ルームメイトのおかげで無事卒業できたけど卒業後の結婚相手が一度しか会っていない女の子で不安に思ってた。でも、全く心配なかった
第6回小説家になろうラジオ大賞参加作品です。
【キーワード:卒業 ルームメイト】
「もうすぐ卒業だなあ。ノア」
「そうだなあ。3年って早いよなあ。ジョイ」
俺の名前はノア。辺境伯家の長男で卒業後は郷里に帰り、辺境伯たる親父を助けて統治にいそしむことになっている。
この国の貴族の慣習として、16歳から18歳までの間、令息令嬢は基本的に全寮制の王立高等学院に在学することにもなっている。
カリキュラムはぎっしりで、初めは内政、外交、社交、教養、武術、魔法等徹底的に叩き込まれる。
後は得意技を生かして、パーティーを組み、様々なクエストに取り組む。討伐クエストばかりならいいのだが、生薬の精製なんてものもあり、俺は本当にこういうのが苦手だった。
それでも何とかなったのはルームメイトのジョイのおかげだ。男にしては小柄なジョイは俺とは逆に武術があまり得意ではなかったが、代わりに魔法とかは得意だった。
正直、同じパーティーにジョイがいなかったら、俺は留年して、親父にこっぴどく叱られていたことは間違いない。
そして、この学園のもう一つの重要な役割。それは貴族間の婚姻の促進だ。
国によっては学校での恋愛などはもってのほかというところもあるが、国王陛下は在学中の婚約はむしろ奨励されている。
「若い者同士なんだから、禁止したところで、恋愛する者はするだろう。それならむしろルールを明確化した方が裏工作しての不正もなくなるだろう」
陛下のそのお考えには俺も賛成だ。
ただ、俺には全く関係なかった。何故なら俺には入学前に婚約者がいたのだ。一度しか会っていないが小柄な女の子だ。
しかしだ。一度しか会っていないというのは何とも不安だ。
これを両親に言うと決まって笑ってこう言うのだ。「心配するな。絶対大丈夫だから」
俺は腑に落ちないまま卒業し、居城で両親立会いの下、婚約者と会った。
金髪巻き髪の婚約者に俺は頭を下げた。
「すまない。小さい頃、一回会っただけの男と結婚するなんて」
「ふふふ。一回会っただけじゃありませんよ。ほら。私です」
婚約者が微笑しつつ、金髪巻き髪のかつらを外すと、あっ!
「おっ、おま、ジョイ」
「ふふふ。ジョイ・ギルフォード伯爵令嬢です。よろしくお願いします」
「なっ、ななな、何で?」
「私がノア様とどうしても結婚したかったので、悪い虫がつかないように男装して男子寮に入ったのです。まさか三年間ばれないとは思いませんでしたが」
俺は気が遠くなった。ジョイと結婚出来るのは嬉しい。しかしこれは、尻に敷かれそうだ。
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