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第2話・メイドはご主人様です

事の始まりは二日前。


見飽きた雪景色、見慣れた街風景。


代わり映えのしない、もう変われない現代の街で。


いつも通りの買い出しに――いや、金銭のやり取りのないその行為を果たして買い出しと言っていいか少し悩むが、とにかくいつものことくうちの暴君のためにチョコ系のスイーツを買いに行った時の話しだ。


暴徒が女の人を襲ってる、これもまたいつものこと。


今更驚いたりはしないが、無視する程自分も慣れすぎてはいない。


こちとら良識溢れる一般市民だ、世界が変わっても自分の良識は変わっていない…まぁ、今の所ではあるが。


とにかくそういう訳だから銃をぷっぱなし、華麗に暴徒三人の頭をぶっち抜いて女の人つまりこの金髪ギャルを助けた訳だが――



「一目惚れしちゃった♪きゃ♡今どきこんな安心感たっぷりの人がいるなんて~♪」


「……へー。」



やばい、冷たい、目が冷たい…!


そしてそんな彼女も可愛いと思ってしまう俺は多分もう末期だ、つまり手遅れである。


でも実際可愛いのだから仕方がない。



「と・こ・ろ・で…この女誰?」



似たような言葉、今度は金髪ギャル――シャルロットさんの口から。


改めて言うがこれは決してハーレムものではない、何やらパチパチした空気になったが、それでも俺は決してハーレムものの主人公ではない。



「彼女はシュエ、最近巷を騒がせているあの探偵だ。」


「そう!天上天下唯我独尊!あの探偵とは私のこと――ってのは冗談として。」



いや、割と冗談でもない気が…



「あらゆる事件を解決しあらゆる怪物に勝つ、依頼人には出来る限りのハッピーエンドを約束する――あの探偵だ。」



誤解のないように言っておくが、この世界に怪物はいない。


多分…



「メイドじゃなくて?」


「今は可愛いメイドさ、アルバくんだけのね♪」


「…へー。」



今度はシャルロットさんから冷たい目が…!?いや誤解…でもないか…っ!?



「いやシュエはただの雇い主というか…!?」



思わず慌てて弁明した、例え有罪でも無罪を勝ち取りたい!


実質変態でも変態として見られたはくない!


しかしそんなみっともない真似は直ぐに後悔した、失言というかシュエが拗ねたからだ。



「ふーん…。」



私ってただの雇い主なんだ…と言わんばかりの顔である。


実にめんどくさい暴君だ、でもそこがいい。


やっぱり末期か。



「雇い主ね?このご時世に?」



…ごもっともです。


金銭が価値を失った今のこの世界じゃ人はもう誰かに雇われる意味が、理由がない。


みんなもう好き勝手に生きることしかできないくらい、今の世界は終わっている。


永遠に明日の来ない世界なんて、終わったのと同じだから。



「…っ、ま、なんだ…雇い主つーか…んん~ご主人様かなー…ハハ…。」



うわ…機嫌がみるみる良くなったぞ、うちの暴君。



「…メイドなのに?」


「メイドなのに。」



いやホント、メイドなのにだ。



「その、だな…もはやなに言ってもなにこの変態としか思えないかもしれないが、もうそこについては反論する気もないが…」


「反論する余地もないしね。」



とどめ刺さないでくれる?シュエ…



「…何か悩みがあるなら言ってみて欲しい。彼女は、どんな事件をも解決しどんな怪物にも勝つ。エクス・マキナと言ってもほぼ過言ではない、あの探偵だから。」



たった三ヶ月で探偵と言ったら彼女、どんな世界的名探偵でもこの街に限っては彼女の知名度には負ける程彼女は名探偵だ。


だからこそ()()()()、探偵と言ったら彼女(あの探偵)しかいないから。



「もちろん、俺も出来る限り――」


「信じるよ?アルバくんのこと。」


「そ、そうか…」



普通のことであるかのように、当然のことみたいに話す彼女に俺は思わず言葉を失った。


そこまでの信頼を向けられる程のことをしたのかな俺…?


ってシュエ?そんな値踏みでもするみたいに…、失礼だろシャルロットさんに。



「じゃ、お言葉に甘えて相談して貰ってもいいかな探偵さん?」



…??なんか挑発的笑顔だな…?



「もちろんだとも。」



こっちもなんか挑発的な笑みだー…



「さて、ご用件を伺おう。」



デスクの前に座り、いつもの笑顔でいつもの余裕。


いつもの自信といつもの諦観。


やはり、雪解け共に消えそうな笑顔でした。

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