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8 重なる面影

 「私の個性、【龍化】って言ってね。全力を出せば数十メートル級で天災カタストロフレベルに分類されるの。その分エネルギー消費も激しくて、ほとんど寝たきりの生活でね。今日みたいに動き回れる日も限られてる。だからあの時転んじゃったんだ…、えへへ」


 「それが何故殺せと願う理由に繋がる?」


 容量を掴めない返答にさらに問いかけるが、少女は手を前に交差させ顔をうつむけながら作り切れなかった笑顔を見せた。


 「別に死にたいわけじゃないよ。だけど、私ね、…もう気づいてるんだ。研究者の人たちがもう私に見切りをつけてること。たぶんあと三年か四年後、大きな計画が動いちゃって、その計画のエネルギー源として死ぬんだって」


 大きな計画とは、どうせいつものボスの悲願だろう。とうとう本腰を入れ始めたのかと、思うのはそれだけ…。


 「私は…、私の個性で沢山の死ぬと思うと、まだ犠牲が少ないうちに、死にたいと思う。あの人達に最後まで利用されて、消耗品として死にたくはない」


 理由も、どことなく『あの人』に似ている。少なくとも一人は殺してしまったその手を、もう二度と汚したくないと自らの死を願った覚悟と、弱さを兼ね備えた人間。


 自分は「死にたくない」と吐いた口で、顔も知らない誰かの為に「死にたい」と願う吐きそうなほど甘ったるい偽善ぎぜん


 「大きな計画」は俺が主体となって初めて動くものだ。そしてその計画自体俺は止める気はない。それを少女に告げたら、どうするだろうか。


 面白そうだと俺の嗜虐心しぎゃくしんが刺激され、口を開きかけた瞬間…、遮られた。


 「でもねっ! 私弟がいるの! いつも怒ってばっかりだけど私のことを心配してくれる弟なの。ね、優しい子でしょ?」


 宝物を見せびらかすが如く、年相応の顔に戻った少女を見て、開きかけた口が自然と止まった。


 俺の中で眠る『あの人』が、昔よく似た顔で…、笑っていたから。


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