Flaxen あなたの髪は何色?
「ねえ、あなた……」
「どうしたの?」
「唇奪ってもいいかしら?」
彼は、目線を反らしては、ゆっくりと目を閉じるの。
なんて、愛おしいのかしら。
私が、口づけをすると、彼の息づかいが聞こえる。
彼の胸に手を当てて、鼓動を感じられる。
欲に身を任せて、あとはなすがままに。
なんて、妄想しては、どこかへ行ってしまったあの人の服をハンガーに掛ける。
「懐かしいわね」
彼、ユニクロや、GUをよく着てたわ、靴はNIKEが好きで、よく履いてた。
コレクターじゃないから、履き潰して、穴が空いていたりは、したけれど、男臭いっていうのかしら。
物を大事にしてたの。
彼と、髪色をおそろいにして……
というか、元々なんだけれど……
ブロンドも素敵だけれど、私は黒が好きなの。
シンプルでいいじゃない。
あ、もうすぐ彼が帰ってくる。
ご飯作らなきゃ。
何が食べたいかしら?
どんぶり?
カレーライス?
ハンバーグ?
外食?
それとも、パンかしらね。
「ただいま」
あ、帰ってきたわ。
「あなた、おかえりなさい」
「ごめんなさい、ご飯まだできてなくて」
「一緒につくろうか」
「あら、いい男ね」
「僕なんかが、いい男なら君はどうなる?」
「君? じゃないでしょ?」
「イヨミ……」
「仕事はどうなの?」
「Not too bad.」
「何が悪すぎないね。よ、本当に、イギリス人のマネしなくていいから、私とは、日本語でしゃべって……あなた」
彼と目が合った。一瞬だけど、永遠のように感じられるその瞬間を私は、数えもせずに、ただひたすら、味わっていた。
「時間逆説について、どう思う?」
「有名な言葉がある。神は乗り越えられない試練は、与えない」
「神ねえ……」
「神に対する、意義や、賛同はあるけれど、絶対はないんだよ。あるとするなら、不変だけ」
「人間は、神になれると思う?」
「神をどう定義するかによって変わってくるだろうね。神は、なぜ性別をつくったのか。なぜ、人を作ったのか」
私は、しゃべる隙を与えずに、妄想を現実にした。
甘くもなくて、苦くもない。
感じたことない味。
ゆっくりと味わう。
目を閉じて、永遠のようなその時間を楽しんだ。
彼は、私に興味がないのかしら。
また今度って言われて、私はひとりぼっち。
なんだか、虚しいわ。
彼が行ってしまったから。
寂しさを埋めるために。
曲を流したの。
亜麻色の髪の乙女
「綺麗な旋律ね……」
私は、リビングの机に頭を擡げて、そのまま寝入ってしまったわ。
心地よかった。
太平洋に浮かんでいるようで、ずっと寝ていたいと思ったわ。
あなたに訊きたいことがあるわ。
水ってなんで、色が変わるのかしら。
多ければ、濃くなって、少なければ薄くなる。
まるで、人間の髪みたいね。
うふふ……
髪は染めていないけれど、心はあなたに染まった
イヨミより