代行サービス
「では次の者。この水晶に手を翳してみるのだ」
「はい」
神父に言われるがままに俺――オネストは歩き出した。
興奮と期待で今にも叫び出しそうなのをグッと我慢して。
ついに、ついにこの時がやってきた。
この世界では15歳になると教会に行き、水晶に手を翳すことで『スキル』と言われるものを授かることができる。
しかしそれは全員が獲得できるわけではなく、選ばれた人間のみ。
誰が選ばれるのか、どんなスキルがもらえるのか。
それは誰にも分らない。
女神様の気まぐれなんて言われるくらいだ。
俺はこれでスキルを手に入れて冒険者になる!
小さい時からの夢だった。
街の外へ出て、見知らぬ土地へ行き魔物を倒したりして生計を立てる。
そんな冒険者が憧れの職業だった。
だからまずはここで……強いスキルを貰わないと!
「ふう……」
深呼吸をして気持ちを整えてから水晶へと手を翳す。
すると水晶が眩く光り出した。
「おお……! これは! スキル持ちが現れたか!」
神父も興奮気味に叫び出し、持っている紙を凝視する。
授けられたスキルの名前が神父が持つ紙に刻まれるからだ。
やがて水晶から光が無くなり、俺は興奮気味に神父に問いかける。
「それで俺のスキルはなんなんですか!」
剣術が上がる系のスキルか、それと魔法を扱うことができるスキルか、冒険に役立つ系のスキルか、それとも未知のスキルなのか。
どんな強いスキルを貰えたのか興奮が醒めなかった。
しかし神父は神妙な面持ちで紙を見つめる。
「……どうしたんですか?」
尋ねてみると、神父は首を傾げながら口を開く。
「……オネストよ。お主に与えられたスキルは――“代行サービス”だ」
「……はい?」
代行サービスってなんだ?