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不登校の引きこもりオタクが死んだらFiveMのRPサーバーに転生してた件~死ぬ前にやり込んでいた撃ち合いサーバーの知識をフル活用して、ギャングを一人で壊滅させちゃいますか~

作者: あさがお
掲載日:2026/10/09

土呂田将輝(とろだしょうき)、十八歳。


彼には、人に誇れるものが一つだけあった。


それは、ゲームがめちゃくちゃ上手いことである。


勉強? できない。


運動? できない。


コミュニケーション? できるわけがない。


彼女? そんなものがいたら、今頃こんな部屋に引きこもっていない。


そんな彼が唯一、他人より優れていると胸を張れるもの。


それが、FiveMだった。


特に撃ち合いサーバーにおいて、彼の右に出る者はそうそういなかった。


……もっとも、その実力を褒めてくれる友達など、一人もいなかったのだが。


-----


「ガルワン、ガルツー、ミッドロー!」


薄暗い部屋に、十八歳の男の雄叫びが響き渡った。


時刻は午前三時。


カーテンは閉め切られ、床には飲み終わったペットボトルとお菓子の袋が散乱している。


部屋の中央には、二台のモニターとゲーミングチェア。


そしてその椅子に深く腰掛け、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべる男がいた。


土呂田将輝である。


「いやこいつら弱すぎだろw」


将輝はそう呟きながら、マウスを軽快に動かした。


画面の中では、武装した敵プレイヤーが次々と地面に倒れていく。


彼がプレイしているのは、FiveMと呼ばれる、GTAの世界を舞台にしたマルチプレイゲームだ。


その中でも彼が熱中していたのは、プレイヤー同士が銃撃戦を繰り広げる、いわゆる撃ち合いのサーバーだった。


遮蔽物を利用した立ち回り、正確無比なエイム、敵の位置を予測する判断力。


正気は、それらすべてにおいて常人離れした腕前を持っていた。


「あと2人か。どこだぁ?」


索敵しつつ走っていると、急に敵2人が角から飛び出してきた。が、将輝は冷静に近くの遮蔽に隠れる。


「ハイドかよキモw」


そう言うと削られた体力を回復し、敵がリロードするタイミングを見計らって1人目を冷静に撃破。そのまま2人目も流れるようにキルしてしまった。


敵は何もできずに倒れた。


直後アナウンスと共に蘇生がされた。


「はいまた俺一人で壊滅させちゃいましたよ~っと」


正気は満足そうに背もたれへ体を預けた。


ゲームの中では、彼はまさしく英雄だった。


しかし、現実世界での将輝はというと――。


「……腹減ったな」


机の上に置かれた空のカップ麺を見つめる。


最後にまともな食事を取ったのは、いつだっただろうか。


昨日?


一昨日?


いや、そもそも今日は何曜日だったっけか。


「まあいいや」


そう言って、再びマウスを握った。


これが、将輝の日常である。


-----


将輝は、いわゆる不登校の引きこもりだった。


中学生の頃から学校に行くのが面倒になり、次第に登校しなくなった。


別に、壮絶ないじめを受けていたわけではない。


教室で誰かに話しかけられると、頭が真っ白になる。


女子に話しかけられようものなら、まともに目を合わせることすらできない。


以前、隣の席の女子に「土呂田くん、教科書見せて」と言われたときなど、緊張のあまり「え、あ、え、う、ああ、え?ああ、あ、あ、ぁああ、うん」と言いながら小便を漏らしてしまった。


あのときの女子の困惑した表情、軽蔑の眼差しは今でも鮮明に覚えている。


「……忘れたい。」


思い出しただけで死にたくなる。


いや、別に本当に死にたいわけじゃないんだけどね。


そんな将輝の両親は、非常に甘かった。


学校に行かなくなっても、無理やり登校させようとはしなかった。


父親は「まあ、好きなことがあるならいい事じゃないか」と笑い、母親は「将輝が元気ならそれでいいのよ」と優しく微笑んだ。


食事は作っておいてくれてるし、欲しいものはなんでも買ってくれた。


そして両親は共働きであり、家を空けることの方が多かった。


将輝にとって、これほど都合のいい環境はなかった。


その結果、十八歳になった現在も、ほとんど自室から出ることのない生活を送っている。


当然、勉強もろくにしていない。


日本の首都が東京であることくらいは知っているが、歴史の年号などさっぱりだ。


英語に至っては、ゲームで使う単語だけ異常に詳しい。


「ハイド、カバー、リロード……いや、俺、英語できるんじゃね?」


できない。


だが、そんな将輝にも才能はあった。


それがゲームだ。


学校に通っている同年代の人間が授業を受け、部活動に励み、友達と遊んでいる間、将輝はひたすらゲームをしていた。


一日十時間。


多い日には十五時間。


それを何年も繰り返した。


気づけば、FiveMの撃ち合いサーバーでは名のある実力者になっていた。


現実では誰ともまともに話せない。


けれど、ゲームの中なら簡単な会話ならできた。


将輝にとって、モニターの向こう側こそが、自分の存在価値を証明できる唯一の場所だったのだ。


-----


「……は?」


画面を眺めていた将輝は困惑した。


サーバーをBANされていた。


BAN理由としては不正ツールの使用の疑いであった。


「はぁ?」


正気は思わず声を漏らした。


「出た出た。チートの知識もろくに無いくせに強いってだけでチート扱いしてBANする無能運営w」


撃ち合いDiscordサーバーの異議申し立てチケットを開き返信を打ち込む。


「チートを使っていないのにBANされたんだけど?解除しろよクソ運営っと……」


そう呟きながらも、実際にはそんな強気な文章は送れない。


正気は少し悩んだ末、


『プレイヤーネームWAKIGAです。不正ツールの使用の疑いでBANされてしまったので解除してほしいです』


とだけ送信した。


すると運営から


『今回の対応は運営同士で協議し、決められた事ですので解除は出来かねます。ご了承ください。』


「……またか。」


将輝にとってこういう対応は初めてではなかった。


色々なサーバーで色々な人物に喧嘩を売ってきていたため、将輝に対する評判は悪く、サーバーの参加自体を断る運営もいた。


今回のサーバーは参加自体はさせて貰えたものの、将輝の事をよく思わない連中から大量の通報でも入って対応せざるを得なくなったのだろう。いつもの事だ。


将輝はため息をつき、スマートフォンを手に取った。


画面には、好きなアニメキャラクターの美少女が映っている。


黒髪ロングに、透き通るような白い肌。


豊満な胸元が強調された衣装を身にまとった、いかにもオタク受けしそうなキャラクターだ。


「はぁ……かわいいなぁ」


将輝はだらしなく頬を緩めた。


「俺もいつか、こんな女の子と付き合いてぇ……」


もちろん、そんな願望が叶う見込みはない。


そもそも、現実の女性と最後にまともに会話したのがいつだったのかすら思い出せないのだから。


「まあ、二次元の女の子は裏切らないしな」


そう自分に言い聞かせ、スマートフォンを置く。


再びゲーム画面に視線を戻した。


「また新しいサーバー探すか……」


-----


それから、どれほど時間が経っただろうか。


窓の外が明るくなり、やがて再び暗くなった。


将輝は一度もベッドに入っていなかった。


空腹を感じても、ゲームの途中だからと無視した。


喉が渇けば、机に残っていたぬるい飲み物を口に含む。


眠気が襲ってくれば、顔を叩いて無理やり目を覚ました。


「あと1回……あと1回だけ……」


そう言い続けて、何時間も経っていた。


もはや、自分がいつから起きているのかもわからない。


頭はぼんやりとし、視界も少しかすんでいた。


それでも、将輝の手は止まらなかった。


そのときだった。


ドクン。


「……あれ?」


胸の奥が、妙に大きく脈打った。


続いて、強烈なめまいが襲ってくる。


「なんだ……これ……」


マウスを握る指先から、力が抜けていく。


呼吸が浅い。


心臓が異様に速く打っている。


それなのに、体がひどく冷たく感じられ、視界もぼんやりと薄れていった。


「やべぇ……寝不足かな……」


さすがに少し休んだ方がいいかもしれない。


そう思い、椅子を立ち上がった。


しかし。


「……あ」


その瞬間。


正気の視界が、一瞬真っ暗になった。


上手く立てない。


これは貧血による立ちくらみだろうか。


そのまま倒れ、机の角に頭を打ち、激痛が走った。


バタンと倒れ込み、頭から血がドクドク出ているのが分かる。


将輝は何となく理解した。初めての経験だが、これが死ぬということなのだろうと。


十八歳。


土呂田将輝。


不登校、引きこもり、童貞。


趣味はゲーム。


特技はゲーム。


将来の夢は、かわいい彼女を作ること。あと童貞卒業も。


そんな彼の人生は、あまりにもあっけなく幕を閉じた。


-----


暗い。


どこまでも、暗い。


(……あれ?)


意識はある。


しかし、体の感覚がない。


(俺、寝落ちしたのか?)


自分がどこにいるのか、まったくわからない。


夢にしては、妙にはっきりと意識がある。


(……フラフラして倒れて…痛くて…それで…)


その瞬間


暗闇の向こうに、一筋の光が現れた。


(なんだ……?)


光は少しずつ大きくなり、やがて視界は徐々に回復していった。


そして――。


「うわぁああああああああああっ!!!???」


将輝は勢いよく飛び起きた。


眩しい日差し。


青く澄み渡った空。


耳に飛び込んでくる車のエンジン音。


目の前には、見覚えのある道路が広がっていた。


「……ん?」


将輝は呆然と周囲を見渡す。


見覚えのある車。


見覚えのある街並み。


そして、見覚えのえる高層ビル。


「いやいや……」


将輝は目をこすった。


もう一度景色を確認する。


間違いない。


何千時間も見続けてきた、あの街だ。


「……ロスサントス?」


そのとき、目の前に見慣れない文字が浮かび上がった。


『ようこそ、WERPへ』


『市民登録を開始してください』


正気は、しばらくその文字を見つめていた。


ふと頬をつねってみる。


「痛い…」


そして、ぽつりと呟いた。


「……え、俺、FiveMの中に転生した?」


十八年間、現実世界では何一つうまくいかなかった。


そんな彼の、二度目の人生が始まろうとしていた。


もっとも、このときの将輝はまだ知らない。


自分がこれから、この街の社会を根底からひっくり返す存在になることを。


これは、ゲームしか取り柄のなかった引きこもりオタクが、異世界で最強へと成り上がる物語である。

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