“交替“だ」
お読み頂きありがとうございました。




