The last train 何聴いてるの?
――杉咲の場合――
皆さん、夜分遅くに失礼します。
杉咲です。
杉咲は、今日飲み会でした。
飲み会では、あまり話せず、ひとりで、カルピスをぐびぐび飲んでいました。
杉咲は、〇〇さんのことを考えてしまいます。
疑問が浮かんでは、また考えていると気づくんです。
そんな自分に嫌気が差します。
〇〇さんは、決して悩むような人ではありません。
思い立ったら、行動する。
凄い人です。
飲み会で、夜遅くまで、飲んでいました。
これが、終電ですね。
帰れるといいな。
人いっぱいかな。
乗れるかな。
地下鉄のホームは閑散としていました。
ネクタイを頭に巻いた酔っ払いやら、金髪の大学生やら、サングラスをかけたおじさん。
女の人が少ないので、ちょっぴり怖いです。
こんな時、〇〇君がいてくれたら……
地下鉄の扉が開いて、みんなが急いで乗り込みます。
私も負けじと後を追います。
家まで、一駅なので、歩いてもよかったのですが、夜の街は怖いので、地下鉄を使います。
私の家は、駅から近く、徒歩5分です。
かなりいい立地だと思います。
2階に住んでいますが、窓から公園が見えるんです。
いつも、その公園で大学生がバスケットボールをしています。
そんなことを考えながら、SONYのイヤホンを耳に差し込みます。
これ、お気に入りなんです。
元カレとおそろいなんです。
Spotifyを開いて、私のプレイリストを流します。
私は、ボーカロイドが好きなので、最近は、ボーカロイドをよく聴きます。
あ、この曲、〇〇さんも好きだったな。
初音ミクちゃんだっけ?
人間みたい。
そんなことを思っては、ノイズキャンセリングをオンにして、ふと前に座っている人を見てみました。
その男の人は、カーキのパーカーを着ていました。
「え?」
どこからどう見ても、〇〇さんでした。
声をかけようか迷いました。
もし違ったら?人違いだったら?とても恥ずかしいです。
でも、様子がおかしいんです。
杉咲は、社会人2年目の23歳ですが、〇〇さんが、もしその人が〇〇さんなら、私の一個上です。
目の前にいる〇〇さんは、どう見ても若いです。
大学生にしか見えません。
それに、〇〇さんは、人と話すのが苦手で、飲み会にはあまり行きません。
誰かと会っていたのでしょうか。
こんなことをしてはいけませんが、私は次の駅で降りませんでした。
〇〇さんがどこで降りるのか探るためです。
プレイリストから、名探偵コナンのテーマソングがかかります。
気分は探偵です。ディテクティブです。
私は、知っています。
『真実は、いつもひとつ』
アニメは推しの子が好きですが、コナンも好きです。
これは、復讐ではないです。推理なんです。
〇〇さん、私を許して。
自分に甘い杉咲より




