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時間泥棒

作者: TOMMY
掲載日:2025/10/28

「泥棒だ。時間泥棒に盗まれた!」

受話器からは、毎日のように同じ怒鳴り声が響いてくる。

私はそれにうんざりしていた。


この世界は、明らかな無駄な時間に溢れている。

街中の宗教勧誘や否応なく流れる広告。

いつからか、それを体験すると人は、急激に老け出した。


ある青年は一晩で白髪に、

ある少年は声変わりと共に身長が伸びた。


被害者たちは、共通して語った。

「目にも止まらぬ速さで動く人影、時間泥棒を見た」と。


──ぷるるっ。

また、受話器が鳴り響く。

私は深くため息をつき、それを取る。


その瞬間、不思議な風がふわりと室内を撫でた。

時計の針が一瞬だけ逆回転し、書類がひらりと舞った。


思わず窓のほうを見る。

するとカーテンの端に黒い靴先のようなものが見えた気がした。


その日の電話番は、数件の短い通話が機械的に終わった。


翌朝、私は絶句する。

頬がたるみ、首筋には細かな横ジワが浮かんでいた。

それでも私は、小さく笑った。


そうして街では、徐々に騒音が減り、立ち止まる人が増えた。

時間を盗まれないよう、人は話を聞くようになり、急がなくなった。


時間泥棒は確かに奪っていった。

だがそれは、せわしなさと鈍感さだったのかもしれない。

この世界は、静かにやさしくなっていった。

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