Knowingly これは故意ですか?
杉咲です。
今は、名鉄に乗っています。
名古屋から、名鉄に乗り換えました。
とある場所に向かっています。
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着きました。
〇〇さんにどうしても会いたくて、〇〇さんの母校までやってきてしまいました。
〇〇さんは、社会人のはずなんですが……
通りを歩いてると白のパーカーに、薄い青色のデニムを履いている〇〇さんを見つけました。
やっぱり、おかしいです。
杉咲は、違う時代にやってきてしまったのでしょうか。
なんとも不思議な気分です。
〇〇さんに声をかけます。
「あの……」
「え? 杉咲さん?」
「私のこと、覚えていますか?」
「あ、はい」
本当は、初対面じゃないのに、まるで他人をみるような目で、〇〇さんは私を見ます。
私の記憶は、何だったのでしょうか。
杉咲、ちょっと残念です。
勇気を振り絞って、声をかけます。
「今から、大学ですか?」
「あの、昨日は杉咲さんスーツ着てましたけど、もしかして、就職活動中ですか?」
「あ、はい。そうなんです」
杉咲、嘘をついてしまいました。
後で、〇〇さんに叱られてしまいます。
明らかに、〇〇さんの視線が私の頭に向けられます。
「頑張ってください。頑張っている人に言うのも変ですけど……あれ? 奇遇ですね。その色のキャップ、僕も持ってますよ」
〇〇さんが興味を示してくれています。
杉咲はいけない子です。
知らないフリをしたからです。
「本当ですか? カーキ好きなんですか?」
「あ、はい。実は、パーカーも持っていて」
杉咲、ユニクロか、GUに行って、メンズのパーカーを買いたいです。
「杉咲さん、ここの大学なんですか?」
「実は、違うんです。今日は友達に会いに来てて……」
「そうだったんですね」
〇〇さん、あなたですよ。あなたに会いに来たんです。
気づいてください。
「訊いてもいいですか?」
え、なんでしょう。
「なんで、僕の家知っていたんですか?」
「そ、それは……」
「もしかして、僕の家の近くに住んでいるんですか?」
「違うんです」
どうしよう。ストーキングしてたって言えないです。
杉咲はいけない子です。
「その……あそこに友達が住んでいて」
苦し紛れの嘘です。すぐにバレてしまいます。
「なんだ、そうだったんですね。杉咲さん、大学案内しましょうか?」
「え? お願いします」
杉咲はいけない子です。
部外者なのに、嘘をついて大学に入ろうとしています。
神様、仏様、〇〇様、許してください。
一瞬の気の迷いです。
これは、故意ですが、恋なんですか?
〇〇さんと少しでも一緒にいたい杉咲より