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喫茶モンブランの相談窓口 〜依頼料はコーヒーで〜  作者: pippo
消えるチョークの謎

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私立桜直高校での一幕〜香織と紗奈の犯人探し〜

翌朝、金曜日


私立桜直(おうちょく)高校正門前


「紗奈、おはよう。」


後ろから紗奈に声をかけてきたのは香織。


少し走ってきたのか息を切らしている。


「おはよう、香織ちゃん。走ってきたの?」


「うん、朝のうちに化学部の子に聞きに行こうかなって思って。一緒に行こ!」


息を整えながら、香織は紗奈へ話し、手を引いて早足で歩く。



教室に荷物を置くと、紗奈が香織へ問いかける。


「香織ちゃん、化学部に知り合いのお友達いるの?」


「ううん。でも、確か4組の花奈(はな)ちゃんが化学部だったはず。一年生の頃同じクラスだったから、顔見知りではあるよ。」


2人は4組の教室へと向かう。しかし、4組の教室にお目当ての生徒の姿はなかった。


「まだ来てないのかな?」


香織は教室を見渡しながら、呟く。


「他に化学部の知り合いかー。理系の子たちは去年同じクラスだった子たちくらいしか知り合いいないんだよね。紗奈は誰か知り合いいる?」


「私も理系の人たちはあまり知らないんだよね。去年のクラスメートに化学部の子はいたかな?」


少し悩んだ表情を見せながら考える。


「あれ?2人とも、理系の教室にいるなんて珍しいな。誰か探してるのか?」


2人に声をかけるのは、手に黒いレザーのクリップボードと、教科書のような冊子を数冊持っている男であった。


「おはようございます、駒込(こまごめ)先生。化学部の子に聞きたいことがあったんですけど、知り合いの子がまだ来てなくて。」


香織が駒込と呼ぶ男に、事情を説明する。


駒込と呼ばれる男は、この学校に勤めて11年目になる中堅の先生であり、年齢は40歳ほど。詳しい年齢は聞いていないが、30代と言われても違和感がないほどには、肌の艶もいい若々しい見た目の人物である。専門の教科は生物。園芸部の顧問をしており、香織たち文系の生物基礎も教えている。慣れ親しみやすい性格で生徒からも支持を集めている。


「そうか、急ぎじゃなければちょっと頼みたいことがあるんだけどいいかな。」


駒込が香織たちに問いかける。


「なんですか?」


「今日の授業で使うプリント、文系のクラスに配ってもらえないか?各クラスに置いておくだけでいいんだけど。」


「いいですよ。」


香織は少し不満そうな顔をしているが、紗奈が二つ返事で受け入れる。厄介な頼み事であれば少し考えるであろうが、この程度の頼みであれば迷うことなく引き受ける。また、自分達の目的が達成されなそうであることをわかっていたからこそ、二つ返事で了承したのだろう。


「ありがとう。じゃあ、職員室までちょっと着いてきてもらってもいいか?」


「はい。」


紗奈は返事をして、香織にも行こうと声を掛ける。2人は駒込が職員室に向かうすぐ後ろをついて歩く。


「そういえば、なんで2人は化学部の子たちに用事があったんだ?」


職員室に向かいながら、駒込が2人に質問する。


「最近、私たちのクラスからチョークが消える謎があって、化学部の子たちが少し関わっているんじゃないかなって思って。」


「なんだそりゃ。面白そうな話だな。」


駒込は笑いながら香織に言葉を返す。


「笑い事じゃないんですよ。毎週無くなるから私たちが先生に注意されちゃうんですよ。」


香織は駒込に訴える。


「そんな変なことする生徒いるのかな?チョークなんてそんなに使い道ないだろ。」


「私たちもあんまり思いつかなかったんですけど、香織ちゃんのお兄さんにお話を聞いてもらって、いろんな可能性が出てきたので、2人で調査することにしたんです。」


「へー。香織のお兄さんか。俺がこの高校に赴任するのとすれ違いで卒業したから直接の面識はないけども、噂は他の先生から聞いているよ。相当優秀な生徒だったって。お兄さんは今は喫茶店をやっているんだったか?今度、俺も行ってみたいな。」


駒込がそんな話をしていると職員室につき、ちょっと待ってろ、と言って駒込は中に入る。


「駒込先生、マスターさんのこと知ってるんだね。」


「うん、初めて聞いたけど、他の先生にもお兄ちゃんのこと言われることあったから、存在は知っているって感じなのかもね。お兄ちゃん高校の時はそこそこ有名だったらしいから。」


「さすがマスターさんだね。」


紗奈は自分のことであるかのように顔を綻ばせている。そんな紗奈の顔を見て香織も笑顔を見せる。


「今は、普通におじさんだけどね。」


香織がそんなことを言うと、


「そんなことないよ。マスターさんはカッコよくて素敵だよ。」


紗奈が少し声を張り上げて主張する。急な声に周りにいた生徒たちが香織たちの方を見る。

紗奈は、ハッとして俯き顔を赤くする。それを見て香織はにやけた顔をする。


「どうした?」


職員室から駒込が出てきながら、2人の様子に疑問を投げかける。


「いえいえ。なんでもありませんよ。そのプリントですか?」


香織が軽く流しながら駒込からプリントの束を受け取る。


「ああ、これを各クラスに持っていって、授業の時に使うからって言っといてくれ。頼んだぞ。」


そう言って駒込は再び職員室の中に入っていった。残された2人は、プリントの束を二つに分け、文系の教室に持っていくことにした。



プリントを持って行き終えると、HRが始まりそうな時間になってしまったため、2人は化学部と奇術部に聞きにいくのは放課後にしようと話し、自分達の教室に戻っていった。



放課後

HRが終わると2人はさっそく、化学部の知り合いである花奈のいる4組へと向かう。教室に着くと、窓際の席のところにお目当ての女生徒が座っていた。


「花奈ちゃん、ちょっと良い?」


香織は花奈に近づきながら声を掛ける。花奈は急に声をかけられて少し驚いた表情を見せていたが、すぐに笑顔を見せる。


「花奈ちゃんって化学部だったよね。いきなりなんだけど、最近、化学部からエタノールとかホウ酸とかをもらっていく子たちっていない?または無くなってたり。」


花奈は急にそんなことを言われ面食らったような表情を見せ困惑する。


「香織ちゃん、いきなりすぎるよ。ちゃんと順を追って説明しないと。」


紗奈が香りの耳元で囁く。


「ごめんね。実は最近水曜日の放課後に私たちの教室、つまり1組から白色のチョークが消える事件が発生してて、その犯人を探しているんだよね。それで盗んだチョークの使い道を考えている中で化学部からも何か材料を仕入れているんじゃないかなって思ったんだよ。水曜日の放課後とかどこかの部活からさっき言ったものを分けてくれないかとかお願いされてない?」


ちゃんと説明をすると、花奈は理解したように頷く。


「そう言うことね。いきなり言われたからびっくりしちゃった。水曜日の放課後か。それなら一ヶ月ほど前に奇術部がさっきの材料、エタノールとホウ酸とミョウバン、後は塩化カルシウムを少し分けてくれないかって頼まれたことがあったわ。でも、一応それらは私たち化学部の部費で買ってるものだから、丁重にお断りして、それらを買える場所を教えてあげたことがあったわ。」


花奈の言葉を聞き、香織と紗奈は2人で顔を見合わせる。マスターが予想した通りの奇術部の名前が出てきたからだ。


「ありがとう!」


「こんなことだけでいいの?犯人は奇術部ってこと?」


花奈は首を傾げながら香織に問いかける。


「真相がわかったらまた教えるね。じゃあ、またね。」


香織は呆気に取られた顔の花奈を残して紗奈とともに教室を出ていった。


「やっぱり、奇術部だったんだね。」


廊下を歩きながら香織が紗奈に言う。紗奈は頷きながら香織に応える。


そして2人は、相葉屋に奇術部が活動している部室へと向かうのであった。


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