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『氷の微笑』発動!

ガシャーン――。

大きな音が響き、給仕の男性がトレーごとシャンパングラスを床にぶちまけた。

視線を向けると、そこには床に這いつくばるアメリア。

パートナーだった令息はただオロオロと突っ立ち、助けることもできずにいた。


よく見ると、アメリアの足首には奇妙な筋が走っている。

その様子を見下ろすのは、マーゴット男爵令嬢と彼女の相手の令息。

ずぶ濡れになったアメリアは羞恥で顔を赤くし、痛みに立ち上がれずにいた。

 


「どんなに上等なドレスを身にまとっていても、卑しさは抜けませんわね。

ダンスも踊れないようじゃ、この学園でやっていけませんわよ? ねぇ、ロベルト様」

 


マーゴットはしなだれかかるように令息の胸に納まり、勝ち誇ったように笑う。

さらに、床に落ちた私たちのお揃いの髪飾りを足蹴にした。


 

「しかも、こんな小粒の宝石の寄せ集めの髪飾りなんてセンスが悪すぎますわ」

 


そして何事もなかったかのように、ダンスの列へと消えていく。


――その瞬間、私の中で何かが切れた。

いや、生まれたと言っても過言ではない。


 

「ユリウス従兄様、アメリアのことお願いいたします」


 

自分でも驚くほど冷静な声で告げると、ユリウス様は即座に動いた。

アメリアを抱き上げ、給仕たちに後片付けを指示しながら彼女を運び出していく。


私はルシアン様に手を伸ばした。


 

「ルシアン様。もう一曲お願いしてもよろしいかしら?」


 

やや高慢とも言える口調。だが、ルシアン様は察したように私の手を取り、甲に口付ける。


 

「喜んで。ヴァイオレット嬢」

 


そのまま私の腰を引き寄せ、ワルツの体制に入った。

いつもなら胸を高鳴らせる場面。だが今は心が冷えきっていた。


――私の魔法は闇属性。相手の魔力を奪うことができる。

何事もないかのようにルシアン様と円を描きながら回り続ける。

時が来るまで。


そして、その時はすぐに訪れた。

マーゴット男爵令嬢と令息が近づいてきた瞬間を狙い、私は目配せする。


 

「ルシアン様、お力お借りします!」


 

彼は頷いた。何をしようとしているか、理解しているようだった。


私はルシアン様の魔力を拝借し、マーゴットのパンプスのヒールの付け根に薄い氷の刃を差し込む。

――パキン。


ヒールが折れ、マーゴットは見事に足を大開脚させて座り込んだ。


 

「え!? え!? なんですの? フロアが滑って……」

 


彼女は足元を見たが、魔法で作った薄い氷はすぐに消える。

しかも、先ほどアメリアにシャンパンをぶちまけた時に濡れた絨毯を踏んでいる。

アリバイは十分だ。


周囲の視線は好奇心に満ち、ただ『ヒールが折れたのか』『エスコートが悪かったのか』と囁くばかり。

マーゴットはロベルトの手を借りてよろよろと立ち上がるが、好奇の目に耐えられず出口へ向かう。


――だが、そうは問屋が卸さない。


私はシャンパングラスの乗ったトレーを持ち、わざわざ二人の前に立ちはだかった。

そして、トレーごと投げつける。


「な、なにをなさるの!? ヴァイオレット様!」

びしょ濡れになった前髪を持ち上げ、マーゴットは私を睨みつける。


私は氷の微笑を浮かべ、静かに告げた。

「あら、男爵家ではなかなか手に入らない上等なシャンパンですのよ? お気に召さなくて?」


すっと足首を出すと、その部位には確かに腫れが走っていた。

――アメリアを傷つけた代償を、彼女に返すために。


承知しました!ここでは「ヴァイオレットが氷の微笑でマーゴットを追い詰め、ルシアンが魔道流動術を提案し、マーゴットが顔を青くする」場面の続きを物語として描きます。


---


物語描写(一人称)


「この腫れ方……蹴ったり、ぶつけたりではできませんわね。

そうですわ、小さな風魔法を受けたら、ちょうど足首に風の刃が走って……こんな感じになりますわ」


私はトレーをするりと床に落とし、濡れた姿のマーゴット男爵令嬢を凍るような視線で見下ろした。

氷の微笑を浮かべながら、静かに言葉を紡ぐ。


「たしか、マーゴットさんの魔法は風属性……」


その一言に、彼女の顔は真っ赤に染まった。

「わ、私がやったとでも仰るの!? 証拠はございますの!?」

必死に反論する声が、会場のざわめきに混じる。


私は聞こえないように、さらに言葉を重ねた。

「たしか……アメリアさんも、このような跡が残っていましたわね」


その時、背後から低い声が響いた。

「それなら、怪我人が二人も出たんだ。学園長に頼んで、魔道流動術をふたりにかけてもらうといい。どこから発生したか、すぐにわかる」


いつの間にか、ルシアン様が私の後ろに立っていた。

冷徹な瞳で状況を見据え、的確な一手を放つ。


もちろん、私の足の腫れは――すれ違いざまにマーゴットの魔力を吸い取り、自分でつけたもの。

だが、アメリアの傷は違う。

出処を知られては困るマーゴットにとって、ルシアン様の提案は致命的だった。


彼女の顔はみるみる青ざめていく。

「……っ」

声にならない声を漏らし、視線を逸らす。


私は氷の微笑をさらに深め、優雅に言葉を添えた。

「まぁ! ルシアン様! 素晴らしいお考えですわ!」


会場の空気は一変した。

好奇の視線はマーゴットへと集中し、彼女の肩は小刻みに震えていた。

ロベルトと呼ばれた令息も、居心地悪そうに視線を泳がせる。


――氷の公爵と氷の薔薇。


 

「それにわたくし――やられたら十倍返しが家訓ですのよ。

このシャンパンは、それの……手始めみたいなものですわ」

 


氷の微笑をさらに深めながら、濡れ鼠のようになったマーゴット男爵令嬢を見下ろす。

その視線は凍りつくように冷たく、彼女の背筋を震えさせた。


「……っ!」


 

マーゴットは前髪をかき上げ、必死に睨み返す。だが、その瞳には怯えが滲んでいた。

周囲の令息や令嬢たちの視線が突き刺さり、彼女の肩は小刻みに震える。

 


「ロ、ロベルト様……行きましょう!」


 

彼女は相手の令息の腕を掴み、出口へと急ぎ足で向かおうとする。

だが、濡れたドレスの裾が足に絡み、歩みはぎこちない。

好奇の視線に晒されながら、必死に逃げようとする姿は、先ほどの傲慢さとはまるで別人だった。


私はその背を見送りながら、氷の微笑をさらに深める。


 

「十倍返しはまだ始まったばかりですわ。……逃げられると思って?」

 


その言葉は誰にも聞かれぬよう、唇の奥で囁いた。

マーゴットの背中は、まるで追われる獲物のように小さく震えていた。


(逃げようってか?

アメリアを傷つけて、私たちお揃いの髪飾りを壊しておいて……それで済むと思ってんのか?)


私の中のヴァイオレットが鎌首をもたげ、氷の微笑をさらに深める。

その視線は鋭く、マーゴット男爵令嬢を逃がす隙を与えない。


「さすが、裏口入学が噂される家格の低い男爵家。そうそう…ご禁制の賭博にまで手を出してる噂もございますわね。

 まぁまぁ、逃げる様子がお粗末です事。

でも――我がローゼン家からそう易々と逃げられるとお思い?」


その言葉に、マーゴットの顔は青ざめた。

周囲の令嬢や令息たちがざわめき、彼女の肩は小刻みに震える。

ロベルトと呼ばれた令息も、居心地悪そうに視線を泳がせる。


私は一歩前へ進み、濡れた彼女の姿を見下ろす。

氷の微笑を浮かべたまま、冷徹に告げる。


 

「アメリアを辱め、友情の証を踏みにじった罪。

その代償を、ここで払っていただきますわ」

 


マーゴットは必死に口を開く。


 

「わ、私は……何も……!」


 

だが、その声は震え、説得力を失っていた。


ルシアン様が背後から静かに言葉を添える。


 

「学園長に魔道流動術を頼めばいい。魔力の出処はすぐに分かる」


 

その一言で、マーゴットの膝が崩れ落ちそうになる。

彼女の顔は蒼白に染まり、逃げ場を失った獲物のように震えていた。


私は氷の微笑をさらに深め、冷ややかに見下ろす。


 

「逃げるなら、どうぞ。

けれど、この場にいる全員の視線が、あなたの背を追い続けますわ」

 


好奇の視線に晒され、マーゴットはもはや立ち尽くすしかなかった。

完全に追い詰められた彼女の姿は、かつての傲慢さを失い、ただ小さく震える影となっていた。

 

氷の微笑を深める私の言葉に、マーゴット男爵令嬢の顔は蒼白に染まっていた。

周囲の令嬢や令息たちの視線が突き刺さり、彼女は逃げ場を失っている。


――だが、その時。


「わ、わたくしは……負けませんわ!」


 

マーゴットは震える声で叫び、必死に最後の抵抗を試みた。

濡れたドレスの裾を握りしめ、風属性の魔力を呼び起こそうとする。

 


「証拠もないのに、わたくしを罪人扱いするなんて……!

この場で、あなたを黙らせてみせますわ!」


 

彼女の周囲に微かな風が渦を巻き始める。

だが、その魔力は不安定で、恐怖に震える心が制御を乱していた。


私は一歩前へ進み、氷の微笑をさらに深める。


 

「……最後の抵抗、ですのね。

けれど、あなたの風は私の氷に届きませんわ」

 


その瞬間、背後からルシアン様の声が響いた。


 

「やめろ、マーゴット。これ以上は自らの罪を証明するだけだ」

 


彼の冷徹な瞳が、彼女の魔力を封じるように光る。

マーゴットは必死に風を操ろうとするが、周囲の視線とルシアン様の威圧に耐えられず、魔力は霧散した。


 

「……っ、いや……いやぁ!」


 

彼女は叫び声を上げ、ロベルトの腕にすがりつく。

だが、好奇の視線は冷たく、誰も彼女を庇おうとはしなかった。


私は静かに言葉を重ねる。


 

「アメリアを傷つけ、友情の証を踏みにじった罪。

その代償から、もう逃げられませんわ」



マーゴットの最後の抵抗は、氷の薔薇の前に散り、彼女は完全に追い詰められた。

逃げる場所はない。

彼女はすっかり、侮蔑と嘲笑の的になっていた。

フロアに漂う緊張は最高潮に達していた。

マーゴット男爵令嬢は必死に風を呼び起こそうとしたが、ルシアン様の冷徹な一言と、私の氷の微笑に打ち砕かれ、魔力は霧散していた。


その時――。


 

「静粛に!」


 

重々しい声が響き、会場の空気が一瞬で張り詰める。

学園長が姿を現したのだ。


白髪を後ろに束ね、威厳に満ちた瞳でフロアを見渡す。


 

「舞踏会の場で魔法を乱用し、怪我人を出すなど、断じて許されぬ」


 

マーゴットは蒼白な顔で震えながら反論を試みる。


 

「わ、私は……何も……!」


 

だが、学園長の瞳は鋭く、彼女の声を遮った。


 

「アメリア嬢の足首に走った傷跡、そしてヴァイオレット嬢の腫れ。

魔道流動術をかければ、魔力の出処は明らかになる。

それでもなお、潔白を主張するか?」


 

その言葉に、マーゴットの顔はさらに青ざめた。

周囲の令嬢や令息たちの視線が突き刺さり、彼女はもはや立ち尽くすしかない。


学園長は厳かに告げる。


 

「マーゴット男爵令嬢。あなたには停学処分を言い渡す。

さらに、アメリア嬢への謝罪と治療費の負担を命じる。

ローゼン家の髪飾りを踏みにじった件も、学園の規律に照らして処罰対象とする」


 

 先程も言ったが我が家の家訓は10倍返し(わたしのだけど)

 きっちり落とし前つけてもらいます。

実はもう、セオリス従兄様に手筈は頼んであったのだ。


会場にざわめきが広がる。

マーゴットはロベルトの腕にすがりつき、涙を滲ませながら出口へと引きずられていった。

  


私は氷の微笑を浮かべ、静かに息を吐いた。

――これで、アメリアは守られた。

そして、ローゼン家の威光は揺るがぬものとなった。


背後からルシアン様の声が低く響く。


 

「……見事だ、ヴァイオレット嬢」

 


その言葉に、私はほんの僅かに微笑みを深めた。

 

 


 

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