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ヘタレがダンジョンに潜る 後編

ボス戦に届かなかった。


ボス戦は次回ということで。

『メルト山ゴブリン洞窟』の四分の三を見事に踏破!


向かうところ敵無しの勇者様ご一行!


首を洗って待っていろ魔神!(まあ俺も魔神なんだが)


と、まあ、初めてのダンジョン探索としては順調すぎるほど順調な私達だったが……しかし――










――空気が……死ぬほど重い。













はっはっは!


原因が何かだって?


前話の最後一行を見直せばまるわかりでしょうがッ!


「……あ、あれですよね、リリア様」


「……」


「初宝箱がミミックだなんて逆にレアな体験で、ある意味自慢話になりますよ」


「……」


「……あ、あの、リリア様?」


「……」


駄目だ。


返事が無い、ただの屍のようだ。


いや、歩いてはいるのでアンデッドか。


ゾンビと言い換えても差し支えはなさそうである。


魔王から冒険者へ、冒険者から盾へ、盾からゾンビへ……リリア陛下は何処へ向かわれておられるのか気になる今日この頃。


どんどんランクダウンをかましている現状では、勇者になるのは夢のまた夢かもしれない。




勇者イージスにより盾代わりにされて、ただでさえボロボロだったドレスには、さらにミミックの歯形が追加されている。くっきりと。


もはや、それをドレスと呼んで良いのかすら分からない。


体を包む布的な何かと表現すべきか。


胸や局部こそかろうじて守られているが、お臍などは丸見えである。


まあ、肝心なところが見えたからと言って、外見が幼女のため淫靡な香りは全くしないし、俺が興奮するとかそういうことはないのだが。


……ホントダヨ。


だって俺年上スキーだし。


リリア陛下のあまりに凄惨な格好に、唯我独尊、他人は石ころが標準装備の勇者イージスでさえも気が気でないらしく、時折後ろを振り返っては何か言いたそうに口をもごつかせて、結局は黙って前に向き直るという行為を繰り返している。


そんな息も詰まる空気を漂わせながら、俺達は先へと進むのであった。


                        ★


三人の間に漂う嫌な雰囲気が薄れ始めたのは、


「……そろそろ魔神が潜んでいると思しき最奥だ」


と勇者イージスが誰にともなくつぶやいた時だった。


俺はその呟きに対し、わずかに気を引き締めるだけだったが、


ピクン。


リリア陛下の体が一瞬震え、


「…………ント」


何かをつぶやかれた。


「は?」


「……イベント」


イベント?


俺と勇者イージスが首を傾げていると、焦れたらしい陛下が顔をあげ、地団駄を踏みながら叫ぶ。


「会話イベントをやるのじゃ!!」


会話イベント?


なんのこっちゃと俺は困惑を深めたが、一方で勇者イージスはリリア陛下の意図を察したらしい。


「ふん。本来ならば貴様の提案なんぞ、我が一刀のもと切って捨ててくれるところだが……」


チラリ、と陛下の様子を見た勇者イージスは、その瞳から零れ落ちそうな涙と、懸命な想いをくみ取ったらしく、会話イベントとやらを俺に説明した。


彼女が言うには、会話イベントは勇者達が冒険をしている最中に突発的に発生するイベントであり、ダンジョン侵入直後や、ボス戦直前、ボス討伐後に主に発生するらしい。


いやいや、いつ敵が襲ってくるかも分からない状況で何やってんの。と俺が呆れていると、会話イベントはパーティーの絆を深めたり、冒険にメリハリをつける上で割と重要なのだと教えられた。


「まあ、そこまでお二人がおっしゃるなら……」


「よし、では早速やるぞ!」


「ふん。とっとと済ますぞ」


三人そろってその場に車座になって腰を下ろす。


だが、


「……」


「……」


「……」


誰も口を開かない。


俺はそもそも会話イベントで何を話せばいいのか知らないし、勇者イージスは積極的に何かを語るタイプではない。


ではリリア陛下はどうかと言うと、俺達二人の出方を待っているようだ。


普段は鬱陶しく、邪魔くさいほどにおしゃべりなくせに、今回は口火を切りそうにはない。きょろきょろと、俺と勇者イージスに視線を送るだけ。


どうやらここにきて『特性  ヘタレ』が発動してしまったらしい。


仕方なく俺が状況を動かす。


「リリア様、会話イベントとは具体的にどのような事を話し合うのか教えていただけませんか」


「む? そうじゃのう。例えば昔話じゃの。自分がかつてどういった境遇にあったのか……とかじゃ」


なるほど。


互いの過去を知りあえば、おのずと相手を理解できそれ絆へと変わるのか。


ようし、では早速――










俺  

魔神として暗黒大陸の名家に生を受ける。

冒険者撃退で功をあげ出世。

魔王陛下の教育係となる。

魔王陛下の勇者調査に従い冒険者になる。












――うん、最初の一行で勇者イージスに首を刎ね飛ばされるな。


この話題は諦めよう。


「他には?」


「逆に、過去ではなく未来を語ったりする事もあるのう。平和な世界を取り戻そうとか――」


いや、俺達魔族ですからそれは無理。


「――『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ、OOと』みたいな」


それ何て死亡フラグ?


だがまあ、まともと言えばまともか。口に出しても特に問題はなさそうだし。


フラグクラッシュに関しては定評のある俺ならば死亡フラグくらい切り抜けて見せる。


ただ、俺には結婚の予定も相手もいない。


嘘をついて相手にばれるのも厄介だ。


なら、ある程度いじって真実味をもたせよう。





「俺、この戦いが終わったら葬式をするんだ、リリア様の」





「妾が命を落とすの決定事項!?」


実力的に生き残れるかどうか微妙。


「じゃあ、もっと他パターンを教えてください」


「あ、ああ。後は愛の告白程度しかのこっとらんぞ。パーティーの異性に想いのたけをぶつけるのじゃ。ま、まあ今回は練習代わりににお主の告白を妾が受け止めてやろ――」


「イージス様、貴女を愛しています」


「そうか。だが我は我より強き者しか愛さぬでな。身の程をわきまえておけ」


ああ、やっぱり最強系の女性のテンプレ恋愛観なんだ。


変な所で納得してると、陛下がいじけ始めた。何があったのだろう?



























特にオチはありませんw。


次回こそボス戦。


そしてフラグが立つ。

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