表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

Flaxen あなたの髪は何色?




「ねえ、あなた……」


「どうしたの?」


「唇奪ってもいいかしら?」



 彼は、目線を反らしては、ゆっくりと目を閉じるの。


 なんて、愛おしいのかしら。


 私が、口づけをすると、彼の息づかいが聞こえる。


 彼の胸に手を当てて、鼓動を感じられる。


 欲に身を任せて、あとはなすがままに。



 なんて、妄想しては、どこかへ行ってしまったあの人の服をハンガーに掛ける。



「懐かしいわね」



 彼、ユニクロや、GUをよく着てたわ、靴はNIKEが好きで、よく履いてた。


 コレクターじゃないから、履き潰して、穴が空いていたりは、したけれど、男臭いっていうのかしら。


 物を大事にしてたの。


 彼と、髪色をおそろいにして……


 というか、元々なんだけれど……


 ブロンドも素敵だけれど、私は黒が好きなの。


 シンプルでいいじゃない。


 あ、もうすぐ彼が帰ってくる。


 ご飯作らなきゃ。


 何が食べたいかしら?


 どんぶり?


 カレーライス?


 ハンバーグ?


 外食?


 それとも、パンかしらね。


 

「ただいま」



 あ、帰ってきたわ。



「あなた、おかえりなさい」


「ごめんなさい、ご飯まだできてなくて」


「一緒につくろうか」


「あら、いい男ね」


「僕なんかが、いい男なら君はどうなる?」


「君? じゃないでしょ?」


「イヨミ……」


「仕事はどうなの?」


「Not too bad.」


「何が悪すぎないね。よ、本当に、イギリス人のマネしなくていいから、私とは、日本語でしゃべって……あなた」



 彼と目が合った。一瞬だけど、永遠のように感じられるその瞬間を私は、数えもせずに、ただひたすら、味わっていた。


 

「時間逆説について、どう思う?」


「有名な言葉がある。神は乗り越えられない試練は、与えない」


「神ねえ……」


「神に対する、意義や、賛同はあるけれど、絶対はないんだよ。あるとするなら、不変だけ」


「人間は、神になれると思う?」


「神をどう定義するかによって変わってくるだろうね。神は、なぜ性別をつくったのか。なぜ、人を作ったのか」


 

 私は、しゃべる隙を与えずに、妄想を現実にした。


 甘くもなくて、苦くもない。


 感じたことない味。


 ゆっくりと味わう。


 目を閉じて、永遠のようなその時間を楽しんだ。


 彼は、私に興味がないのかしら。


 また今度って言われて、私はひとりぼっち。


 なんだか、虚しいわ。


 彼が行ってしまったから。


 寂しさを埋めるために。


 曲を流したの。


 亜麻色の髪の乙女


 

「綺麗な旋律ね……」



 私は、リビングの机に頭を擡げて、そのまま寝入ってしまったわ。


 心地よかった。


 太平洋に浮かんでいるようで、ずっと寝ていたいと思ったわ。


 あなたに訊きたいことがあるわ。


 水ってなんで、色が変わるのかしら。

  

 多ければ、濃くなって、少なければ薄くなる。


 まるで、人間の髪みたいね。


 うふふ……



 

髪は染めていないけれど、心はあなたに染まった

イヨミより

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ