表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

目覚めたら乙女ゲーの悪役令嬢でした。

「この選択肢、好感度+20でしょ?はい、攻略完了っと」


乙女ゲーム『薔薇と罪の舞踏会』。

推し声優・神楽坂蓮が演じるルシアン公爵を攻略するため、私は何周もプレイした。

破滅ルート?嫉妬イベント?全部攻略サイトで潰してある。

推しに嫌われるなんて、絶対にありえない。


──そう思っていた。

目が覚めるまでは。


「……え、ちょっと待って。この髪、巻くのに何時間かかるの?ていうか、ドレス重すぎ!」


鏡に映ったのは、ゲーム内で主人公をいじめ抜いて破滅する悪役令嬢ヴァイオレット・ド・ローゼン。

しかも、推しキャラ・ルシアン公爵の婚約者。


「待って待って待って。これ、嫌われるルートじゃん!?」


攻略サイトもない。セーブもロードもできない。

推しに嫌われたら、破滅確定。


――私は決めた。

悪役令嬢なんてやめて、推しに好かれる令嬢になる。

礼儀?慈愛?庶民感覚?全部身につけてみせる。


――それは1週間前の出来事だった。


 

 「う……うーん……」


 

 頭痛で目を覚ましたら、知らない天井があって、銀髪に 瞳は紫がかったグレーの少年が私の顔を覗き込んでいた。

どっかで見覚えのある顔だったが、思い出せない。

それより頭が痛い。

それに少年の瞳も何処か気になる。

グレーに紫がかった瞳って、カラコンかよ?

まだ中学生くらいだろうにませてんな。

そう思いながら、わたしは2度寝しようとしたところでは たっと気がついた。

知らない天井!?てことは家じゃない!?

わたしどこで寝てるの?

 急いで私が起き上がると、少年は驚いて少しベットから離れた。

 そして、やおら大声で


 

「父様ー!母様ー!姉様が気がついたよー!」


 

 と叫んだ。

(え?姉様って誰のこと?)

 私が不思議そうに少年に目をやる。

 少年は銀髪で、色が白く、瞳は紫がかったグレイ。

 上等なシルクかな?光沢のある白いシャツにブルーのスラックスを履いている。

 部屋を見渡すと、高価そうな調度品に彩られた大きな部屋になにより、天蓋付きの広いベットにネグリジェ姿でわたしは上半身を起こしていた。

 しばらくして、慌ただしい足音が聞こえると、部屋にこれまた高価そうな、スーツ?なんだろ?まるでゲームの世界の貴族が着てるようなジャケットと、セットアップのコーデに、栗色の髪をオールバックにした男性と、同じく銀髪の少年と同じような銀髪に紫がかったグレーの瞳の女性が、私に向かって足早に駆けてきた。


 

「おお!無事だったか!」


 

 二人の見知らぬ人に涙されて抱擁される居心地の悪いこと。つか、二人ともどなた?

 頭痛が、まだ収まらない。頭には包帯らしきものが巻かれていた。

 あたし、怪我してるの?

 疑問符が脳裏でダンスしてる中に、私に抱きついてきた栗色の髪の男性が


 

「目が覚めて、よかった。お前は馬に蹴られて、頭を打ってそのまま倒れてたんだよ。もう3日も寝たきりだったんだ!」


 

 すると、銀髪の女性が続けて発言した。


 

「そうよ。ヴァイオレット!もう目覚めないんじゃないかと思ったわ!」


 

 女性の発言に更に疑問符が飛び出た。


 

「あの……勘違いをされてるようですが、私はヴァイオレットじゃなくて、藤咲しおりと申しまして……」


 

 おずおずと、しかしはっきり自分の名前を名乗った私に抱きついた2人は顔を見合せて


 

「おい!医者を呼べ!ヴァイオレットがおかしいぞ!」


 

 と、慌てて医者を呼びに行かせ、銀髪の女性は青ざめた顔で私を覗き込み


 

「何を言ってるの?ヴァイオレット……あなたは我が公爵家の娘、ヴァイオレット・ド・ローゼンよ」


 

 と、真剣な眼差しで私を見つめてきた。

 ん?どっかで聞いたことある名前だぞ?

 私の中の疑問符が、なにかの形をなそうとしてる。

 それは徐々に固まって、あるひとつの結論を出した。

 わたしは2人の腕をすり抜けると、急いでベットから降り、壁に備え付けられた姿見まで走った。

 急いで自分の姿を映し出して驚愕する。

 綺麗に巻かれた銀髪のロングヘアに、高い身長。

 女性や少年と同じ紫がかったグレーの瞳。

 そこに写っていたのは、私が知ってる私の姿ではなかった。


 

「――ええぇぇぇ!?」


 

 自分の変わった姿を見て脳より遅く驚愕の声が上がる。

 鏡は私の知ってるもう1人のわたしを写し出していた。

 私が今プレイしてる乙女ゲーム『薔薇と罪の舞踏会』に出てくる主人公のライバルであり、破滅フラグ製造機であり、推しの婚約者である――


ヴィオレット・ド・ローゼン。


「……うそでしょ……」


鏡の中の私は、まさしく“あの”悪役令嬢だった。

銀髪、紫がかったグレーの瞳、完璧すぎる顔立ち。

攻略対象のルシアン公爵に嫉妬して、主人公アメリアをいじめ抜いて、最終的に断罪される“破滅令嬢”。


 

「待って待って待って……これ、嫌われるルートじゃん!!」


私は鏡に向かって叫んだ。 でも、鏡の中のヴァイオレットは、ただ優雅に眉をひそめているだけだった。

 いや、こんな所でお嬢様チート要らんから!

 鏡の前で苦悩する私を、多分父であろう栗色の髪の男性が、医師とともに私を姿見からひっぺがすと、ベットになかせて、傷の具合を見る。


  「外傷は大したことありませんな」


 医者の判断にローゼン公爵は納得いってない様子で


 「でも、自分の名前は間違えるし、なんだか、家族を理解してないようなんだが?」


 

 疑問を口に出すと、医師は眉間に皺を寄せ、慎重に言葉を選ぶように口を開いた。


「記憶混濁の可能性があります。頭部を強く打たれた影響で、一時的に自分の身分や家族関係を認識できない状態かと」


「記憶喪失……ということか?」


ローゼン公爵が低く呟くと、銀髪の女性――おそらく母である人物が、私の手をそっと握った。


「ヴァイオレット……あなたが誰か分からなくても、私たちはあなたを愛しているわ。少しずつ思い出していきましょうね」


いやいやいや、違うんです。

私は“思い出す”んじゃなくて、“知らない”んです。

だって、私は藤咲しおりであって、ヴァイオレットじゃないんだから。


でも、ここで「実は乙女ゲームの世界に転生してきました」なんて言ったら、完全に頭がおかしいと思われる。

医者の「記憶混濁」という診断は、ある意味で都合がいい。


「……すみません。ちょっと、混乱してて……」


私はそう言って、母らしき女性の手を握り返した。

その手は、思ったよりも温かくて、優しかった。


「しばらくは安静にしていただき、様子を見ましょう。記憶は、環境や人との関わりで自然に戻ることもあります」


医師の言葉に、公爵は深く頷いた。


「分かった。だが、学園の登校は延期だ。舞踏会も見合わせる。今は回復を優先しよう」


舞踏会──その言葉に、私はピクリと反応した。

そうだ。舞踏会はこのゲームの分岐イベントのひとつ。

誰と踊るかで、ルートが確定する。


「ちょっと待てよ……」


ベッドの上で、私は頭を抱えた。

銀髪。紫がかったグレーの瞳。天蓋付きベッド。貴族の両親。

そして、私の名前が“ヴァイオレット・ド・ローゼン”。


(これ……どう考えても、乙女ゲーム『薔薇と罪の舞踏会』じゃん!?)


あのゲーム。

推し声優・神楽坂蓮が演じるルシアン公爵を攻略するために、何周もプレイした。

破滅ルート?嫉妬イベント?全部攻略サイトで潰してある。

推しに嫌われるなんて、絶対にありえない。

そう思っていた。目が覚めるまでは。


(ちょっと待って。まずは整理しよう。冷静に、冷静に……)


私は脳内で、ゲームの構造を思い出す。


 ここが薔薇と罪の舞踏会の世界として、舞台は、魔法と貴族制度が共存する王国の名門学園と、王宮舞踏会。

プレイヤーは庶民出身のヒロイン、アメリア・ブランシュになって、5人の攻略対象と恋を育むのが目的。

 

 1人は推しであるルシアン・ヴァルモン公爵。

 属性魔法は氷。

 王国最年少の公爵。冷静沈着で完璧主義。

魔法と剣術の両方に秀で、王族からの信頼も厚い。

 その容姿端麗眉目秀麗さで貴族令嬢から人気が高いが、

 またの名を『氷の公爵』と呼ばれるほど、クール。

 王国最年少の公爵だが、そのせいで貴族連でも敵が多い。

 冷静沈着で完璧主義。

魔法と剣術の両方に秀で、王族からの信頼も厚い。

攻略はルシアンと、舞踏会で踊る『氷の誓約ルート』

 

 

 そして残りの攻略対象は

 炎のレオン・クロード。

 属性魔法は炎。

 性格:熱血・庶民派・正義感が強い。

 王国に忠誠を違う熱血騎士一族の出身。

 貴族でありながら庶民寄り。

魔法学校の騎士科首席で庶民派。

攻略の鍵は共に戦う姿勢と、舞踏会での“庶民的な踊り”

 攻略は『庶民改革ルート』


 そして次は

 ノエル・アルベリッヒ

 魔法属性は雷。理論魔法の天才。

 学園の首席。感情表現が苦手な理論派。

 魔法と学問一筋のと言えばき声はいいが、ちょっと変わり者。無感情・理論派だが、実際は人間関係に疎い。

 舞踏会は人間観察目的に現れるが、踊りは苦手。

 攻略は知的な会話と舞踏会での”理論を超える感情の揺らぎ゛『共鳴と感情ルート』

 

そして最後は従兄弟である

 ユリウス・ローゼン

 属性魔法は風。

 ヴァイオレットとは幼少期は仲が良かったが、幼少期優しかったヴァイオレットが成長するにつれ、わがまま傲慢令嬢になってしまい疎遠に。

成績トップクラスで生徒会会長。

 性格は物腰が柔らかく、優雅で気品があるが、気に入らない人には皮肉も飛ばす。

 過去になにかあったらしく、傷を抱えてるちょっとミステリアス。

 王宮舞踏会では、常に完璧なパートナーとして名を馳せる。

攻略は過去の記憶と、舞踏会での“心の距離を縮める一歩”

『私の兄・世界改変ルート』


 あとは、誰も選ばない”自我覚醒゛で『世界改変ルート』


 もちろん攻略がわかってれば全員おとしてハーレム無双ルートもできるが、えらべるのは結局ひとり。

(そして、私は……主人公じゃない。

よりによって、主人公をいじめ抜いて破滅する“悪役令嬢”ヴァイオレット)


 そしてわたし、悪役令嬢ヴァイオレット・ド・ローゼンの役割は

ルシアン公爵の婚約者(初期設定)

嫉妬イベントでアメリアをいじめる。

舞踏会で選ばれないと断罪される。

破滅ルートでは、魔力暴走→退学→婚約破棄→国外追放


(いやいやいや、これ嫌われるルートじゃん!?最早破滅しか残ってない確約設定じゃん!?)


しかも、攻略サイトもない。セーブもロードもできない。

推しに嫌われたら、破滅確定。


(……でも、逆に言えば、ここで好感度を上げれば、ルートを変えられるかもしれない)


私は決めた。


悪役令嬢なんてやめて、推しに好かれる令嬢になる。

礼儀?慈愛?庶民感覚?全部身につけてみせる。

そして、私は“藤咲しおり”として、この世界で生きる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ