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喫茶モンブランの相談窓口 〜依頼料はコーヒーで〜  作者: pippo
何も盗らなかった空き巣?
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語部和栗

(本当にこれは事件なのかな)


額に少し浮かんだ汗をハンカチで軽く拭きながら、和栗(わぐり)は自らの手帳を覗き込む。その手帳は小型の掌サイズのもので、和栗は仕事中常に内側の胸ポケットに入れている。何かあった時にすぐにメモを取れるようにするためである。


GWも終わり、(とはいえ職業柄、和栗には世間のいうGW休みというものはなかったわけだが)世間の人々はしたくもない仕事をするために、朝早くから出勤し夜遅くまで働き続ける。長い休みが終わった後でどうしてああも働くという気持ちが起きるのだろうか。とはいえ、和栗も例に漏れず(GW休みはなかったが)仕事に精を出し、朝から夜までその職務を全うしている。


5月初旬とはいえ、最近の日本は春という季節を忘れてしまっているかのように5月でも暖かい。いや、暖かいという言葉で済ませられないほど暑い。日中には30度を超える日だって存在し、昼と夜の気温差は、体調を崩す原因となってしまうのだろう。和栗も暑いとは思っているが、だからと言って5月に夏服を着るわけにもいかないので、長袖のスーツに身を包んでいる。しかし、昼前から聞き込みのために、こう外を歩き続けていると流石に暑い。



(はあ、今日も収穫はなしか。帰ったらまた報告書を書かなきゃいけないのに書くことがないよ。いつになったらこの事件?を解決することができるんだろう。)


先ほどの聞き込みでは、大した収穫を得られることはなく、文字は並んでいるものの、何の手がかりも書かれていない手帳を見ながら、軽くため息をつく。


手帳を内ポケットにしまいながら、大きく深呼吸をすると駅まで向かって歩き始める。現場から駅までは少し距離が離れているので、和栗は駅までの道を歩いているのである。


(こんな暑い日はタクシーでもつかえたらなぁ)


タクシーを使わないのは、ただお金が勿体無いからである。緊急時や重要捜査の時以外は、基本的に移動費は経費では落ちないし、経費にするために領収書をいちいち保管するのも何かと面倒だ。(細かい金額の領収書をいちいち渡すと、会計部が少し苦い顔を向けてくる。だから、なるべく経費を落とすのを控えるようにした。)電車で色々なところに移動できる今の時代、電車で行ける範囲には、電車で移動するのが一番安く済む。(その代わり、通勤の時間帯は地獄絵図である。)



電車が通る音を聞きながら高架下をトボトボと歩き、周囲の風景に目を向けていると、和栗の目にふとある看板の文字がとまる。


(喫茶モンブラン?可愛い名前のお店だなあ。)


和栗の目に入ったのは喫茶モンブランと書かれている小さな看板である。お店を見ると、美しい金色ブラスの装飾が施されたステンドグラスの青い扉と、その隣には緑がイキイキと映える観葉植物が置かれ、(あれは本物の植物なのだろうか)レトロな雰囲気を思わせながらも綺麗に飾られた店が目に入る。



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