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あの頂へ   作者: UC
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~1.始まりは突然に~

こんにちは!UCです!


~序章~


どこもかしこも陰気臭い空気の漂うこの町には大きな塔がそびえたっていた。なんでもその塔を登れば神へのお目通りができ、願いをかなえてくれるのだと。多くの人が塔へと吸い込まれ、ただの一人も帰ってこなかった。塔の頂上にそれだけ魅入られるものがあるのか、たどり着くことなく命尽き果てているのか。一切分からないが、それでも塔を登る人間は後を絶たない。いつしかその塔には名前がついていた。『境界』と。不気味な入り口の外観も相まって、今ある日常とは一線を画していることからつけられたらしい。そんな塔に魅入られた人間がここにも一人いた。名前はケビン。なんの特技も持たない、そんな普通の少年である。あの塔の頂へ…少年は固く胸に決意するのであった。



~1.始まりは突然に~


「最下点」、そんな風にこの町は呼ばれている。真ん中に神へと通じる塔が立っていることから名づけられている。そんな町の、さらに寂れた小さな小屋のような家にケビンは住んでいた。


「さて、今日も1日頑張るとするか…。」


そう言って、ケビンは町のにぎわっている方へと足を運ぶ。


ケビンは店が並んでいるメインストリートにてケビンは運び屋のような仕事をして日銭を稼いでいる。今年で10歳となるケビンには両親はいない。それどころか血のつながった家族と呼べる存在は一人もいない。病気で亡くなったとか事故にあって亡くなったとかではなく、存在してるかさえもケビンには分からない。そんなケビンにとって、塔の存在は生きがいそのものであった。こんな自分でも塔にさえ登れれば…。ケビンは毎日のように塔を眺めながら決意する。


「少しでも多く運んで貯金を作るんだ!そして、塔の前にある店で剣を買う!そうすれば僕だって…。」


ケビンには特筆すべき力があるわけでもない。また、魔法だってたいていの人が持っている『鑑定』とものを少し浮かすことのできる魔法しか使えない。そんなケビンをいつも嘲笑する、ひげ面で髪が煩雑にに伸びきった大男のガイデンが良い獲物だと言わんばかりの笑みを浮かべてやってきた。


「おう、ケビン。今日も物を浮かして無駄に魔力を消費してるんだな。まあ、それ以外できないのがお前だからな。俺様はとうとう今から塔にのぼれるんだぜ。いいだろう?この力強さと筋力増強の魔法を気に入ったやつがいるらしくな!それじゃ、負け犬は大人しく在庫の箱とでも戯れとけばいいさ。」


「うるさいやい…。」


そう言いながらガハガハ笑うガイデンに対し、ケビンはただ下を向くしかなかった。しかし悪いことばかりではない。長年貯め続けた貯金が、いよいよ剣を購入できる金額までたまったのだ。


「今に見てろよ~。剣さえ買えれば後はこっちのもんなんだ!なんたってあの剣には秘密があるんだからね!」


『鑑定』という魔法は、通常対象の名前と使われている素材や原料くらいしか分からない。しかし、数少ない魔法だからと常に『鑑定』を使い続けた結果、ケビンの『鑑定』にはものの価値と効果が表示されるようになった。そして武器屋に駆け込みあらかたの品を『鑑定』にかけたケビンは、ある短剣に目を奪われることとなる。名はライオネル。曰くその短剣で攻撃された際に敵は高確率で即死すると。


「よし、今日の仕事をさっさと片づけてしまうぞ!」


意気込んで仕事を片付けたケビンは、もらった給金を手に武器屋へと駆け込んだ。


「この短剣をください!」


「お金はあるんだろうな?坊主。いくらただの短剣だからと言っても1万パイル(1パイルはだいたい1000円くらい)はするぞ。」


「ここにちょうどあります!」


「よく貯めたな…。よし、サービスだ。いらない廃棄予定のロングソードも一緒につけてやろう。ボロボロだがないよりかはましなはずだ。」


「わあ・・・!ありがとうございます!」


ケビンは嬉しそうに収納する袋を自身の体につけ、短剣を装備した。そして、ボロボロのロングソードは背中へと装備する。


「短剣だけでは心もとないからな。いざとなったら捨ててもいい覚悟でロングソードを使うんだぞ。」


武器屋の店主はケビンへとアドバイスすると店の奥へとかえっていった。そんな店主に頭を下げ、店を出ようとした瞬間、聞いたことのある大声が店中に響いた。


「邪魔するぜ。店主、いないのか?」


そう、ガイデンである。ガイデンは武器を装備しているケビンを見つけるなりにらみをきかせる。


「雑魚は大人しく引っ込んでろって言ったよな?何をしているのか言い訳は聞かねえ。お前みたいな力のないガキを見てると無性に腹が立つんだよ」


そう言って、持っていた大きな斧をケビンに向かって振りかざした。危機感にかられたケビンは、迫りくる斧を自然に浮かせる。


「お前…。抵抗すんじゃねえ。その使えない魔法をさっさとひっこめやがれ!」


渾身の一撃を止められたことに腹を立てたガイデンは、ケビンに対し今度は帯刀している剣を抜いて切りかかった。それを寸でのところでよけ、ケビンは持っている短剣を振りかざした。


「ぐ……グハ…。」


ガイデンは糸の切れた人形のように即死した。


「おい、何の騒ぎだ…。お前…。」


「違う、これは…。」


「そうか、お前は俺の売った武器を殺人に使うんだな…。」


そういって、店主は残念そうに人を呼びに行った。


「誰か来てくれ!人殺しだ!」


それを聞いたケビンは、泣きながら店を出る。どのくらい走っただろうか、気づけば塔の真下まで来ていた。涙でぐしょぬれの顔を拭うと、ケビンは持っていた短剣の異変に気が付いた。


「ない…。即死の効果が短剣から消えてる…。」


「おい、こっちにいたぞ!」


ケビンは様々な感情が渦巻く中、追ってから逃げるために塔へと入っていった。得てして効果の消えた短剣とともに、ケビンは念願の塔の中へと入っていくのであった。






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